三十八話目。“夢のまた夢”
い、嫌だーーー!!!
寄るな…寄るなーーーー!!!
なんでそんな顔白いんだよぉーーー!!!
気色悪いんだよぉーーーー!!!
し、絞められるぅーーー!!!
<ぎゅうううう!!!>
ぎゃあああああ!!!
「うあああああ!!」
<ガバっ>
「きゃあっ!」
<ゴッ……>
「はあ…はあ…はあ……」
ゆ、夢?
夢だったの?
んえ?
静絵さん?
頭押えて…大丈夫っすか?
「あ、う、うん。
だいじょーぶ……」
「母上。
もうちょっと静かに」
「今年の流行色は黒かー……」
僕の見知らぬ人が二人。
一人は、
モンペを着た女性。
三つ編みの髪型で、
牛乳瓶の底のような眼鏡を掛け、
はちまきを巻いてる。
はちまきには、
合格の二文字が書かれていて、
その間に日の丸が。
僕は何故か、
昭和の浪人生だなぁ、
って思った。
意味がよく分からないけど。
あと、
静絵さんに、
ツッコミを入れたのはこの方です。
もう一人は、
僕よりも遥かに背の低い女の子。
髪は肩まで伸びてて、
赤のセーター、青の長ズボン。
黄色い帽子を被り、
赤いランドセルを背負っていた。
テレビを被りつくように見て、
片手に持った茶碗には、
未だ手つかずの状態の御飯が盛られていた。
えー……
御二人はどちらさんで?
「私の名は紗音。
君の姉をやらせてもらう事になったから。
よろしく健太くん」
もう一人の…この子は?
「子ってゆーな!!
もうっ…………
……私はレミーナ デュランダル。
……レミーナじゃ呼ばれ慣れてないから、
レム
って呼んで」
……外見と喋り方が、
あまりにも合わな過ぎっす。
「し、仕方ないじゃないっ!!
こーゆー役割をやれって言われたんだからっ!!
私だって白紗音みたいに大学生に……」
白紗音?あ、あ〜〜。
金剛のお姉ちゃんの名前だったけかな。
白紗音と紗音……
ハクを取っただけね。
つー事はこの人が金剛のお姉ちゃんか。
「ごめん。
私、浪人生って設定だから。
まだ、大学生になれてないから」
だからってその格好はどうかと……。
「まーまー二人とも。
そんな事より朝ご飯、
早く食べて。
冷めちゃうと美味しくなくなっちゃうわよ〜〜。
ほら、けんちゃんも」
あ…はい。
食べます。
この焼き魚うまいっ!
「あら、ありがと。
けんちゃん」
この肉じゃが最高っ!!
「ふふっ、
いっぱい食べてね。
おかわりもあるわよ〜」
ってな感じで朝御飯でした。
いや〜本当、
人間っていいですな〜。
「もう、けんちゃんったら〜。
いつもいつも大袈裟よ〜。
でもそう言ってくれると、
お姉ちゃん、嬉しいわ〜」
いやいや、
絶品とはこの事をゆーのでしょうな。
「またまた〜」
<ピ〜〜〜ン、ポ〜〜〜ン>
ん?誰か来た?
「あら。
ちょっと行ってくるわね」
「ねぇ〜白紗音ぇ〜」
「この世界では、
紗音と呼んでって何回言ったら……」
「ポジションチェンジっ!!」
「NO!!!!」
なんでそんなに嫌なんすか?
「だって、
この姿だとおしゃれできないし〜、
他にも色々出来ること限られてくるし〜」
う〜ん。
確かに不便っすね。
「ね〜。
けんちゃんも私のセクシーな姿、
見たいと思わない?」
セクシーな姿は別にして、
大人になったときの姿はちょい見たいかも。
「でしょでしょ〜。
ね〜え〜白紗音ぇ〜。
けんちゃんもこう言ってることだし〜……」
「ムリ」
「……どーしても?」
「ムリ」
「…………ケチ」