3.前日の経緯。
3人が部屋に置いてあった椅子に座ったところで、3人の反応から考えうる最悪を想定して悠斗は聞いてみることにした。
「もしかしてだけど、誰か死んだりした?」
3人は首を振る。
「じゃあ俺の他にも怪我の状態が酷い人が?」
これにもすぐ首が振られる。
どうやらそういった方向での悪い話ではないらしい。
それから説明の仕方に悩み落ち着かない様子だった3人だが、由紀が口を開いた。
「どうやら私たちはお呼びじゃなかったらしい。」
由紀は話しきったような雰囲気を漂わせて椅子に深く座り直したが、悠斗からすると全てを端折られて結論を述べられても何もわからない。
「湊、それはどういうことだ?それじゃあ全然わかんねえよ」
「昨日あったことを順番に悠斗に説明してやるよ。」
ここで大樹が話を始める。
唯からの追加情報も挟みながら、悠斗が大樹の話を聞いてわかった状況はつまりこういうことであるらしい。
バスがトンネルを抜けたと思ったら、なんとかという国風の城のような空間に出ていた。
バスは壁に突っ込んだが、怪我人は兵士の方に何人かと悠斗だけであるらしい。
この国に残されていた、解読がようやく成功した本にあった異なる空間を繋ぐ魔法によって起こされた現象であること。
「大樹、ここまで聞く限りだと俺たちは招かれるべくして招かれたのでは?」
「それがそうでもないらしいぞ。本当ならこの魔法によって呼ばれるのは1人だけらしく、その1人に対して何か特別なことが起こる予定だったらしいんだ。」
「もしかして、その特別なこととやらが誰にも起こらなかったのか?」
唯も口をはさむ。
「そうらしいの。私たちを呼ぶ魔法を使った人は、想定より大人数を呼んでしまったことでその特別なことは全員に分散して少しずつになったのではということらしいわ。実際こっちに来てから少し体が軽くなったように感じるということをみんな言ってる。」
「それは3人も?」
3人とも頷く。
どうやら本当にそういうことらしい。
「なるほど、お呼びじゃなかったという意味も含めてここまではわかった。じゃあ改めて何が俺たちにとってあまりいい話じゃないんだ、一応の予想はあるが聞いていいか。」
「私たちはいらないからここから追い出されるらしい。」
「由紀、それはまたまとめすぎよ…。」
「湊の言うことも嘘ではないんだが、正しくいうと1ヶ月の間は面倒見てくれるらしい。その後は自由だとよ、まあこの1ヶ月で兵士や文官への適性があり希望があれば就職もありらしいんだが俺たち戦ったこともなければこの国の言葉が読めるわけでもないんだよな。」
今の大樹の言葉にはひとつ悠斗の予想と違った言葉があった。
それは
「ここの人たちから色々事情聞いたんじゃなかったのか?てっきり言葉は通じて文字が読めるものだと思ってたんだが。」
「それが…これが俺たちがこの話を聞いて信じたきっかけにもなるんだが、村田のやつだけはここのお偉いさんが話してる言葉を何故か理解して返答できたんだ。」
「これが特別なことの一端ってわけでしょうね。村田も会話は出来たけども読み書きは出来なかったし、もちろんこの世界の生まれなわけでもないでしょうから。」
とりあえず悠斗たちは基本的に会話も出来なければ読み書きも出来ないらしい。
「なるほど。だから俺たちはその条件だと出ていかざるを得ないのか…。」
まだ聞きたいことがあり悠斗が口を開こうとした時、部屋のドアがノックされた。
唯が返事をすると、ドアは開きそこからこの国の人であろう格好をした人と村田恭矢が顔を出した。
最初から言う言葉は決まっていたのだろう。通訳を行う様子などなく村田が言う。
「十亀。起きたのならちょっと付いてきて欲しい。」
説明ばっかりでいつ進むのだろうかと悩んでる。




