次の魔王は
「ということなのよ」
「……それ私にいっていい事なの?」
ナオとの会談を終えて合流したシェリー達に先ほどの会話内容をきっちり丸ごと説明すると、そのシェリーに呆れ顔をされた。
「別段問題ないわよ? ナオにも話すって宣言してるし」
「ならいいけど」
そもそも一緒に行動するんだから、話し通しておかないといろいろ動きずらいし?
「ただ本国には連絡しないで欲しいけど」
「……わかったわ。今の所は不確定がすぎる話だし、神徒の話はうちの国の一部の派閥に知られると面倒な事になりそうだものね……」
いらんこと画策したりとか、あるいは蘇生の手助けして喧嘩売りに行きそうな奴いるしね。後者は私の完全な偏見だけど、前者は普通にいそうなんだよねぇ。現在知らせたところで現状人間側サイドの国に協力を求めるような状況じゃないから話通す事にデメリットしかないのよね。
「こちら側に影響が出そうなときは伝えさせてほしいけど」
「それはOKよ」
「ならいいわ」
シェリーは話が早くて助かるわ。彼女の性格上、裏でこっそり連絡ということもないでしょうし、この件はこれでいいかしらね。彼女の上司はある程度信頼がおける人物っぽいからそこまでは伝えて貰ってもいいかもしれないけど。
「というわけで一応これから向かう先でも情報収集したりするかもしれないけど、といっても行く先々で話を聴くことくらいしかできないからあまり皆は気にしないでいいわ」
明確な対象すらはっきりしない状況ではやれることはあまりない。それこそ本人が言ってるんだからナオに任せておけばいい。
「というわけでこの話はここまでね。もうこの砦には要件はないから出発するんだけど……アージェ、ここから別の街って半日はかかるのよね?」
「そうだね、これまでと同じペースならそれくらいだと思う」
「だとしたら、出発は明日になるわね。アージェ、今日は泊らせてもらって大丈夫よね?」
「問題ないよ」
「ん。それじゃ皆、明日の朝出発するからそのつもりでね」
はーいとフレアが元気よく返事をし、他のメンバーも首を縦に振る。
「次の魔王は”破眼"よね? "破眼"と"怠惰"はこちら側には殆ど情報がないけど、結構危険だったりする?」
懸念を口にしたシェリーに、私は首を振る。
「むしろ、魔王領の中ではトップクラスに安全じゃないかしら。本人も魔王の中で一番温厚だしね」
「温厚?」
「"破眼"アレストは魔王の中で一番相手を傷つける事を嫌う男よ」
現在の魔王は人間に敵対していないものが半数になるけど、私もアージェも自分に友好的な相手に対しては友好的に返すだけで、敵対してくるものには容赦ない。"怠惰"ナーグの場合はそもそも敵対するような相手は無条件に排除されるし、彼女の場を乱すような相手は容赦なく押しのけるだろう。それに対して彼は多少なら敵対する相手でも苛烈に相手する事はない。その対応は彼の能力も関係しているのだろうけど……その魔王の性質もあり、彼の領土はその住人達も比較的穏やかな物が多い。人間の領土とほぼ隣接していないってのもあると思うんだけどね。
「だから心配は櫃いうないと思うわ」
「そもそも魔王様二人にその幹部が二人、聖王国の聖騎士、それ以外も強い力を持つ者ばかりの一段です。アレスト様が直接襲い掛かってくることでもない限り、危険はありません」
「それこそ100%ないと言えるわね」
シエラの捕捉に頷きつつそう口にすると、「あの」と少し控えめにフレアが手を上げつつ声をかけてきた。
「? どうしたの、フレア」
「お姉様と、アージュ様。魔王様がお二人もいるのに、危険なんですの?」
その問いには、私とアージェが揃って頷いた。
「勿論だよ、フレアちゃん」
「だってアレストは、私達二人合わせてもそうそう勝てる相手ではないもの」




