第14話
そのままのんびりとラビの働く姿を眺める大助。画面にはお助けモンスターの簡易的な情報が表示されていた。
「ふむ。種族名が変わっているな」
大助がラビをタップし、詳細画面を開く。
・バトル・ラビット
数々の苦境を乗り越えた兎人族の戦士。魔法や剣を駆使して戦う。
「ほお。進化したとかそういう感じか?」
<チュートリアルを再生しますか?>
(またいつものやつか)
当然大助はYesを選択する。
「進化。それは人類の歴史と言っても過言じゃないわよね」
「だけど進化するのは人間だけじゃない。全ての生物は「進化」の可能性を秘めている。それはもちろんあなたのお助けモンスターも例外じゃない」
「どんなに初期の能力が低くても、全てのお助けモンスターには「進化」という可能性が残されている。それってとっても面白い話だと思わない?」
「もしもあなたが「それ」を期待して「最弱」のお助けモンスターを育てているのだとしたら…その子はきっとあなたの期待に答えてくれるんじゃないかしら」
「…話が逸れたわね。とにかくお助けモンスターは経験を積む事で成長するわ。最弱を最強にするのもよし。最強をさらに最強にするのもよし。全てはあなた次第ってわけ。それじゃこの辺で失礼しま…じゃなかった。するわね~!!」
音声の再生が終わり画面が元に戻る。
「ふむ。進化に成長ね…」
(モンスターの育成要素もあるわけか。いいね。俄然やる気が出てきた)
「……」
大助がラビの進化を確認してから1週間が経過していた。日に日に成長する食虫植物を見守り、売却用の植物を育成。そして仕事というルーティンを大助は日々こなしていた。そしてそんな日々に変化が訪れる。
「…いや、なんか成長し過ぎじゃね?」
食虫植物の異常な成長速度に大助は驚いていた。最初の頃は鉢植え1個分の大きさだったのだ。それが今では株分けを繰り返し鉢植えが10個まで増えていた。狭いベランダは鉢植えで溢れかえっている。パンク寸前の状況だ。
(まあ地球の植物じゃねえし、こんなもんなのかなぁ?…これ以上成長するなら何か対処をしないとダメだな)
燃えるゴミの日に植物を出す算段をしながら、大助はベッドに潜り込み眠った。そして異変は次の日に起きる。
「…マスター、起きて」
「…んん?」
(…なんだ?耳元で妙な声が聞こえたぞ…)
一瞬で覚醒した大助の脳が状況の整理を始める。
(女性の声か?…目的は?…不明。初手を見送った事から殺害の意図は低いと考えられる。情報を引き出す必要があるな)
「……」
大助はそのまま二度寝を決行しようとした。だがそれを「彼女」は許さない。




