第13話
食虫植物(低級)ラビットタイプの飼育を大助が始めてから3日が経過していた。この3日間、大助は新たに栽培可能になった解毒草や火炎草の量産を進めていた。
「ふむ…」
(育成時間は1つ30分というところか。悪くはない効率だな)
「…と。もうこんな時間か。…そろそろ「職場」に行かねえとな」
(あ~めんどい。バックレちまおうかな?それはそれで面白くなりそうな気も……)
「いやいやいかんいかん。まだダメだ。もっともっと、爆発させるのがもったいなくなるぐらいまで。もっともっとだ……」
大助はまだ「金の卵」を温め始めた段階だ。この状況で「仕事」を辞めるのはまだ早い。それは大助も重々理解している。
「まったく。どうしてこう「破滅」ってのはこんなにも魅力的なんだかねぇ~?」
テーブルの上で観察していた食虫植物(低級)ラビットタイプを窓際に移動させ、仕事先に向かう準備をする大助。
(こいつら太陽に当たるとめっちゃ嬉しそうに動くんだよな。光合成とかしてんのか?)
「日の味はどうだ?しっかりと栄養を付けて害虫を駆除してくれよ」
いつものように食虫植物(低級)ラビットタイプに話かける大助。当然、返答など大助は期待していなかった。
「…めっちゃ美味い。…もっと食べたい」
「……」
「んきゅ?」
クリクリした目のウサギもどきと大助の視線が重なる。
「……」
「…んきゅきゅ。……言語は同じはず。…まだ上手く喋れてない?…要検証」
「……」
(こいつ、言葉を喋ってやがる!?)
対応に悩む大助。だが今はそんな事に時間を使っている場合ではないのだ。大助はこれから職場に向かわなければいけない。悩んだ末に大助が出した答えはこうだ。
「まあいいや。それじゃあ行ってくるぜ~!!」
大助が全てをスルーして出かける仕度を始める。ウサギもどきたちはその姿を見て小さい手をブンブンと振っていた。
(知能も意外と高いな。俺の動作からこれから何をするのかを理解している。どうしたもんかね…)
大助はバッグを背負い、仕事先に向かった。
「ふい~ただいまっと」
8時間が経過、フラフラの大助が自宅へと帰還した。
(今回のターゲットは中々に厄介だったな)
赤黒い染みがついたバッグをソファに放り投げ、早速食虫植物の状態を確認する。
「…む?」
(なんかモグモグしてるな…)
部屋に帰宅した時点で、ボリボリと何かを潰す音が大助の耳に届いていたのだ。
「どうだ美味いか?」
ウサギモドキ達の尻尾がフリフリと振られる。彼女たちは獲物を捕獲して非常にご機嫌だ。
「よし。これからも家の害虫退治を頼むぜ」
大助がソファーに座り、アプリを起動する。
「…ふむ」
(結構コインが貯まったな。放置モード用に何か買うか?」
ショップ画面を開き、ナイフや簡易トラップなどを購入。アイテムボックスへと移動させた。そこで大助がある違和感に気が付く。
「ん?」
アイテムボックスの右上に文字が表示されていたのだ。
<ドロップ品を確認してください>
「…ドロップ品?」
大助が放置モードのアイテムボックスを確認すると、その中には見知らぬ武器や魔物の肉などが保管されていた。
「ほう…」
(ラビが手に入れて収納したってところか?今は使い道がないしそのままでいいだろう)
久々にラビの姿を確認しようと大助が畑を見てみると、そこには生真面目に働くラビの姿があった。装備類が以前よりもしっかりとしており、表情からも自信のようなものを感じ取れる。




