はい、どーん
「きえええええええええ!!!!」
はっはっはっ…………。
あの、何か遠く後ろから奇声が聞こえてきたよ、あ、僕は今逃げてます。
だって、さ、白川さん、暴れ……
<ドグォォォォーーーーン!!!!>
なぁーーーー!っでぇ!破片が飛んできた!頭に当たったぁ!!
足元に落ちてる何かを拾って見て……。
これって……扉の取っ手のとこじゃん!!粉々じゃん!!
<ドグォォォォーーーーン!!!!>
壁が爆ぜたあああああ!!!!
足止めてる場合じゃない!!
「けんちゃん、こっち!!」
突然、静絵さんが現れて僕の手を取る。んで駆け出す。
何故このタイミング?とか思ったけどそれどころじゃないんだよね。
「実はね、こっそり見てたの」
静絵さんは振り向いて、笑顔で僕の思った疑問を返した。
僕、こんなしんどいのに……、余裕っすね静絵さん。
人の姿で走るのって疲れるっす。
「あれはまずいわよ〜、いくらね、あくしでんと、だからってね〜」
よー見たら浮いてるっ?!
なんですか!ここぞとばかりに神様パワー発揮ですか!?
ズルイ、ズル過ぎるぅ!!
「あ、ホント、浮いちゃってたわ、まあ気にしない気にしない。
頑張って走ってけんちゃんっ。……あ、危な」
だばっ!!つまずいて転んだ!何この段差!意味あんの!?
「長い廊下にちょっとした段差……ん〜バランスじゃない?」
だで何の?!!意味ないでしょ!!
「まあまあ、はい、立って。
そろそろ後ろ、爆発しちゃうから、急ぎましょ」
コワッ、神の予言ってやつっすか?
「ん〜ちょっと違うかな、あ、そこ、はい、ど〜んっ」
<ドグォォォォーーーーン!!!!>
なあああああーーーーー!!!!
静絵さんの指差した先、掛け声と同じタイミングで、壁が爆ぜた。
……理屈とかもうどうでもいいっす。
まずこの状況、誰かどうにかして……。
はぁぁぁ……、ん、静絵さんが向こうに手を振ってる。
「かなちゃーん、こっちこっちー」
何故?!
こっち呼んで?!
静絵さんは敵なん、味方なん、どっち?!!
ああ……足音が近づいてくる、妙に静かなのが怖い。
絶対、殺される。
…………足音が止まった。
「……なんで逃げるの」
ひええええ!!!
すぐ後ろに恐怖の権化がいるのを感じる。
……小便チビリそうっす。
昔、電車乗ってる、黒のスーツに黒のシルクハット被ったおじいちゃんを見たことがありやす。(たしかステッキも持ってたはず)
めっちゃカッコいいよね。
なんつーか風格ってゆーか品格ってゆーか。
あの雰囲気、憧れるなあ。
あっしも老人と呼ばれるくらいの歳とったら、ああなりたい。
……ただ、電車とはかなりミスマッチだったけどさ。
まあ、そんなの気にしてたらダンディーじゃないよね。