表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある皇太子の逡巡  作者: ねぎまんぢう
第2章 14歳編
12/27

第10話 ある皇太子の支度






14歳になってみたが、邪眼に目覚める気配も右手の封印が解き放たれる気配もなかった。

ちょっと楽しみにしていたのに。


あ、前世の記憶はあるんだった。十分厨二病か。













14歳と言えば、何年も前からおねだりしていた国内視察解禁の年齢だ。

父上は少し渋っていたようだったが、最終的には折れた。

なんだかんだ言いつつ息子が自分の後を追いかけるのが嬉しいんだろう。

前世の私には子供がなかったので共感はしかねるが。




10歳の時に立ち上げた工房も極めて順調である。

流石に魔導レンズは悪用の可能性が高いので国家機密入りだが、例外をふたつ設けた。

一つは宮廷魔導師団内での配備だ。

なにせ事実上の国軍なのだから、最新兵器を配備するのは当然と言えるだろう。

魔導師団というと、魔法の研究とか行っていそうなイメージだが、この国の魔導師団は前世でいう砲兵科に近いのだ。前線の騎士団を火力支援するのがメインの役目。

他にも土魔法による工兵、治癒魔法による衛生兵も兼ねている。



二つ目は医療・美容分野での解禁だ。

医療は精霊教会所属の施療院で行われており、福祉関係も統括している。

本来権力におもねらないことを教義としている精霊教会だが、以前知遇を得た司祭長の伝手を使って思いっきり横なが…ゲフンゲフン、寄付した。


美容では私も愛用しているヘアケア用光魔石つき棒を売り出した。

当初は『ビューティ(ボー)』と名付けたが全く売れず、仕方なく『ヘアケアロッド』と改名したら飛ぶように売れた。ちくしょう。






麻紙と印刷機は爆発的に普及した。

父上の善政で物質的に豊かになっていた国民は、やはり娯楽を求めていたのだろう。

おかげで売り出した当初、起爆剤(キラータイトル)として出版した私著の本も大ヒットとなった。



まず『ミントス領前領主コウゲイツ』。

老爺が世直しするアレだ。わかるだろう?

やはり勧善懲悪はいい!分かりやすいし気分も晴れる。



次に『白い教会』。

私が司祭長に医療用魔導レンズをよ…寄付した話をだいぶ盛って書いてみた。

そして初版本を司祭長にプレゼントしてニッコリ笑顔で「あのことがバレたらこうなっちゃいますねぇ~」とブラックジョークをかましたら、笑顔のままで滝のような汗を流すという一発芸で返してくれた。



そして3部作『ノブナガの陰謀』『大公大志伝』『(あざみ)トクガワ三代』。

前世日本の安土桃山~江戸初期の歴史を架空戦記として書いてみた。

帝国民のイメージでは織田信長と初代帝が重なるらしく、すんなりと受け入れられた。



言っておくがパ○リじゃないぞ。

オマージュだ。崇敬なるオマージュである。私は時代物が大好きなのだ。

ほら、昔の野球ゲームで選手が『ほら』とか『くわたん』とか『くろまて』とかになっていただろう?あれと似たようなものだ。




これらのヒットのおかげで莫大な初期投資分を取り戻しつつある。

そろそろ私の手を離れてもいい頃合いだな。

狙い通り作家業も確立されつつある。面白い本も出てきた。


以前ヴィオには私が楽しむために本を普及させたといったが、実はもう一つの目的がある。

すなわち『パンとサーカス』論だ。

パンは父上が配った。ならば次は娯楽(サーカス)だ。

古代ローマの失敗を踏まえて、娯楽である本は出来るだけ安価にした。

古代ローマはこの理論のせいで無産階級(プロレタリアート)が生まれ、貧富の格差が拡大してしまったのである。

こうして国民の興味を宮廷からそらすのだ。

さすれば革命などは起こらず、私の立場も安泰というわけだ。

ロシア帝国の二の舞にはなるまい。






△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽






「フンフフン フフンフフン フンフンフンフフーン♪」


おっ、次回作は荒ぶり坊将軍なんていいかもなー。




コンコン ガチャ。


「おはようございます殿下。おや?ごきげんですね」


「おはようございます先生」



私は机に帝国の地図を広げてメモ書きをしていた。



「私ももう14ですからね。もうすぐ国内視察の旅に出るので、その計画を練っていたのです」


「ああ、陛下からお許しが出たのでしたね。私の授業でももう殿下にお教えすることは無くなってきましたからね。現地を実際に見るのはとてもいことだと思います。…もうすこし算術を頑張ってくだされば申すことは無いのですが」


「うぐぐぅ…」



「さあ、授業を始めましょう」









授業が半分ほど終わった頃、ノックと共に侍女が入ってきた。

最近入った若い侍女だな。私が生まれたときから世話をしてくれていた古参の侍女は産休に入っている。うむうむ、めでたい。



「殿下、授業中に申し訳ありません。シーレーン族の方が午後の面会を求めておられますが、いかがいたしましょう」



シーレーン族?

