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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第49話 彼女は決意を宣言しました

 ――ガタァン!!


「ひぃ!?」


「ぬぅおぅ?!」


 突如響いた衝突音に、座り込んだ佳子と克也はびくりと身体を震わせる。


 慌てて、その音が響いた背後を振り返ると。


 ――ガタガタガタン!!


「ぞ、ゾンビ……!?」


「うお、逃げ……!!」


 屋敷の縁側、全面ガラス張りのそこに、凶相を浮かべた小柄な人影が張り付いていた。


 佳子は思わず隣の茜の両足に抱きつき、克也は立ち上がって逃げようとして足を滑らせ、その場にひっくり返る。


「大丈夫です」


 そして、茜は。


 佳子に両足を拘束されたまま、平然と頷いた。


「この場所では、あのおばあちゃんゾンビは単なるビックリギミックです。ガラスを割って外に出てくるほどの膂力は持っていませんし、カギを開けるほどの知性はないので」


「へ、へあぁ……」


 ――ガタガタガタ! ガタガタガタガタガタガタ!!


「だ、大丈夫なのか……?」


「大丈夫です。ここにいる分には、ちょっとうるさいだけのおもちゃと思ってください。屋内に入るならまた別ですけども」


「は、入らないよぉ! 何でそんなこと言うの!?」


「いやあ、この家の中、実績解除用のレアアイテムが拾えるんですよね。ストーリーの進行には関係ないので、今回は無視しますが」


「実績解除……? ストーリー……?」


 そんなハートフルな会話を繰り広げる茜と佳子の隣で、ひっくり返っていた克也はゆっくりと身体を起こし、地面に座り直した。


「……ああいうゾンビがいるなら、あらかじめ教えておいてもらえないか……?」


 克也の至極真っ当なその意見に、茜は首を傾げて眉を寄せた。


「ええと……」


 茜は、考える。


 克也は、何を要求しているのだろうか。


「……ゾンビなら、監視塔ゾンビには気を付けないといけないですね。通常ゾンビの行動パターンが変わってしまうので、場所によっては難易度が爆上がりします。あと、ほとんどの住宅は在宅ゾンビが居るので、迂闊に姿を晒さないようにしてください。外に出てくるゾンビもいるので、身を隠せる場所を確保してから確認するようにしましょう」


「……オーケー。気になることはまだあるが、茜ちゃんが安全……安全……? に、気を付けていることは分かった」


 微妙な反応の克也に若干の不安を抱きつつも、茜は納得してくれたらしいと判断する。


「少し休んだら、向こうから出て先を目指しましょう。水分補給をしておきますかね」


「あんまり休める気がしないよぅ……」


 ガタガタと窓を揺らすゾンビを横目に、佳子は大きくため息を吐いた。


 佳子ホールドから解放された茜は、リュックサックを地面に下ろすと、中からペットボトルを取り出す。


「……茜ちゃん。この後、どこを通ってどこに向かうのか、決まってるのか?」


「……ええと」


 少しして、克也に話し掛けられ、茜は困った顔でペットボトルを唇から離した。


「夜はどこに泊まるのか、とかだが……」


「……隣町に。大きな橋があるんだけど……知ってる……?」


「橋? ああ、知ってるぞ。名前は知らないけど、川に掛かってる長い橋だな」


 大流川おおるがわ新橋しんばし


 それが、茜が目指している場所である。


「橋を渡る予定……。ええと、ゾンビが多いから移動しっぱなしになる、はず。橋を越えたら宿泊したいから……、在宅ゾンビがいない住宅を探す……かな……」


「なるほど……橋か。……茜ちゃんは、知ってるのか?」


 克也が、何を聞きたいのかがいまいち分からない。茜は、首を傾げた。


「あー、その、橋の様子とか。この辺りのこととか、けっこう詳しいみたいだけど」


「あぁ……」


 克也に、おそるおそるといった雰囲気でそう尋ねられ。


 茜は頷く。


 まあ、考えてみれば、だ。


 茜はゲームの知識を持っているが、それは本来、茜が知り得る情報では無い。


 それを惜しげも無く披露しているのだから、まあ、多少は不審に思われても仕方が無いだろう。


 茜は、微妙にずれた結論を、脳内に展開した。


 世界を自分の都合の良いように解釈する、茜の悪い癖が出ていた。


 これだから、いつまで経ってもコミュ障なのである。


「いろいろと、伝手があった……」


「そ、そうか」


 というわけで、答えにくい回答は適当に返す。


 言い切れば、大体皆、それ以上は突っ込んでこない。


 茜は、間違った対処法を身につけてしまっていた。


「……そろそろ、動きましょうか」


 話は終わった。


 態度でそう表明することで、茜は強引に会話を終わらせる。


 克也は微妙な表情のまま、仕方なしと地面に下ろしていたリュックサックを拾った。


「茜さん、どこを目指すんだっけ?」


「次の宿泊場所を、目指します」


「次……え……と、途中で休みは……」


「このあとは、ノンストップです。ここから橋にたどり着いたら、もう休めるところはありませんので、そこは覚悟してください。敢えて言うなら橋に入る直前では休めるかもしれないですが、30分くらいで到着するので、休む意味はあんまりないですねぇ」


 ノンストップ。


 茜の言葉に、佳子は戦慄した。


 その様子を見て、克也もなんだか不味そうな話をしていると警戒し始める。


「えーっと……ちゃんとルートは想定しているので、大丈夫ですよ。3人で通り抜けられるように、考えたんです。まだまだ序盤ですからね、こんな程度で立ち止まってなんかはいられません」

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― 新着の感想 ―
実績解除って。予知能力の類があるという理屈で押し通すとかじゃないんですね。
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