三ツ星レストランを越えるほどのおいしい光さんのオムライス
勉強の事を忘れて、ギターをマスターする為に僕は指の皮がむけても練習を続行した。
娯楽室は今日は誰もおらず、一人でギターの練習をしていた。
あの菜々子さんには負けたくないと一心で。
さすがに指が痛くなり、弦にふれると激痛が走り、もうこれ以上は限界だと思ったが、とにかくあの菜々子さんに負けないくらいにうまくなり、練習を続行する。
そこで光さんが娯楽室に入ってきて「まだ、練習していたの?」
「はい。僕はもっとうまくなりたいので」
「ちょっとあっ君」と言って練習しすぎてボロボロの手を光さんが掴んだ。
「ちょっとあっ君、練習し過ぎよ、あーちょっと待っていてね」
待っている間も僕は痛みをこらえながらギターを練習した。
光さんがすぐに戻ってきて、「ちょっとあっ君、もう練習はやめなさい、一日でそこまで弾けるようになったんだから」と言って救急箱を持って僕の手を応急処置をしてくれた。
光さんは僕の左手を持って、消毒液を塗り付けられるとすさまじい痛みに僕は悶えてしまった。
「痛い!?」
と思わず口にしてしまった。
「当たり前でしょ。そんな指になるまで練習するなんて、何を考えているの?」
「それは・・・」菜々子さんに負けたくないからとは言えなかったし、それに僕は「ギターが弾けるなんてかっこいいと思って」
「そんな怪我をするまで、ギターを弾くなんてかっこ良くないよ」
ガーンと心に突き刺さる光さんの言葉だった。
「でもあっ君って努力家ね、それほど、ギターを弾けるようにしたいなら、毎日少しずつ練習を積んでいけばすぐにうまくなれるよ」
「本当ですか?」
「ええ、本当よ、今日はこれぐらいにして、ゆっくり安静にしていなさい」
光さんに指を押さえる部分に怪我していて僕は絆創膏を貼ってもらった。
「こうしてギターを弾いていると指の皮が厚くなり、簡単に弾けるようになるから」
「そうなんですか!?僕も光さんのようにうまくなりたいです」
うまくなれると言われて、気持ちが高揚した。
「まあ、何事もどんな事も一日にならずだよ」
「はい」
「今日は勉強のし過ぎで頭が疲れちゃったよ」
時計を見ると、いつの間にか午後六時を示していた。
「うわ、もうこんな時間」
「あっ君、夜ご飯はどうするの?」
「帰って食べます」
「良かったら私があっ君と菜々子ちゃんにオムライスを作ってあげるけれどもどうかな?」
何だって。ここで光さんの手料理が食べられるのか?
それは願っても無い事だ。
「じゃあ、光さんのオムライス、ごちになります」
そこで菜々子さんが現れて、光さんが「菜々子ちゃんも私のオムライス食べていく?」
「もちろんです」
何だよ。菜々子さんも一緒なのかよ。
こいつ僕と光さんの距離を遠ざけようとしているんじゃないだろうな。
「じゃあ、出来るまでちょっと待っていてね」
「「はい」」
僕と菜々子さんの返事がまたハモった。
すると菜々子さんは僕に威圧的な視線を向けてきた。
何なんだよ。こいつはいつもいつも僕の事を・・・。
さてオムライスが出来上がるまで、勉強でもして待っていよう。
僕が勉強室で勉学に勤しんでいると、菜々子さんが入ってきて、僕と同じように参考書を開き勉強を開始した。
菜々子さんと一緒に勉強していると、気が引き締まる。
知識も養いたいし、ギターも弾けるようにしたい。
菜々子さんに負けていられない。
勉強を始めてすぐにオムライスは完成して、光さんに僕と菜々子さんに呼ばれてしまった。
「うわーすごいオムライスだ」
僕がわめくと隣にいる菜々子さんは「それぐらいではしゃぎすぎ」と注意を喰らった。
何なんだよこいつはいつもいつも、僕をそんなにのけ者にしたいのか?
