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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
三章 シュガー・ダンジョン

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第57話

「……」


「…ん……んん?」


 気ダルい体を起こし、妖精が数度瞬きを繰り返す。その体のサイズは元の掌サイズに戻っていた。


「あ…あれ…?私死んだんじゃ……」


 頭部を刈り取った凶悪な一撃。そしてあのふざけた男が最後に浮かべたぞっとする程の冷酷な表情。その事に思い至った瞬間、妖精は目の前にある巨大な瞳がジッとこちらを「観察」していた事を始めて認識した。


「ひっ…!?」

 

「Good morning!…その様子だと目は覚めたようだな?」


「に、人間っ…!!」


「ふむ…」


 濁った大助の瞳は、ただただジッと妖精の反応を観察していた。


「くっ!今すぐぶっ殺して……あれ?動けない?な、なんで…?」


「ん?ああ…お前がグッスリと寝ている間に拘束させて貰ったよ。また「反則技」を使われたら堪らないからな」


 大助の言葉通り、妖精の手足はズクの草で拘束されていた。


「こんなもの引きちぎってやる!…ぐぐぐぐぐっ!?」


 妖精が硬化したズクの草を引きちぎろうとする。だがビクともしない。その様子を興味深そうに眺める大助。


「そんな馬鹿な…ズク草がこんなに硬くなるわけがないのに……」

 

 脱出を諦めた妖精と大助の視線がぶつかり合う。


「…何が目的よ?」


「……」


 大助が無手の状態で妖精の目の前に腰を下ろす。


「さて、話をしようか」


「話す事なんかない。…とっとと殺しなさいよ」


「……」


 妖精からのその返答に大助は心底つまらないという表情を浮かべる。


「ふむ…どうにも何か勘違いをしているみたいだな」


「勘違い?あんたがやろうとしている事なんて誰にでも理解できるわよ。私が恐怖心からうっかり情報を洩らす事を期待しているんでしょ?お見通しよ」


「そうか。ああ、その辺りの認識から訂正していくか」


「…え?」


 大助の無感情な瞳が妖精の心をゆっくりと鷲掴みにしていく。


「俺が話そうとしている事は「脅し」でも「ブラフ」でも何でもない。これはこの後に確実に起きる現実の話だ」


「な…何を言ってるのよ……」


「具体的に説明しよう。お前がこのままだとどうなるのかを」


 大助が妖精の返事も聞かずスマートフォンからキャンプ用の「調理器具」を取り出す。


「これから、お前をフライパンで調理しようと思う」


「なっ…!?」


 大助が考案した悪魔のクッキング。その概要を聞かされた妖精の顔が青ざめていく。


「焼死ってのは恐ろしい死に方の1つだ。だが、実際は焼死する前の前段階で亡くなる人の方が多い。何故だか分かるか?窒息死だよ。体中の水分と酸素を失い、お前は地獄の苦しみを味わう事になる…でだ。ここからが本題なんだが……」


 妖精の耳元に口を近づける大助。


「超高品質な回復薬を生物の肉片に使った場合、どうなると思う?」


「は……はぁ…?」


「再生するんだよ。元通りにな。…俺が言いたいこと分かるか?」


「…ハァ…ハァ……」


 その先を敢えて口にはしない大助。結果的にそれが余計に恐怖を増長させる。


「まさにファンタジーな現象だよなぁ?さてさて、今度は黒焦げになった肉片からの再生データが取れるかもしれないわけだ。俺はもうワクワクが止まらないってわけよ」


 ケタケタと楽しそうに声を発声する大助。だが、その顔と目だけは一切笑っていなかった。


「…とまあ、俺の心情としてはこんなところかな。はっきり言っておこう。この状況で会話を拒否するという行為は愚の骨頂だ。話にもならない。当然そんな現状判断も出来ない阿呆がどうなろうと知った事じゃないわけだ」


「……」


 相手にわずかな思考の時間を与え、ゆっくりとスマートフォンにフライパンを収納する大助。

 

「もう一度言おう。…さて、話をしようか」


「……」


 コクコクと無言で妖精が頷く。大助は冗談など言っていない。不義理な態度を取り続ければ、間違いなくこの男は「行動」を起こすだろうと妖精は理解してしまった。

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