シーレーン族と言えば内海と外海の境目に住む海中種族だったな。

そんなシーレーン族が私に面会とは?どんな用があるのだろう?


首を傾げながら先生を見るも、先生もピンと来ていない様子。

そんな二人を見て若い侍女は狼狽えだしてしまった。


「あ、あの…その方々は殿下とはお約束があるから、お話を通せばわかるとおっしゃられていたのですが…」



約束?シーレーン族と?

シーレーン族はむかーしに1度だけ見たことがあるが…。

あれは何年前だっけ?もう覚えてないなぁ。

紙漉き道具や印刷機の買い付けにしても、アレはユーリカ工房名義で出しているから、私のほうに来るのはおかしい。

そもそも両方海中では使えないか。


心当たりは全くない。でも向こうは約束があるという。これは一体…?




「あーっ!殿下!あの時ですよ!…えーっとアレは、7…8…9年前のあの日!」


珍しく先生が大声を上げると、何かを指折り数えはじめた。

9年前?私は5歳だな、って覚えてないわ!10年近く前のことなど忘却の彼方だ。


「9年前に何かありましたっけ?」


「殿下は覚えておいでではないのですか?殿下の海属性を感知したシーレーン族が殿下に臣従を申し入れてきて、殿下がそれをお断りになられて…」


「ふむふむ…」


「代わりにシーレーン族から傍仕えを派遣してもらうことを約束したのですよ…確か」


「あー!あー!あー!あー!」


「思い出されましたか?」


「うむ!全く覚えていません!」





勘弁してくれ、私は前世を含めたら90歳越えのどシニアなんですけど。

10年ちかく前のたった1回の約束なぞ覚えてるわけない!







△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽







結局思い出さないままに面会することになってしまった。

先生がおっしゃるには傍仕えを派遣してもらう運びになっているらしい。



後宮内の私の私室の中の応接間に入ると、シーレーン族の二人が片膝をついて待っていた。

大人と子供のようだが。




「皇太子殿下、お久しぶりにございます。我らシーレーン族と殿下のお約束、果たすために罷り越してございます」


このシーレーン族の御仁…どこかで会ったような。


「うむ、よく来てくれた。面を上げてくれ。9年も前の約束、覚えていてくれたこと、嬉しく思う」


先生が「どの口が言うか!」的な視線を送ってきたので見ないようにする。


「はっ!有難き幸せにございます。こちらのお方が殿下の傍仕えを拝命いたしますフィン王子にございます」



今、王子って言わなかったか?

王子って東京都北区にあるあそこかな~?なわけないよな~。



「シーレーン女王が第1子、フィンにございます!誠心誠意皇太子殿下にお仕えすることを誓います!」


顔を上げたシーレーン族の王子はくりくりした黒目勝ちの瞳の小学生くらいの子供。

なんか女の子っぽく見えるけど、王子というからには男の子なんだろうな。


「うむ。皇帝陛下が第1子、ネレウスである。しかし待ってほしい。王子、しかも第1王子を派遣すると申したか?それは問題ではないのか?」


シーレーン族の政治形態は知らないが、女王制である以上、第1王子はかなりの地位に当たるんじゃないか?それを派遣、しかも宗主国とはいえ皇子の一家臣として送るのは問題があるような。


「いえ、本来ならばシーレーン族全体が殿下に臣従するが筋。そこを殿下が右腕候補として一人を受け入れていただけるとおっしゃられたのです。ならばそれは一族の将来を背負う王子でなければ務まらないのです」




あるぇ~?

私の認識では傍仕え=手駒だったんだけど…。

先方では傍仕え=右腕候補なのぉ~?


つまりそれって…今川義元と徳川家康の関係と同じようなものってこと?

あれ?桶狭間ルート入ったコレ?



「う、うむ。そうなのか」


「それに王子は殿下が海の大精霊様の加護を得られた年にお生まれになったお方。これも大精霊様のお導きでしょう」


このシーレーン族の御仁、なんだかノリノリだな。

ああ…親の七光りか。救国の英雄の息子に王子が一族代表として仕える価値を見出しているのか。

英雄の息子が傑物とは限らんだろうに。




「殿下!ご心配には及びません!僕は生まれた時から殿下の傍仕えとなるよう育てられました!武技も師より皆伝を得ております。若輩の身なれど、きっと殿下の御期待に応えて見せます!」



あるぇるぇ~?

私のせいで人一人の人生狂わせてないか?コレ。

いちいちやることが重たいぞシーレーン族!



「では王子、しっかりお役目を果たされますよう」


ちょ待てよ!

御仁、まとめに入ってないか!?

