第66話「侵入者 1」
同時刻。金本大助と佐々木一郎が対談を始めた中で、ある4人の男たちが闇の中に潜みつつ古い民家を目指し行動を進めていた。
「…ここだ。間違いない」
やや古びた家の外観を確認した男が仲間にそう伝える。
「状況クリア」
「クリア」
「敵影無し」
「了解。___‘能力解除‘」
小さな闇の中から男たちがゆっくりと這い出てくる。そして全員が速やかに配置に付いた。
「全員、準備はいいな?」
隊長の「川森」が仕事仲間にそう問いかける。
男達はその全員が「殺し屋協会」に所属する者。その中でも特に戦闘や裏工作に秀でた者達で構成される部署「総合戦略課」男達はその中から構成されたチームだ。そして全員が「能力者」でもある。
(やはりこの男の能力は優秀だ。今回の作戦に無理を言ってでも引き込んだのは正解だった)
チームメンバーの一人、「川田」の「能力」は小さな闇を生成する能力だ。これ自体に攻撃性はないが、ある程度の質量のものを本人も含めて収納する事ができる。つまりは移動可能なアイテムボックスのような能力だ。弱点としては内部からの攻撃には非常に弱い。
「ああ」
「こっちもだ」
「問題ない」
「川田」「川本」「川西」が川森にそう返答する。
「…よし。川本、予定通り能力で「道」を作ってくれ」
「はいよ」
川本の能力が発動。古い家の瓦に「半透明のロープ」が4本発射された。飛ばされたロープは泥のようにゆっくりと瓦の中に沈んでいく。
「対象物に命中。そして‘変形‘と‘固定‘も完了だ」
川本の能力、それは「無機物」を「透過」するロープを作り出す事だ。戦闘向けの能力ではないが、こういう裏の任務には重宝する能力とも言える。
「相変わらず器用なやつだな。協会よりも「殺配」の方が向いてるんじゃないか?」
「特定の「組織」に加入しなくても単独でやっていけるレベルの芸当だよな…」
「どこの「組織」でもこの手の能力は貴重だろ。人を始末するのにこんな馬鹿げた「力」は必要ない。それよりも証拠が残りづらい「力」の方が貴重だな」
「……」
川森、川田、川本、川西は全員が長年殺し屋の世界を生き抜いてきたベテランだ。特に意識をしているわけではないが、重要な依頼となるとこの4人がチームを組むことが多い。腐れ縁とも呼べる関係だ。
「正直な話、色々とコンタクトはあったが……まあ、それは今はあまり重要じゃないだろ。それに「殺配」は俺には向いてねえよ。あの会社はスナック感覚で人をブチ殺せる異常者が優遇されてる組織だ。…俺からすれば、「アブノーマル同好会」よりも殺配の方がよっぽど怖いね」
「アブノーマル同好会か…あいつらは意思疎通できるメンバーの方が貴重って話だろ?あれでよく「組織」として成立してるよなぁ」
「隣りの芝生は青いってやつだろ。協会も他の部署は結構腐ってるって話だからな…」
隊長の川森は少しだけ苦笑いを浮かべる。
「マジな話、おまえら転職するなら早めの方がいいぞ」
「…もう知っているとは思うが、最近の「会長」は本当にヤバい。…あの人は「組織」よりも「自分」を優先する人だ」
「今日明日にでも気まぐれで社員全員を皆殺しにしても俺は驚かない。…唯一のストッパーだった副会長の「マリー・ブラウン」とも未だに連絡が取れないしな」
「「「……」」」
殺し屋協会を実質的に運営していたマリー・ブラウンの失踪。それは組織全体に多大な影響を与えていた。
(頭がおかしい「会長」を止められる程の実力。そして他の「組織」との問題を一人で解決出来る程の対応力。各部署との「軋轢」を解消する手腕。…マリーさんが見限った以上、もう殺し屋協会は終わりだ)
「だけどな、それでも「依頼」は完遂しなければいけない。内輪のゴタゴタは仕事の後で話せばいい」
「雑談はここまでだ。…行くぞ」




