“キンタ・MAMMA・マーケット……略すなよ。”
………………ん。
ナニカネ?
「なんやお前、静姉の弟さんかいな。
それやったらそうと、早う言わんかいっ!」
僕が静絵さんの弟とわかったとたんに、この小さな人は僕の背中を叩きながら、笑いだした。
なんて図々しいんだろ……。
「どや!今からわいの家でお茶でも飲まへんか?」
小さな人は後ろを親指で差し、なぜかお茶を誘ってきた。
……ということはこの人もぽぽぽんの住人?
し、知らなかった……。
いや、それよりもあんたら誰だよ。
「あら〜残念。
今から買い物行かなくちゃいけないの。
ごめんね〜」
静絵さんは両手を合わせ、謝意を表した。
……僕は相手にされずってね。
「そっか……。
そら残念やな。
確かに、今から行かへんとキンタのタイムサービス、間に合わんわ」
キンタ?
キンタって何さ?
「あら?けんちゃん知らない?
ここの近所のスーパーなのよ。
安くてとても助かるのよね〜。
けんちゃんも一緒に行く?」
う〜ん……
たまにはいいかな。
あっでも蝉零さん待たせると悪いかな?
やっぱいいや、やめとく。
「いいのよ〜そんなに気にしなくて。
それぐらい、こんちゃんがきちんと事情を説明してくれるって。
ねえ〜〜?、こんちゃん?」
あら、金剛に流し目で……
じろ〜っとね。
<びくっ!>
…………あ、たじろいだ。
なんちゅう眼力っすか、静絵さん。
「う……
は、母上の頼みなら……
仕方ないな……」
渋々、金剛は承諾し……あれ?
まだ静絵さん睨んでますぞ?
「ははうえってだれかな〜?」
ああ!そーゆーこと!?
そーゆーことか!!
「あ……
静絵お姉さまの言うことであれば…………」
金剛。
…………ドンマイ。
金剛は静絵さんの事を言い直し、その後、そそくさーっとその場から立ち去った。
「じゃ〜〜行こっか。
け〜〜〜んちゃん♪」
やっぱ行くんだよね……。
行かなきゃ……いけない……よなー……。
「…………ハイ」
ちょいうなだれ気味に言ってみたです。
「あ〜〜〜ん!!
私のけんちゃん!!」
<ぎゅううううう>
「…ぐえ……」
なぜ?!
…………く、苦しい……。
し、静絵さん、決まりかけてますから……
放して……。
「あ……」
やっと気づいてくれました……。
静絵さんからよーやく解放されました。
「ごめんねけんちゃん。
でも可愛すぎるけんちゃんがいけないのよ」
………?
どないやねん!!!
その理由、どないやねん!!!
「じゃ、行こっか」
僕のつっこみ、スルーですか?!
ああ!静絵さん、先、行っちゃたし!
こうして、僕もお買い物へ付いていくことに。
「………?
静姉、誰と喋ってたんや?
ほんと、不思議な人やなー。
でもまた、そこが魅力的ってゆーかなんてゆーか……」
<ポリポリ>
「親父ぃ!!
たくわんばっか食っとらんで、ほら、わいらも行くで!!」
―――ってなわけで、いつものスーパーの前にて―――
いやー結構歩いたですな。
「そうね〜
だいたいうちからは10分くらい……かしらね〜
あっ、ここよここ」
へえ〜ここが…………
………。
キンタ・MAMMA・マーケット……ですか……。
…………なんか危なくない?
「けんちゃんったら、たまに良く分からないこと言うわね」
……わからない、ならいいです。
…………でもやっぱ危ないよなー。
ん。静絵さんの表情が変わった。
「まずいわ、けんちゃん!
1時まで、あと30秒しかないわ。
急いでけんちゃん!!」
ああ!走って中に入ってちゃった……。
僕も後に付いていこう!
<ポリポリ……>
「親父ぃーー!!
はよしいーやぁ!!
たくわん、一体何本食うんや!?
わいらも急がなあかんがな!!
ほな…もう……!
<ぐいっ>
……ぬぅ、図体だけはでかいんやから………んなぁ!!」
―――ほんで突入ってなわけ―――
中はおばさんが大量に蠢いていて……
全方向から凄まじい威圧感がする。
ああ……帰りたい……というより、居たらやばい気がする。
なんて言うか……もう、生死の問題?
……ん、やけにおばさんが集まっている場所が。
おーー!!静絵さん発見!!
すげえ形相っす……。近寄れないっす……。
<カランカランカランカラン>
「今からーーーー!!!
タイムサービスがーーー!!!
ばじまっり……!!!
奥様方っ!!ちょちょっと…うわああああ!!!」
おいおい……今、悲鳴がした……。
ここはもしかして、戦場……?