で、でも先生から聞いた話ではコレ私の発案らしいし。

もー!なにやってんだよ9年前の私!











私が自戒の念に苛まれている間にシーレーン族の御仁は帰路についてしまった。

あの御仁、実は相当なせっかちさんなのではなかろうか?




「あー… フィン王子」


「殿下!どうかフィンと呼び捨てにしてください!」


なんかデジャヴュ。だが先生と違って傍仕えに敬称はないし…。






「ではフィンよ。シーレーン族は衣服をまとう習慣はないのか?」


まずそのすっぽんぽんを何とかしようか。











△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽





「いらっしゃいませー!これはこれは皇太子殿下!ようこそお越しくださいました!すぐに貸切にいたしますので少々お待ちを!」


というわけで皇室御用達のテーラーへフィン王子&護衛たちと繰り出してきた。






「よいよい。せっかくの客を逃がすこともあるまい。今日はこの者の服を仕立ててもらいに来たのだが、少々事情があってな」


私が紹介すると、フィン王子は羽織っていた外套を脱いだ。



「! なるほど、シーレーン族のお方でしたか!」



「申し訳ありません殿下。大人の男性は地上に上がるときだけ腰巻を巻くのですが…」


シーレーン族は水棲種族だけあって、衣服という習慣がないらしいのだ。

幸いシャチやイルカのように性器を体内に収納できるので、アレがアレなことにはならないのだが。

…それでもすっぽんぽんの男の娘…もとい男の子に外套1枚だけ羽織らせて街を練り歩く羽目になってしまったのだが。


「ですが殿下、衣服をまとってしまうと殿下の海属性フィールド内での動作の邪魔になるのでは…」


「ふむ、まぁ懸念はもっともだが、そこもちと考えがあってな。テーラーよ、私がデザインした『水着』を見せてやってくれ」


「かしこまりました!」



テーラーが店の奥へ消えると、フィン王子は首を傾げた。


「水着…ですか?」


「うむ。水に入るときに着るための衣服だ。まあ帝国には海水浴の習慣がないから、あまりピンと来ぬかもしれんが」


そう。帝国には海水浴の習慣がない。ということは水着もない。

前世でも海水浴が行われるようになったのは18世紀も後半になってから。意外と歴史の浅いレジャーなのだ。




「おかげで私のデザインした水着も売れなくてな…」


「も、申し訳ございません…私どもの力が至らぬばかりに…しかし、素潜り漁を行う漁師からは高い評価を得ております」


いつの間にか戻ってきていたテーラーが申し訳なさげに言った。

私がこの店を気に入っている理由の一つに、客の貴賤を問わないというところがある。

だから衣類関連の客のニーズがつかみやすいのだ。


「よい。そなたらの責任ではあるまい。だが、フィンの評価が良ければ、シーレーン族に売り出すという手もあるな」


「それはなかなかに興味深いお話ですね!流石殿下、商機への造詣が深うございますな」



「殿下は御商売に興味がおありなのですか?」


「ええ、興味どころのお話ではございませんよ!私どもも殿下に数々のご指導を頂きまして…」


「なに、当初こやつは貼り付けたような嫌らしい笑顔で接客していてな。それではいかん、客を逃すぞと営業スマイルについて小一時間問い詰め…もとい話をしてな」


「あ、あれは小一時間なんてものじゃ…コホン!さ、こちらが殿下デザインの水着でございます!」




テーラーはフィンに黒い水着を差し出した。

形状はスキンタイプと呼ばれるもので、競泳選手が着る上半身下半身両方を覆うものだ。

以前に公式大会で禁止されたあの水着と同タイプである。


足ヒレの邪魔にならないように下半身は膝までに仕立ててもらう必要があるな。




「この生地…むにむに伸びますね。地上にはこのような素材があるのですか?」


「うむ、それはメリヤス編みといってな。編み方によって伸縮性を出しているのだ」


メリヤス編みは帝国にもともと存在した。

麻の栽培が盛んなだけあって縫製技術はなかなか高いのだ。



「一度着てみてくれ。

それを参考に仕立ててもらおう。もとからすっぽんぽんなのだから試着室も必要あるまい」



言ってから結構ひどい言い草かと気づいたが、元から衣服を着る習慣のないフィン王子は恥ずかしがることもなく水着を着ていった。


「ふむ。やはり少し大きいか。私に合わせて作ったものだからな」


「え?このくらいで丁度いいのでは?…服を着たことがないので自分では分からなくて」


「この水着は体にピチッと合わせるタイプなのだ。それなら海中でも邪魔になるまい? テーラーよ、ここに足ヒレがあるからここは詰めて…そうそう。フィンよ、これで一度浮いてみてくれ」



