三十七話目。“何も〜かも〜まっ白にぃ〜してっ!!”
……うーん。
……何処からともなく、
美味そうな匂いが……。
……あっ上様っ!
「……ごはんよー」
行きます!
行きますともっ!上様ー……
……………。
………。
……熱っ!?
「ほら、けんちゃん。
ご・は・ん。
……うふふっ、
やっぱり起こしちゃ不味かったかしら?」
うう……
頬がジンジンするぅ……。
静絵さんの手には、
あっつあつのお茶が入った湯呑が。
どうやら僕の頬に、
湯呑をずっとくっ付けてたみたいだ。
僕が飛び起きても零れないよう、
少ししかお茶入ってないし。
なんで普通に起こそうとしないの?
「な〜に言ってるの。
これが犬岸家に伝わる、
伝統の起こし方じゃない」
…………んーなの知らないっす。
「さ〜てとっ!
あの二人も起こしてこようかしらね」
あの二人?
あ、ああ…例のお客人の事か。
そして静絵さんは、
お客人を起こすべく、
奥の部屋へと入ってった。
<スー……スー…ピシャッ>
引き戸が閉まったね。
<ドン!!>
?
<ドタバタドタバタ……>
………??
一体、
何が繰り広げられているのだろう……。
<スーー……>
あ、開いた。
「さあっ、けんちゃん。
皆で朝ごはん。
食べましょうね」
あ、はい……。
ん、静絵さんに続いて誰か出てきた。
白くて透き通るような肌。
しなやかに伸びる手足。
ふっくらとした艶やかな唇。
ちょんまげ。
…………ちょんまげ?
あと、ちょび髭。
「まろの御飯、
用意してくれたのでおじゃるか」
し、静絵さん?!
…………だ、誰?!!
「えっとね。
通りすがりに行き倒れてた旅人さん」
……通りすがりに行き倒れるって。
どーやんねん?
つーか知りあいなの?
「んーん。
赤の他人」
…………こら。
「まろの御飯も、
用意してくれたのでおじゃるか」
後ろから、
またおんなじ奴出てきたしっ!!!
……気持ち悪っ!!
……何かホントごめんなさい。