「どや、驚いたやろ」
ぬわっ!……あ、名前なんだっけ。
「そんな、驚かんでもええがな。
わいもここに用があるんやからいてもええやろ。
そないしても……ド迫力やな。
まさしく、死地……やな。
でも、わいは行かなあかん。
涙はいらへんからな……。
さらばや小僧!!」
……何言ってんだ?この人。
あっ、おばさんの群れに突っ込んでった。
………………。
おおーー!!入った入った。
「おばはんども邪魔やーーーー……
…………」
あの人の声がしなくなった。
……やな予感。
<ずどーーーんっっ!!!>
なんて音が…………!!!
「Nohhhhhhhh!!!」
人が、飛んでる……。
その先には大量に積まれた缶詰の山が。
………。
オチが読めた気がする。
<ガッシャーーーン!!ガラガラガラ……>
ま、だろーね。
見事に缶詰の山に突っ込んでったよ。
おっ、缶詰が一つ、彼の頭上に飛んで……。
もしかして、もしかしてぇ〜?
「くそぉ…なんて馬鹿力なんや。
覚えとけ!!おば」
<スコーーーーン!!>
「ぶっ…………」
<バタッ>
ぃよっしゃあーーー!!
脳天ヒットォーーー!!!
最高や、あんた最高や!!
「あら、どーしたの、けんちゃん?
なんかイイ事でもあったのかな?」
のぇ?!!
後ろからいきなり再登場ですか、静絵さん!?
「な〜に、そんなに驚いて。
けんちゃんがガッツポーズ取っちゃうほどのイイ事があったんでしょう?
お姉ちゃんにも教えて欲しいな〜」
え?ガッツポーズ?
あ、出てたね。
いつの間にか、僕の両手が握り拳になってますな。
………。
説明……無理。
ん〜……
え〜……
特に何もありませんでしたよ、お姉ちゃん。
「あら、そ〜お?
あっそうそう。
はいこれ、けんちゃんの分ね」
そう言って僕に半端なくでっかい大根を手渡した。
…………その大きさ、丸太の如く……。
<ズシッ!>
重っ!!
これ…片手で持てない……!
静絵さん、これをどっかの剣豪のよーに、二本持って来たんだよな……。
二刀流って感じで軽々と。
すげぇ……。
「さーてとっ!
今日の晩御飯は大根づくしに決定ね!
どーする?
けんちゃんも食べてく?」
あ……遠慮しときます。
早めに帰っておいたほうがいいと思うんで……。
「ん〜……それもそうね〜。
あんまり長いと心配だものね〜?」
はい……金剛、消されかねないんで。
「えっ?あ〜〜〜そっち!?
……そうね、そうよね〜〜」
確実に会話がかみ合ってません。
……まあいいや。
それより静絵さん、買い物、これで終了?
「んー……」
僕の問いかけにも反応せず、何かずっと考え込んでるし。
あの〜…………あっ、そうか。よし。
静絵おね〜〜ちゃん?
「あ、は〜〜〜い!な〜〜にぃ、けんちゃん?」
どーしたんすか?
「えっ?!どーもどーも。
はい!おっ!買いっ!物っ!の続きっ!
いこ〜〜〜!!」
また先に行って……!
もう待ってさ〜〜〜!!
まあ、先にどんどん買うもんをカゴに入れてく静絵さんを追っかけるので精いっぱいで。
でもなんとか見失わずに、最後まで付いていけました。
そんなこんなで買い物終了。
無事、精算も終えて、買った食材を二つのジャンボエコバックに一杯になるまで詰めて、はいお〜け〜!
大量の荷物を両手に抱え、静絵さんの家まで帰還しました。
帰り道の途中、静絵さんに何度か二刀流の大根でどつかれたけど。
どつく度に、
「けんちゃん、ごめんね〜〜」
って言って、謝る。
これだから静絵さんは憎めないね。
さて、あとは静絵さんに犬の姿に戻して貰って、我が家に帰るとしますかな。
………………。
何か忘れてるような……?
「お客様っ!!
商品を勝手に食べないで下さい!!」
「すんませんすんません。
全部あとで払うでゆるしてな、ねーちゃん」
<ぽりぽり……>
「親父ぃーーー!!!
いい加減にしいやーーー!!!」
「……ウマイ」
「そーかそーかぁ、そら良かったなぁ……
って、んな感想はどーでもええねんっ!!
ほな早う帰るで!!!」
<ズシ……>
「頼むで動いてぇなぁ!!
うちでぎょーさんたくわん、たべさせたるから!!
んなーーーーー!!!」
…………なんかどっかで大変な事が起こってるような気がする。
でも、まあいっか!
ブドウと加藤……違うな。
ブドウを加藤と買っとろう……これも違う。
とうかとうぶどうとう……だっけ?
十日にとうとうブドウを取ろう……??
ジュースの裏に書いてあって、一人バカ受けしたんだよな……。
『とう』多っ!!ってね。
………………特に何も関係ないでございやすよ。