フィンを海属性フィールドで包み込む。もう何年も練習したからお手の物だ。



「わあ!これが殿下の魔力!話には聞いていましたけど本当に海の中みたい!すごい!」


ふわりと浮きあがったフィン王子は年相応の笑顔を振りまきながら宙返りをしている。

動作には問題がないようだ。久々に見たがやはりシーレーン族の海中での挙動は優雅だな。


「これこれ、あまりはしゃいではいかんぞ。裾の留め具がはずれてしまう」


「あ!す、すみません!つい…」


「よいよい。それで着心地はどうか?動きやヒレの邪魔になってはいないか?」


「はい!これなら水中でも普段通りの動きができます」


「そうかそうか!では詳しい寸法を測って仕立ててもらおう」



なにやら孫にモノを買ってやるジジババになった気分だな。









△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽












テーラーを出ると日が暮れ始めていた。

思ったより早く済んでしまったが、夕食を取りに予約しておいた店へ向かうか。












「いらっしゃいませ!鬼熊亭へようこそ!何名様ですか?あ!これはこれはネルソン様!」


「うむ。予約していたより1名増えてしまったのだが、よろしいか?」


「はい!少々お待ちください!お嬢様!お嬢様~!ネルソン様がご到着ですよ~!」




夕飯時の鬼熊亭は大賑わいだ。

しかし、通い始めた時のように港湾関係者や怪しい酔っ払いばかりではなく、若い女性や家族連れも見受けられた。

全体的に雰囲気が明るくなっている。



「おいセーラ!お嬢様はやめろっつッてんだろ!何べんも言わすんじゃねェ!」


店の奥から現れたのは我が愛しのヴィオだ。

20歳(はたち)になったヴィオは以前の可愛さに加えて大人の色気をまとい始めたので正直たまらん。


「おお我が麗しの港ヴィオレッタよ!今日も会えてとてもうれしい…ッ!!?」



な、なんだ!?

今いきなり首筋のあたりに凄まじい悪寒を感じたぞ!?

まるで刃物を突き付けられたような…視線か?


あたりを見回すが…周りの席の客はこちらを気にしている様子はない…。

何者かにつけられている…?精鋭の護衛たちの目をかいくぐって?ありえん。気のせいか。



「ネルソン!よく来たな!…ってどうした?キョロキョロして」


「いや、君があまりにも美しいので挙動不審になってしまったよ」


「?? 相変わらず不思議なやつだな。まあいいや。いつもの席をとってあるぜ!」






ヴィオに案内されて席に着くと、先ほどのセーラという給仕の少女がすかさず小鉢を出してきた。


「本日の『突出し』はイカとオクラの和え物でーす! いいなーヴィオは。カッコイイ彼氏が店に通ってくれててさー」


「バ、バカッ! アタシとネルソンはそんなんじゃねェよ!」


確か以前聞いた話ではヴィオとセーラは幼馴染なのだったな。


「そうだぞ。私とヴィオはそんなんではなく、結婚を誓い合った仲…ッ!なのだ!」


またさっきの突き刺すような視線を感じたが、なんとか耐えきった。

なんなのだ、一体。



「誓い合ってねェよ!友達だよ友達!」


「はいはい、ごちそう様~。私は仕事に戻るからね。はー暑い暑い」







「ゴメンなネルソン。あいつも悪気があるわけじゃないんだ」


「まったくだ。もう6年も婚約者をしているのに彼氏と間違えるとは」


「謝って損したよ!」


婚約者うんぬんのあたりでまたもや視線を感じたが、もう無視だ無視。

本当に危険なら護衛が動くだろう。





不意に隣の席についていたフィン王子が私の袖をくいくいと引っ張った。


「殿下、『突出し』って何ですか?そういう料理が地上にはあるのですか?」


だいぶ打ち解けてきてくれた感じがするな。

…シーレーン族は皆海属性フィールドを味わうと急に親しげになる気がする。


「いや、突出しというのはな、店に来てくれた客に本日のおすすめを少しだけ無料で出してくれるモノのことだ」


「へぇ~ 地上には面白い習慣があるのですね」


今日の突出しはイカオクラの酢の物か。

…確かにうまいんだが…正直ワインビネガーより米酢であって欲しいし、さらに言うなら醤油と鰹節であって欲しかった。

醤油はいまだに見つからんが…諦めるわけにはいかん。



「お、そういえば今日は見ない顔がいるんだったな。アタシはヴィオレッタ。この店の娘だよ。よろしくな」


「は、はい!僕はフィンです。殿下の傍仕えをしてます!」


「その首!なるほどシーレーン族かぁ。だったら知らなくても無理ないな。『突出し』は他の店じゃ今んとこやってないぜ。うちだけのサービスさ。ネルソンが考案した突出しとかアレのおかげでうちは大繁盛だよ」


