向こう側へ
鳥居をくぐったその先は…?
謎の空間に飛び込んだ二人。二人が目にしたのは…、鳥居の向こう側に見えていた、トップ・アストレイアだった。
「……あれ?何も変わってない?」
「どうなってるんだ…?」
何も変わらない景色に困惑した、次の瞬間。突然、浮遊感が二人を襲う。
「うわぁあああ!!!!」
「か…体が……上に引っ張られる…!?」
二人の体は宙を浮かび、空の方へと引っ張られていく。そう、『空』だ。
「こ、これってどうなってんのぉぉお!?」
「一体何処へ飛ばされるんだ、俺達は!?」
いつも冷静な奏多も今回ばかりは、冷や汗を流しつつ、今自身の身に起きている不可解な現象に戸惑い、驚きのあまり声を上げて叫んでいる。奏多ですらこうなってしまえば、シルヴァが冷静なわけがない。二人は流されるままただ重力を無視して上へと登っていく。
「そ、奏多!これって大丈夫なやつか!?」
「分からない!けど、今地上を見ているが、俺達を追いかけていた執行官たちが同じように天空に飛ばされているようには見えない!恐らくだが、彼らは鳥居をくぐっていない!つまり、彼らの包囲網を突破した可能性が高い!」
「おっ!やったな!……で、ここからどうするんだ?」
「なるようになる!」
「つまり、どうしようもないってことだなぁぁぁあああ!!」
空に引っ張られ始めて、ついに建物さえも豆粒のように小さく見え始めた頃。自分たちは宇宙へと投げ出されるのではないかと考え始め、改めて引っ張られている上空をじっと見つめると、二人はあることに気がつく。
「ん?なぁ奏多!あれは何だ!?」
「小さすぎて見えにくいが……俺の目が確かなら、俺達が飛ばされている方向にも大地が見えるんだが……!?」
「え!?俺達って空を飛んでるよな!?」
「飛んでいるんじゃなくて、引っ張られているの間違いだがな。けれど、宇宙に飛ばされる訳ではなくて安心したな。」
「けど、これってつまり…俺達はまた『落下』してるのかー!?」
「あっはっは!!一日に三回も落下するなんて、運を持ってるな、変革者!」
「嫌味か!?皮肉か!?」
「いや、称賛!!」
「嘘つけぇぇええ!!」
小さくてまるで塵のように見えていた建物が、徐々に目を凝らさなくても見えるくらい地上に近づいた。けれど、落下の勢いは収まらない。
「流石にこの速さのまま落ちるとまずいな…!」
「またさっきの三日月ってやつでなんとかならないか!?」
「無理だ!俺達は体感でもかなり長い時間落下し続けている!」
「じゃあどうするんだ!?」
「待ってろ、何かいい技がないか考える…………、無いかもしれない…!」
「無いのかよぉぉぉ!!!」
そろそろ地面がはっきりと見えてくる。このままでは、落下死するのは目に見えている。しかし、今奏多の技の一つでもある『月ノ仮消‐三日月』を打っても大地にクレーターを作り、そこに丸くなって寝る体勢になるだろう。
「うわぁぁぁぁあああ!!!」
(ど…どうする!このままでは二人揃って大怪我だ!俺はともかく変革者の耐久力は低くはないが、高いとは言い切れない。……このままだと…二人まとめて動けない…!!)
地面に直撃するのもあと10秒を切りそうになった。その時、大きな竜巻が地上から巻き起こる。その風は二人の落下速度を大幅に低下させる。
「んなぁっ!?」
「これは…!?」
そして、何もない地面から突然大きな蔦が生え、二人を包み込むように巨大な植物の網ネットを作り上げる。速度が低下した二人は、そのままネットに落下した。
「た…助かったぁ…!!って…ええ!!?」
ネットの隙間から地面を改めて見たシルヴァは動揺する。何故ならそこにあるのはゴミの積もった大地であり、かろうじて見える土地もコンクリート。水、養分はおろか、土もない場所。植物が、しかもここまで巨大な蔦が生える要素が何処にもないのだ。
「な、な、なんだこれぇぇえええ!!!なんでこんなところに植物が生えた!?しかも今さっき生えたように見えたけど!?」
「これは……、この力は……。」
奏多は蔦に体を預けながら、物思いに耽る。ここまでではないにしても、この力に見覚えがあったからだ。それは遠い過去、一度は忘れてしまった記憶。
「……流異?」
その呟きは、驚き声を上げ続けるシルヴァの耳に届く事はなく、廃れた空気に混ざり、消えていった。
◇◇◇◇
「……。」
その様子を遠くから見つめる人物が二人、それぞれ別方向にいた。一人は様子を窺うように一歩ずつ、シルヴァと奏多のいる巨大な蔦へ近付いていく。敵か味方か、冷静に見極めながら。
「……政府のやつでは…なさそうだ。一人はギャーギャー騒いでるあたり、まだ元気はありそうだな。一体どんなヤツかな。」
ニヤリと浮かべた笑みは、数秒後には消え、頭はクールに、歩みを進めた。
一方、もう一人はその場から離れていく。しかし、時折振り返るその目線は、全て奏多に向いている。
「……。」
懐かしそうな、慈愛を持つような。…そんな眼差しだった。しかし、そこには憂いも帯びた視線も混じっている。
「……兄さん。」
この声は、風に乗ることはない。そして、この言葉を最後に、その人物は二度と振り返ることはなかった。
ご読了ありがとうございました。




