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最強のホラゲー配信者がゲーム世界に転生したら、全く怖くない。  作者: てんてんこ
第3章 夕陽新町

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第38話 彼女は丸投げしました

 自警団ゾンビの破壊音と叫び声を背に、茜と佳子は住宅の裏口に辿り着いた。


「…………」


 茜はそのまま裏口には目もくれず、隣に設置された電気給湯器の室外機に登った。


「裏口には鍵が掛かっているので……ここから入りましょう」


 声を抑えつつ、茜は佳子にそう説明した。


 佳子は、無言でこくこくと頷く。


「…………」


 それを確認し、茜は目の前の窓に手を掛けた。


 カラカラ、と音を立て、窓がゆっくりと開いていき――


「……ひゅっ」


「おっと」


 窓際に置かれていた、ガラス製の花瓶が転がり落ちる。


 佳子はそれに驚き、息を呑んだ。


 茜は、落ちてきた花瓶を器用に片手で『受け止める』。


「はい」


「……!!」


 佳子は、両手で自身の口を押さえ、両目を開いてぷるぷると震えていた。


 茜はそのまま室外機から降りると、手にした花瓶を地面に慎重に横倒しに置く。


「はい、油断するとすぐこういうことが起こるので……気を付けてくださいね」


「……!」


 心拍数が激上がりしているらしい佳子を尻目に、茜は再度室外機に登ると、開けた窓からそのまま室内に侵入した。


 降り立った場所は、左手にキッチン設備が配置された、ダイニングキッチン。


 茜が躊躇無く入ったとおり、家主は不在である。


「……佳子ちゃん。入れる?」


「……!!」


 窓から顔を出して、佳子を呼ぶ。


 佳子はささっと周囲を確認すると、トントンとリズム良く窓を越えて室内に降り立った。


 見た目通り、運動は得意なのだ。次に合流予定の、鞄君とは違うのである。


「……えっと。佳子ちゃんは、食糧を探してもらって、いいですか」


「う、うん」


 いろいろと聞きたいことがあるのだろう、佳子。


 だが、茜に『指示』された佳子は、もごもごしてから諦め、そのままキッチンに向かった。


「では、私は特別なアイテムを探しに行きましょう。玄関はこっちですね」


 佳子が動き始めたことを確認してから、茜は目的のモノを確保するため、玄関に向かって歩き始める。


「無くてもクリアはできますが、あると楽になるアイテムですので、是非入手をオススメします。食糧は無理に探す必要は無いんですが、今回は佳子ちゃんもいるので、確保できるところで確保しておく方がいいですね。消費が倍になっていますので」


 サバイバーを同行者にすることで、水や食糧の消費が、2倍になる。当然と言えば当然だが、ゲーム後半ではインベントリとの戦いが始まるため、気を付けなければならない。

 もちろん、サバイバーのインベントリを活用すれば荷物を2倍持てるのだが、それでもだ。


「さて、こちらです。土間収納って、夢があっていいですよねぇ」


 玄関に併設された、土間収納。


 茜は土間に降り立つと、乱雑に物が積まれたそこで、ごそごそと荷物を漁り始めた。


「ええと、一番下の段ボールの中に……はい、と。出ました!」


 段ボールの中に入っていたのは、カラフルな包装に包まれた、夏の風物詩。


 花火である。


「ええと、手持ち花火はいらないのでポイ。ネズミ花火、いいですね。噴出花火もいいですね。これももらいましょう。ライター、重要ですね。2個とも持っていきましょう」


 茜は手に取った花火を、自分のリュックサックに詰め込んでいく。手持ち花火は使い所が無いため、その場に放置。


「あとは……これですね」


 茜は、壁に立てかけてあったポールを手に取った。


「トレッキングポールですね。これを装備すると、足場の悪い場所でも普通に歩けるようになります。これのありなしで、移動の難易度が格段に変わるので、必須装備と言っても過言ではありません」


 更に別の棚から、未開封のズボンのようなものを発掘する。


「ええと、トレッキングパンツ。サイズはSですが、男性向けなので私は履けませんね……。佳子ちゃんならちょうどいいかもしれません」


 そうして一通り土間収納を漁ると、茜は周囲を見回した。


「……ええと」


 ゲーム内で回収できるアイテムは、以上だ。


 正確には他のアイテムもあるにはあるが、不要な物ばかりである。


 だが、この場所は、ゲームのマップではなく、現実の世界だ。


 もしかしたら、この先でも使える何かがあるかもしれない。


 とはいえ。


「よく、分からない……」


 彼――彼女は、元はゲーム好き(控えめな表現)の一般人だ。


 文明崩壊後のサバイバルに何が必要かなど、知っているはずが無い。


「…………」


 茜は、ゲームに関しては何でも知っている。


 そう自負する程度には、ゲームはやりこんでいるし、記憶していた。


 だが、この世界は、ゲームだけではないのだ。


 ゲームをクリアした後も、世界は続く。


 佳子を救出するという、イレギュラーな行動を取ることができたのだ。


 茜は既に、ゲームクリアと同時に元の世界に戻れる、などという甘い幻想は抱いていなかった。


 そうなると、やはり次に必要なのは。


「知識が、必要」


 で、あれば。


 仲間にしたいサバイバーは、決まったようなものだ。


 幸い、そのサバイバーは、このままゲームのストーリー通りに進行すれば、自ずと救出することができる。


 彼には、荷物持ちだけでなく生活の知恵を出してもらおう。


「……よし」


 幸い、この世界では、物資は腐るほど眠っている。


 いま目の前のものを無視しても、なんとかなるだろう。


 茜はそう判断し、未来の自分に全てを投げつけた。


 彼女が見るのは、目の前のステージ攻略だけだ。


 まずは佳子を連れて、新たなサバイバーを助け出すのだ。

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