「アレ?」


「そうだな。初めて来てくれたシーレーン族だしな、1杯ごちそうしてやるよ。あと、外じゃネルソンのこと殿下って呼んじゃダメだぜ~」


そう言いながらヴィオは厨房の中へ消えていった。


「殿下とお呼びしてはいけないのですか?それにネルソンって…」



「むかーし昔にある国にヨシムネという王様がおったそうな。その王様は下級騎士シンと名乗って自ら市井の人々に交じってその暮らしを見守っていたという。悪党がいればその悪事を暴いて裁いたりもした、という伝説があってな」



「へぇ~ では殿下はその王様に倣って偽名を使って市井を見ておられるのですね」


「まぁ様式美というやつだな。そんな大したものではない」




盛大な法螺話が終わったころにヴィオが1杯の飲み物を持って戻ってきた。



「はい、お待ちどう。刺激的な味だから少しずつ飲めよな!ネルソンは注文どうする?」


「いつものやつと… アジの塩焼きと、イカの丸焼きをもらおう。それとフィンには生魚を使う…カルパッチョを」


「あいよ~」






再び厨房へ消えてゆくヴィオの尻を眺め終わって横を見ると、フィン王子がヴィオに出された飲み物をじっと見つめていた。


「何か泡立っています…」


グラスを横から覗き込むフィンはまるでネコジャラシを見つめる子猫のようだな。


「観察もよいが、あまり放っておくとせっかくのタンサンが抜けてしまうぞ」


「タンサン? …!! ゴホッ! く、口の中が痛いです!」


少し口に含んだフィンは少々むせてしまった。まぁ知らずに初めて飲んだのだから無理もない。




「これは『レモネード』といってな。ジューソーを溶かした水に蜂蜜とビネガー、レモンという果物の果汁を加えたものだ。その刺激はタンサンといって慣れればなかなかに快いものなのだ」


「………! 確かに慣れるとレモンの酸味とタンサンの刺激が爽快な気分ですね!」



こんな使い道もある重曹を捨てていたとは…本当にこの国は化学に弱いな。

これでよく羊皮紙やモルタルが普及したものだ。内海は貝も豊富にとれるから生石灰があるのが救いなのだな。




くぴくぴとレモネードを飲むフィン王子を見ながらしばし思う。

生石灰があるということは、加水熟成させれば消石灰が作れる。

消石灰が作れるということは、うまくすれば苛性ソーダも作れそうだが…。

うーん…苛性ソーダの利用法がうまく思いつかん。

ソーダ工業が確立されていれば重要な物質なのだが、いかんせん塩基性が強すぎる。

紙漉き用の麻を煮るのに使えないことは無いが、劇薬を使っては作業の危険性を増すことになってしまう。

消石灰は目つぶし兵器として使われたことがあるらしいが、失明させるというマジモンの目つぶしだからなぁ。

プレッツェル作りのためだけに苛性ソーダを造っていてはコストもなにもあったものではないしなー。





石灰の現状以上の使い方を思いつけず、益体もないことをつらつら考えていたら料理が運ばれてきた。




「おまたせ~。フィン、レモネードはどうだった?」


「はい!とてもおいしかったです!ぜひシーレーン族の仲間にも教えたいです!」


「そーかそーか!ジューソーはな、すごいんだぞ。魚に使えば匂いが取れるし、肉に使えば柔らかくなる。掃除に使えば油汚れも茶渋もどんどん落ちるんだ!全部ネルソンの受け売りだけどな!ハハッ」


「へぇぇ~ ジューソーっていろいろな使い方があるんですね」



「よし、じゃあ夕食が終わったら宮廷に帰る前にジューソーを発見したえらい人に挨拶をしに行くか」





夕食ではフィン、というかシーレーン族は塩味を感じにくいことが判明したりした。

まあ普段海中で暮らしているのだから、いちいち海水の味を感じていたら生きていけないだろうしな。

幸いにして鬼熊亭の漁師料理は海産物のそのままの味を生かした系が多く、フィンの口にはあったようだ。








△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽








光魔石街灯がともりだす夕暮れ、私とフィンは目抜き通りから路地を一本入ったところにある店の前にいた。

看板には『ユーリカ工房直営店・ユーリカ堂』と書かれており、端にはドワーフをディフォルメした一つ目のキャラクターが描かれている。



「わぁ、ずいぶん繁盛しているのですね」


「むう、閉店間際で空いていると思ったのだが、予想が外れたな」


店の中は老若男女…というよりは老男女と若女でごった返している。

向かって左側に女性たち、右側にはお年寄りたちだ。



「いらっしゃいませ~!こちらの列に…あ!ネルソンオーナー!」


左側のほうから女性店員が出迎えてくれた。

ここの店の店員はすべて国務大臣エルデン卿からの伝手で紹介してもらった選りすぐりだ。


「うむ。ユーリカ工房長はいるかね?」


「はい!奥の事務所にいらっしゃいますよ~」



「わかった。ところでどうかね?売れ行きは」


「総じて在庫が間に合いません!バスソルトはどのアロマも売れているのですが、やはりローズが人気ですねー。スキンミルクは日持ちしませんから作っては売り作っては売りの車輪操業で大変ですよ」


