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9話 断罪 後編




ディアンが調べ上げたアリシア暗殺疑惑に関しての調査結果には、学園生活中のリリゼットとアリシアの様子から、アリシアが卒業パーティー後に襲撃を受けた後に、首謀者として学園在学中アリシアを目の敵にし虐めをしていた疑惑があったリリゼットを拘束、周囲の聞き込み調査内容などがあった。


この調査結果の書類作成にはアグベール家御用達の密偵者が長年記録していた学園内の人間関係図の記録書が使用されており、リリゼットがアリシアを虐めていたという事実は無く、それどころかアリシアがエドワードと親交を深めている件についても容認しており、彼女が婚約破棄されたことを恨みアリシアに暗殺者を仕向けることはあり得ない。


そしてアリシアを襲撃した暗殺者は、アリシアの魅了(チャーム)による洗脳を受けていたであろう彼女の友人だという令嬢がリリゼットの名を語り依頼した者であり、裁判でのアルガリータ公の証言は『リリゼットが生きている限り私に平穏はない』とアリシアに泣き付かれたエドワードが、リリゼットを有罪にすべく次期王妃襲撃を行った大罪人を出したアルガリータ家取り潰しを行わない条件として、リリゼットが不利になる証言をするよう取引したものだった。


以上の調査結果をディアンはこの王座の間にいる国王夫妻を主としてこの場にいる者すべてに聞こえるよう報告を述べた。


「無実の罪で将来有望の次期王妃を自害に追いやっただけでなく儂の代で守護獣様に見放されてしまうとは…歴代の王達に顔向けができん…」


調査結果を聞き終えた国王は皺が刻まれた両手で顔を覆いながら愚息(エドワード)の所業に改めて嘆き、リリゼットを娘のように可愛がっていた王妃の嘆き悲しむ声がより大きくなった。


「エドワード、お前はどう責任を取るつもりなんだ?」


「責任と言われましても…何が何だか…そもそもオレはリリゼットと婚約破棄などしていません…。リリゼットが自害?リリゼットが死んだなんて嘘ですよね…?」


エドワードはリリゼットと婚約破棄などした覚えもなければ彼女が自害したという事実を今知ったという態度だった。


エドワードのこの発言で『お前なに言ってるんだ?』と言わんばかりの表情で周囲の者達からの冷たい視線が彼に注がれる。


「あの小娘からの魅了(チャーム)が解けたようだな…。お前が精神異常防止魔道具が無くとも魅了(チャーム)を弾けるほど精神を鍛えていればこんな事にはならなかったというのに…お前には失望した」


アリシアにかけられていた魅了(チャーム)が解けたエドワードは学園在学中の対人関係に関する記憶が曖昧になっており、特にあの卒業パーティー後から今に至るまでの記憶がスッポリと抜け落ちているようであった。


『オレは誰がなんと言おうとアリシアだけを純粋に愛している!よってこの場でアリシアとの婚約を宣言する!!』


あの卒業パーティーでエドワードが声高らかにアリシアだけを愛していると宣言していたというのにアリシアへの愛は所詮魅了(チャーム)によるものだったというお粗末なものだったのだ。


「エドワード…、この日をもってお前から王位継承権を剥奪する」


魅了(チャーム)で暴走していたとはいえエドワードの所業に猶予を一切与えることなく国王は目の前でまだ混乱している彼に王位継承権剥奪を告げた。


「次期王位継承権を持つレイシスはまだ幼い。然るべき年齢になるまで我が国の守護獣不在と王位継承権が移ったことを国外に知られぬようにしなければならん…」


ガルヴァンは強国ゆえに敵も多い。


エドワードから王位継承権が移った第二王子のレイシスはまだ10才、自分の身すら守れない状態で外部からの刺客から襲撃を受ければひとたまりもない。


ガルヴァンから守護獣がいなくなりクリスティアが恐ろしいほどガルヴァン以上に発展した事実を知った今、国王は守護獣不在と第一王子の継承権剥奪の情報が漏れるのを恐れていた。


外部から格好の標的になるだけでなく守護獣と契約していた将来有望の次期王妃候補だったリリゼットを無実の罪で殺めてしまったのだからいい笑いものである。


ガルヴァンは第二王子が即位するまでに守護獣に戻ってきてもらうなどして国の強化を図る必要があった。


よってアリシア暗殺疑惑の真相、ガルヴァンの守護獣不在とエドワードの王位継承権剥奪の件はこの場にいる者達だけの秘密となった。


「次は他に裁くべき者達に処分を下さねばな…」


アリシアの実家にあたる男爵フィリーズ家と将来有望の王妃候補リリゼットの自害を後押しする偽りの証言をしたアルガリータ家を国の危険分子と見なし爵位の剥奪。


エドワードの言いなりとなりリリゼットに有罪判決を下した裁判関係者は過去の冤罪事件を理由に裁判資格の剥奪。


リリゼットの名を語りアリシアの計画に加担した令嬢は国王からの許しが出るまで屋敷にて軟禁。


などの処分が後日国王により決定された。



エドワードは王位継承権を剥奪された他、守護獣が国に戻って来てもらえるよう交渉するためには自害したリリゼットの遺体を丁重に弔わねばと手始めに罪人墓地に埋められたリリゼットの遺体を探すよう国王により命が下され、アリシアの幽閉に関しては魅了(チャーム)でエドワードを含めた周囲の者達を洗脳した事実は伏せられリリゼットを自害に追いやってしまったという罪悪感で精神を病み静養していると世間には公表された。


いずれも国外にガルヴァンの醜態を漏らすわけにはいかぬとリリゼットが無実の罪で自害したという事実を世間に公表されたのはずっとあとになってからだった…。


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