「とりあえず、出来たんだから召し上がれ」
「「いただきます」」
また菜々子さんと言葉がハモってしまった。
すると菜々子さんはいつものように威圧的な視線を向けてきた。
「何?」
「別に・・・」
プイッとそっぽを向く菜々子さん。
そんな態度を取られるとせっかく作ってくれたオムライスがおいしくなくなるよ。
とりあえず、目の前に置いてあるオムライスにスプーンでスクい口元の運ぶとそれは食べたことのない程のおいしさに満ち満ちていた。
僕と菜々子さんの食べっぷりを見ている光さんは「おいしい?」と言われて僕と菜々子さんは「「おいしい」」とハモってしまった。
「うっ!」
またきつい目で僕を見るのじゃないかと思って、僕は即座に視線を逸らした。
でも菜々子さんは僕に眼中はなくオムライスを食べることに夢中になっている。
このオムライス三ツ星レストランでも食べられないぞ。
そんな大言壮語を言ってしまうほどのおいしさだった。
「あーごちそうさま」
オムライスを食べ終えて、光さんは「おいしかった?」
「おいしかったですよ。光さん」
「お粗末様です」
僕は食べたお皿を台所に持っていって、後片づけをした。
「後片づけなら私がやっておくのに」
「こんなおいしい物をご馳走になったのだから食器くらいは洗わせてくださいよ」
「そう。ありがとう」
そこで菜々子さんも食べ終えて、僕が食器を洗っている所を横から割り込んできて「どいて」と言われてどかされてしまった。
「何だよ!僕が最初に片づけをしていたのに」
「あんたがもたもたしているからでしょ」
「ちょっと菜々子ちゃん順番順番」
と光さんに注意を受けて、縮こまる菜々子さん。
本当に何なんだ?僕に何か文句でもあるのかな?菜々子さんは?
お腹もいっぱいになって、今日はさすがに疲れていたので、「じゃあ、光さんも菜々子さんも今日はありがとうございます。今日の所は疲れているので、帰りますね」
「そう。明日は私は図書館の司書のバイトでここにはこれないけれど、みんなによろしくね」
「はい」
そこで菜々子さんは「お疲れさま」と言ってくれて僕は彼女にそんな言葉をかけられて嬉しく思い「はい!お疲れさま」と大きな声で言うと「あんた極端だね」「別にそんな事はないですよ」
そう言って調理室から出て勉強室に置いてある荷物を持って廊下を出ると、豊川先生が僕の前で癒しの笑顔で「今日は頑張ったね!」
「そうですか?」
「うん。ギターと勉強を一生懸命にやっていたね。今日はお疲れ様、明日もよければいらっしゃい」
「はい」
と言ったが、僕は今日は豊川先生を一目も見ていなかったのに、どうして僕がギターや勉強をしていたのを知っていたのだろう?
まあ、それよりも僕は明日が楽しみになってきた。
この光さんが紹介してくれたフリースクールは本当に最高の僕の居場所だ。
勉強も向上するし、何よりもギターを弾けるようになりたい。
そう言えばギターと言えば欲しいが、妹がアコースティックギターを持っていた事を思い出した。
妹はあのアコースティックギターを買ってもらったのだがすぐに飽きてしまって、家のどこかで眠っているかもしれない。
自転車をこいで十五分、自宅に到着した。
「ただいま」
扉を開きながら僕は帰った事を言った。
「お帰り、ご飯出来ているよ」
やばい忘れていた、先程、光さんにご馳走になったところだった。
だから「ごめん。ご飯食べてきたよ」
「エッ!?食べてきちゃったの?それなら連絡の一本でも入れてよ」
「ごめん」
「そう言えば桃子は?」
「桃ちゃんなら部屋で勉強でもしているんじゃない」
そうか部屋にいるのか、桃子の部屋のドアを開けると、妹の桃子は下着姿で「きゃー」と言われてしまった。
即座に出て「ごめん」と謝って置いた。