「まいったな。ローズの精油(エッセンシャルオイル)は生産できる量が少ないのだがな…その分値段がだいぶ高いのだが、それでも売れるとはな」



美容のユーリカ堂の目玉商品は3種類。

ローズやベルガモットの精油(エッセンシャルオイル)を加えたバスソルト。

牛乳にほんの少しの重曹を加えたスキンミルク。

そして私も愛用している光魔導レンズ式のヘアケアロッドだ。



重曹があるのだからバスボムを作りたかったのだが、クエン酸が手に入らなかった。

アカシックレコードで調べてみると、クエン酸を作るのにはコウジカビで発酵させる工程があるらしく、コウジカビが手に入らない現状では手も足も出なかった。

そこで苦肉の策で帝国産の海塩に精油(エッセンシャルオイル)を加えただけのモノを売ってみたら売れてしまったということだ。

スキンミルクも保湿効果のある牛乳に研磨(スクラブ)効果のある重曹を加えただけのモノだ。

古い角質を除去して肌をキレイにする効果があるのだが、やりすぎると重曹の塩基性のせいで肌が荒れてしまう。そのために女性店員に利用法を指導する美容部員を兼ねてもらっている。

容量用法を守って正しく使ってほしい。


どちらもヘアケアロッドのおまけに作ってみただけなのに、これほど売れるとは。

何が流行るかわからんものだ。



店の左側、眼鏡のユーリカ堂では主に老視鏡を売っている。

お金持ち・貴族用の金縁(きんぶち)から一般向けの木製フレームまで各種取り揃えている。



他店舗では『ユーリカ堂書店』や『喫茶ユーリカ堂』などもある。










奥の事務所に入ると、事務机に両肘をついて頭を抱えているユーリカがいた。

…背中がすすけているぞ。


見ると、机には帳簿が拡げられている。

ユーリカ専用に設えられた机はサイズ的に小学校の机のようだな。


「どうした?ユーリカ工房長。売り上げに納得がいかぬか?」


声をかけるとユーリカはガバッと顔を上げ、恨みがましい一つ目で見つめてきた。




「納得いきませんよ!売れすぎさー!儲けすぎさー!こ、こんな大(じん)どうしろって言うんですか!?」






「売り上げが好調ならば事業を拡大するしかあるまい?ユーリカ最高経営責任者(C.E.O.)?」






「うッ… ぐ!ぐぅ」


お、一瞬にして目が潤んだが落涙には至らなかったな。胆力がついたものだ。



「こ、こんなに儲けたらどこかで恨まれるかも…」


「まぁ…そうかもな」


それに関しては手を打ってあったりするが、言う必要もあるまい。




「ところで以前から問題であった生産能力の話はどうなった?」


「…同郷(ドワーフ)仲間(しんか)に手伝ってもらってます。お世話になっている工房ごと」


「ほう!帝都に5人しかいないドワーフか!それは心強いな」


「うう… 故郷の仲間(しんか)を巻き込むなんて」


「よいではないか。もともと魔導具造りの勉強に来ていたのだろう?…最新の魔導具に関わることもできるのだから」


「!!  そ、それはそうですが…でも、もうアレは魔導具と呼べるのですか?」


「なに、鍛冶をするということは剣や鎧などの武具も作っていたのだろう?その延長ではないか」


「それはそうですが…」






「おっと、今日は紹介するものがいたのだった。シーレーン族のフィンだ。よしなに頼むぞ」


「初めまして!フィンと…」








逃げて(ひんぎれ)えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」






突如ユーリカが絶叫した。

一体どうしたというのだ。気でもふれたか。




「殿下!貴方という人は!ドワーフだけでは飽き足らずシーレーン族にまで手を出すなんて!」



「え?いや、あの僕は…」


フィンもユーリカの豹変に面喰っているではないか。

ユーリカは大きな瞳からボロボロと涙を流しながらなおも続ける。



「ギャレッジさんたちは今や印刷機職人の大親方さー!?印刷業界の元締め的な立場になっているさー!ドラウデンさんなんか(みやらび)さん御夫婦(みーとぅ)だけではなくてお孫(んまが)さんの分まで(やー)を建てたんですよ!?それも一等地に!殿下に関わった人はみんなそうなるんさー!」



「あの…それって全部いいことなのでは?すみません、僕、地上のことはよくわからなくて…」


「うちも自分(るー)で言っててわけが分からなくなってきたさー!わああああん!」



本当に何を言っているのだコイツは。

でも確かに景気がバブリーがかって来ているのは確かだな。

隣のバルド王国と国交が断絶しているから外資的要因で横槍が入らないのが救いか。






「なにせ重曹を発見した天才だからな…我々凡人とは感性が異なるのだろう…さ、フィン、挨拶も済んだし邪魔になってはいけない。そろそろ行こうか」


フィンの肩に手をやり退室を促す。


「ぞ、ぞんなぁぁぁ!でんがぁぁ!もう(うぇーき)名誉(みょーが)ももうたくさんですゥゥゥゥ!」



ぎゃあああッ!?は、鼻水をつけるなああああ!

