三十九話目。“ギガホン”
これ、読みにくい?
静絵さんが玄関のほうに向かい、
しばらくしてから突然、
ギガホンがした。
「おはようございまーーーす!!!」
<ビリビリビリビリ>
な?!
家具が振動してる!!
な、何なんすか?
今の。
でも、何となくこの衝撃、
覚えあるね……。
いつぞや受けたあの凄まじきギガホン。
この技を繰り出せる人物は、
僕が知る上でただ一人。
<タタタタタタッ>
足音がする。
ん。
静絵さんがかる〜いステップで戻って来た。
「けんちゃ〜〜〜ん!
もう、学校に行く準備は出来てるかしら?
かなちゃんがお呼びよ〜〜」
えー……やっぱし白川さん?
……行かなきゃ、
だめ?
「当たり前でしょ!
もうけんちゃん、
ぐずぐずしないで、
ほ〜ら!
行った行った〜!」
ほんで、静絵さんにカバンを無理矢理持たされ、
玄関まで強制連行……。
僕の足取りはとても重たく……。
あの大声の主は、
ドアの前に立って待っていた。
カバンを両手もちして……。
うわ、めっさ笑顔だし……。
昨日のあの感じはまるで一切無し。
……まあ、お元気で何より、
と思うべきかな……。
「健太くん、おっはよっ!!」
うう、またもやギガホン炸裂っす。
で、でも……返さないと不味いっすよね。
「……おはよ」
「!!!
けけ、けけけけけけけけんちゃん!?
今、喋った!?」
リアクションでか過ぎです……。
そんなに僕、喋っちゃ悪いっすか?
「わ、悪くないわ!
……う、うん!
でもけんちゃん、
いつの間に会話ができるように……」
んぇ?会話?
………。
今のが?
「実は昨日、
健太くんの日本語会話の特訓をしたんです」
「えっ?!
そうなの?
なんかわざわざ悪いわねぇ〜〜。
でも一日でこれほどになるなんて、
カナちゃんって凄いのね」
「いいえ、健太くんが優秀だからです」
おだてても何も出んよ……。
「うふ。そ〜なの?
でもホントありがとね」
「いえ、私たちも好きで勝手にやったまでですから」
ほんと。
……好き勝手やられたよ。
「えっ?じゃあ、あなたたちさえ良ければ、
このままけんちゃんに、
レッスンして頂けないかしら?」
ダメだって何でそんな事……!!!
「お安い御用です!!!」
………。
おお〜〜〜〜〜う…………。
死んだよ。僕もう死んだよ……。
「じゃあ今日も、
けんちゃんをよろしくねっ!!」
「はい!!もちろんです!!」
<どんっ!!>
うわっ!!
何するのっ!!
いきなり静絵さんに背中を押され、
僕はよろめきながら、白川さんの隣へ。
何とか踏ん張れたから良かったけど、
危うく真正面からぶつかるところでしたよ。
「ほ〜ら、早く行きなさい。
かなちゃん、あなたのために、
部活まで休んでくれたみたいだし」
「ほぇ……?」
そ、そうなんすか??
「いいんですよ。
本来、テスト期間中は部活動は無いものですから。
全然気にしないで下さい」
「でもいいのぉ?
あなた部長さんでしょ?」
「いいんです。
彼女たちも勝手にやってるだけですから」
そんな言い方して……。
いいんですかね?
部長ってえらいんでしょ?
「あらそうなの〜。
じゃあいいわね」
おいおい……。
……………。
<ジーーーーッ……>
……ん?
何、僕の方、見て?
…………あっ、
これ僕待ち?
靴、履いてないしね。
右足、左足、はいOKです。
「じゃあ二人とも行ってらっしゃーい」
<ガチャ>
僕がドアを開ける。
「かなちゃん」
「はい」
「けんちゃんをよろしくね」
「はい勿論です。お姉さまっ!」
お、お姉さま?!
いつの間にそんな関係になったんすか!?
………。
まあどーでいいや……
そんな会話を後ろから聞こえながら、
僕が先に出る。
その次に白川さんが出る。
<バタンっ>
ドアが閉まる。
「ふう〜〜〜……。
やっぱりお姉さまの前だと緊張する〜〜〜。
……よしっ!!
それじゃあ、行こっか。
ダ〜〜ァリンっ!!」
あ…またその呼び方……。
そんなわけで白川さんと一緒に登校するんです。
………。
なんかもう帰りたい……。




