四十話目で。“多分、どちらの‘はなこ’もお手が出来ません。”
う〜ん……
まだ読みにくいなあー……。
えっとですね〜……。
学校に着くまでですけどね〜……。
特に大した事はありませんでした。
白川さんが隣で、
やたらと眩しい笑顔でしたけど……。
僕の身に危険は一切なく、
まあ良かったです。
で、今は教室なのです。
西崎のお話……
「今日は一時間だけだが、
この後、ほとんどの者は部活だろう。
久々の部活にはしゃぎ過ぎないよう気をつけろよ。
それじゃあ皆、テスト、がんばれよ。
…あと、帰りのホームルームは無しでいいからな。
終わったら、各自解散だ。
……以上」
<ガララ…ガララ…ドン!>
西崎が出てった。
………。
適当だな。
あいつ。
<ガラっ>
「そうだ犬岸!
お前はテスト三時間だからな!
間違えて帰るなよ!」
<ドンっ>
……そうだ。
僕、途中参加だもんな。
皆がすでにやった二教科分のテストやらなきゃ……。
めんどいっすね〜。
ここで白川さんが左隣りの席から話しかけてきた。
「私、今日から部活再開で一緒に帰れないの。
ごめんね」
……いや、頼んでませんし、いきなり断られる理由が判りません。
……ん。
帰りにホームルーム無いってことは……
今日、あれを渡すチャンスは今しかないね。
よし。
カバンの中からあの手紙を取り出し、白川さんに渡す。
すると、白川さんは僕の耳元まで顔を近づけ、こう囁いた。
「今、ラブレターは不味いって!」
…………なんでやねん。
「……チガウ。
…………きのう、お詫び」
何かすんごくぎこちない言葉だけど、なんとかつっこめた。
……はずだった。
「あら。
御二人さん、こんな所で文通なんてお熱いわね。
時と場所をもう少し選べないものかしら?」
僕の前の席の人が振り向き……ってか誰?
釣り目で憎たらしい喋り方。
初めて見る人に対しては失礼かもしれないけど……
すげえむかつく、コイツ。
なので、指さして言ってあげました。
「…………あんた、ダレ?」
<ズルっ!>
おっ!背もたれにかけてた肘を滑らせ、コケのリアクションをしましたな。
そんなあんた、オモロー!
僕の中でちょ〜〜っとだけ好感度アップしたかな。
「あ、あなたねぇ……
この如月を知らないって言うの?!
全く……
信じられませんわ!!」
ん〜〜なもん知るか!!
こっちは昨日来たばっかだっての!!
んで、僕の問いに答えるため、白川さんがこの人を簡単に紹介してくれたんだけど。
「け、健太くん。
こちらは如月 華子さん。
私のお友達よ」
…………ぷっ。
はなこだって。
あの向いの家の馬鹿な犬と同じ名前だし。
「あ、あなた!?
今、わたくしの名前聞いて笑いましたわね!?」
へ?笑ってるわけあ〜りませんか。
取りあえず、首でも振っとこ。
ほい、ブンブンってね。
「キーーッ!!馬鹿にしてッ!!
わたくしの一番気にしていることをっ!!」
勘違いにもほどがあるんじゃないかな〜〜?
<ガララっ>
1限目のテストを監督する先生が現れました……
!!!!
いつの間にっ!?
気が付けばすでに華子は教卓のほうへ体を向けていたわけで。
すっげえ瞬発力……。
日直の誰かさんが号令をかける。
「きり〜〜〜つ!!」
全員がこの掛声を元に立ちあがる。
この時、白川さんが自分の口元に手をあて、また僕に囁いた。
「ラブレター、ありがと」
「……チガウから」