泣きながらユーリカが取りすがってきた。その顔はもう涙やら鼻水やらよだれやらでぐちゃぐちゃだ。





「わかった!わかったから離せ!」


「ち゛ーーーーーーーん!!」


「ぎゃあああああああああ!鼻をかむなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



もうやだコイツ!

人の袖で鼻をかむとかありえん!



「つ、連れてく!旧都視察に連れて行く!そうすれば財産から離れられるだろう!?だから離せ!」


「そういってまたうちを騙すんさー!?」


「ぎえええええ!本当だ!本当に連れて行くから!だから私の袖で顔を拭くな!」



「今度こそ信じましたからね…!」


やっとユーリカが顔を離してくれたが、顔と袖の間にニチャァァァァと糸が引いた。




「な、夏が来る前に出立するからな。旅支度をしておくのだぞ! フィン!逃げ、じゃなかった、帰るぞ!」







慌てて店から出るが、後ろから「約束(やくすく)しましたからねー!」と声が聞こえた。

…どうやら論点のすり替えには成功したようだ。

一時的に帝都から離れたところで国家から保証された財産がなくなるわけではないだろうに。









△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽







皇室御用馬車に揺られて後宮に帰り着くころにはすっかり夜の(とばり)は落ちきっていた。

…すでに私の袖もカピカピである。





「フィン、帝都はどうであったか?」


後宮内、私の私室へ向かう廊下の途中でフィンに問いかけた。



「聞いていたよりずっと賑やかで華やかでした!でも殿下、殿下はどうして市井に出て食事や御商売をしているのですか?」


「商売は私自身がしているわけではないが…そうだな、理由としては調べるため、だな」


本当はいざという時のための亡命資金集めや支援してもらうための人脈確保、革命の芽を摘むためだったりするが。



「何をお調べになっているのですか?」


「人々が何を求め、何を必要とし、何を不安に思っているか、だな」



無論、その人々には私も含まれるがな!

だがそれを聞いたフィンは目をキラキラさせて見上げてくる。

…これはなにか勘違いしているな。決して民を安んじるために調べているのではないのだぞ。














「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」


フィンの勘違いを訂正しようと口を開いたその時、狙ったかのように廊下の途中の部屋から少女が現れた。

亜麻色の髪をして純白のブレストプレートを着たこの少女は…。




「フィーか。うむ、このような時間にどうした?」


確か私の婚約者のフィー…のはず。

顔が整っているせいでいまいち印象の薄い少女で、名前がなかなか覚えられず、仕方なくあだ名でフィーと呼ぶ事にしたのだ。

出会ったころは顔すらも覚えられなかったのだが、いつの頃からか貴族令嬢なのになぜか鎧をまとうようになったのでかろうじて覚えられた。

本名は確か…フィオナだったかな。





「殿下、今度の旧都視察にユーリカさんを連れてゆくことになったとお聞きしましたわ。でしたら私も連れて行ってください」



…ん?

この少女に旧都視察の話ししたか?

それにユーリカを連れて行くことになったのはほんのついさっきだ。

なぜもう知っているのだ?






まあいいか。

それより貴族令嬢など旅には足手まといに決まっている。連れて行く理由も義理もない。




「ダメだ」



「はぅん♪」




睨みつけながら冷たく言い捨ててやる。

私にはヴィオという思い人がいるのだ。婚約者とはいえこの少女に優しくする義理はない。

そう思ってフィーには割とぞんざいな扱いをしているのだが…。

いつの頃からか冷たくすると妙な奇声を発するようになったのだ。病気かなにかか?




「な、なぜですか!?」



「物見遊山ではないのだぞ。それに旧都から西の山岳地帯へも足を延ばすつもりなのだ。はっきり言って足手まといなのだよ」




「くふぅぅ♪なんて冷たい言い方♪たまりませんわ…」



セリフからすると怒っているのだよな?

頬も紅潮しているし…だが言葉の抑揚に嬉しそうなニュアンスを感じるのはなぜだ。




「ユーリカを連れてゆくのは地質などの調査官をしてもらうためだ。貴族令嬢のおもりをするメンバーなぞおらんぞ」



「自分のことは自分でします!それに私、こう見えても剣術を嗜んでおりますの。自分の身くらい自分で守れますわ!殿下が何と言おうとついていきますからね!」



いや、こう見えても何も、その鎧を見れば剣術をやってることはわかるぞ。




「勝手にしろ」


「勝手にさせていただきますわ!」



そういってフィーは怒りながら去って行った…はずなのに足はスキップをしている。なぜだ。












「あの、今のお綺麗な女性、あのようになされてよかったのですか?」



すっかり蚊帳の外だったフィンが問いかけてきた。



「あれは私の婚約者だ。…今はまだ、な」


私が皇籍から離れれば婚約も解消だろう。

だからこの婚約もその時までの期間限定なのだ。



「…なにか深い事情がおありなのですね」


またなにか勘違いしていそうだな。













△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽












部屋に帰り着くと出迎えたのはネクサス先生だった。




「先生?どうしました?こんな時間に」




「ええ、少しお話がありましてね。殿下ももう14歳になられ、私の授業も10年を超えました。もっとも最近の数年は殿下の自主訓練にお付き合いしているだけでしたが…」



先生は謙遜なさっているがとんでもない。

やっていることは自分の発案でも、隣で相槌を打ってくれる人がいるだけでどれだけ救われることか。

それに加えて先生は魔法のエキスパートであるから、海属性魔法という新体系を組み立てていけたのは先生のアドバイスがあってこそだ。



「そこで殿下の出立に合わせて私の授業も終わりにしたいと思います」



なんと、卒業か。

春も過ぎかけているが、学校に通っているわけではないから卒業シーズンとかは関係ないか。



「では先生…魔導師団も引退なさるのですね」


先生が私の教育係を引き受けてくれたのは、魔導師団の引退を見据えてのことだったはず。



「はい。もう後進への引き継ぎも終わっていますからね」



「引退なさった後はどうなさるので?」



「実はまだ決めかねているのですよ。故郷に帰ってもいいのですが…このまま帝都に残って私塾を開くのもいいかもしれませんね」



この国には義務教育はなく、学校もない。

では教育水準が低いのかといえばそうではない。

貴族や商人などの職業別に私塾があり、金銭に余裕のある家庭は子弟をそこに通わせるのだ。

江戸時代の寺子屋に近いシステムだといえるだろう。

まあ大貴族や私のような皇族は家庭教師を専属でつけるのだがな。

そういえば弟のクロノスには魔法師団のネクサス先生とのバランスを取るために騎士団から教育係が派遣されたのであったな。





「私塾ですか…では先生、私の興そうとしている新しい事業…商いの話を聞いていただけませんか?」


「殿下自ら商いですか…本来なら苦言を呈するところですが、もう工房という前例がありますからね…」



「あはは、イヤだなぁ先生。あの工房はユーリカのものじゃないですか」


「…………そういうことにしておきましょうか」



先生まであの方式に疑問を抱いていたのか…。



「まあ、あの工房はその新しい商いの形のテストケースでもあったわけですが。宮廷や領主の(まつりごと)でもなく、商人の商売でもなく、行政の資本で商会が商いを行うという新しい形体です」



「資本ってお金のことですよね?商人に国からお金を与えて商いをさせるなんて聞いたことありませんが、地上ではいろいろな商いの形があるのですね」



フィンまで商売の話に乗ってきてしまったか。

だからそんなキラキラした目で見てきても、民を安んじるわけではないんだったら。



「いいえフィン王子。私も帝都に暮らして長いですが、そんな商いは聞いたこともありません。殿下が突拍子もないことを始めるのは今に始まったことではないので今のうちから慣れておくと良いですよ」



ちょっと先生w何て言い草www

フィンも大真面目に「はい!」とか返事してるんじゃないぞ!





「ですが殿下。その新しい形の商いと私塾とどうつながるのですか?」


「なぁに、簡単な話ですよ。その新しい商いの形…はどうも長くて言いづらいので第3部門(セクター)と呼称しましょう。その第3部門(セクター)で私塾を開こうと思いまして、その教師をぜひ先生にやっていただきたいのです」



「なるほど、そういうことですか。それは渡りに船かもしれませんね。引退後も殿下のお力になれるのでしたら、喜んでお引き受けいたしましょう」




クックック。言いましたね。




「おお!ありがとうございます!では早速私塾で教える内容を伝授いたしましょう!今夜は徹夜ですぞー!」



「え?」



「先生には『経営』を教える私塾の教師になっていただくのですから、『経営』のノウハウをみっちりお伝えします!私が旅立つまでにしっかりモノにしていただきますからね!」



「え?え?」




昔取った杵柄が活きる時が来た!

前世の経験をフル動員して先生に経営のノウハウを叩きこまねば!


























「ちなみに、先生のように宮廷の部門長から第3部門(セクター)へ転身することを専門用語で『アマクダリ』と呼びます」










重曹の性能はチート。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