第12話
(意外と知られていない話だが、食虫植物は虫を食べ過ぎるとエネルギーを使い過ぎて枯れてしまうんだよな。その辺の弱点とかもどうなってるのか非常に気になるぜ)
「驚異的な生命力とか書いてあるしな。ハエとかゴキブリを半永久的に始末してくれるなら部屋に1つ置いてみるか?」
(経過を観察するだけでもめっちゃ面白そうだしな)
「…決めた! まずはこいつから育ててみるか」
育成可能リストから食虫植物を選び畑にセットする大助。
「ふおぉぉぉぉおおおおおお!!」
(栽培開始だ。この虚無の時間も悪くはない)
ただひたすらに草をタップする大助。この時間を無駄にする行為がたまらないのだ。そしてその先にはまだ見ぬ未知が待っている。必然的に大助のやる気も上昇していく。
「ひゃあああああああ!!……あれ?おかしいな…?」
違和感を感じた大助が一時的にスマートフォンをソファーに置く。
(初期の雑草のときはもっと早く完了したんだけどな。この植物の状態はまだ半分ほどと言った感じだぞ?…栽培の難易度が上がっているのか?)
「…ふむ」
(当然と言えば当然の話か。となると効力やレアリティに応じて更に難易度が上がる可能性もあるか。まあ、これはこれでやる気も出るけどな)
「ゲームだろうが現実だろうが困難を乗り越えるからこそ面白い。そんじゃ再開と行きますか!」
「ふおおおおおおおおおおおおおおお!!」
それから数十分ほどが経過。ようやく栽培が完了する。嬉しそうな表情を浮かべた大助がワクワクしながらその草を倉庫へと移動させた。
「…?」
・食虫植物(低級)ラビットタイプ
(ラビットタイプ?種類か何かか?)
「まあ出してみれば分かるか。ソファの上は…マズいか。ならテーブルだな」
大助がテーブルまでスマホを持ち移動する。
「ここなら大丈夫だろう。さあ来いよ!食虫植物(低級)ラビットタイプ」
ポン!という音と共に、鉢植えから生えた食虫植物が召喚された。そしてその姿を見た大助が驚く。
「おお~…」
(なんだこの植物…めっちゃ可愛いじゃねえかよ)
細い管のような部分に繋がっている、うさぎのような小さい生物が4匹ほど大助を見ていた。愛くるしい姿でぞれぞれがふわふわと宙を浮いている。白い羽のようなものが生えたその姿は小さな天使にも見えた。
「…ん?待てよ、こんな感じの植物どっかで見たような気がするなぁ……」
大助がスマートフォンの検索機能を使い調べ始める。答えにたどり着くのに然程時間はかからなかった。
「やっぱそうだ。これウサギゴケだな」
ウサギゴケ。正式名称「ウトリクラリア・サンダーソニー」タヌキモ科南アフリカ原産の食虫植物。ウサギゴケ最大の特徴は花の形がうさぎのように見えること。コケと勘違いされているがコケではなく、地下茎で小さい虫を捕食する食虫植物だ。繁殖も容易で、日本のホームセンターなどで普通に売られていることもある。
「確か下の方にある部分が本体だったよな…やっぱりそうか」
地面の根っこの部分が不自然に膨れ上がっている。そしてよくよく観察してみるとうさぎのような小さな生物たちの体も植物と一体化していた。
「なるほど…この可愛さで油断した哀れな獲物をパクッといくわけか。いいね。そういうの嫌いじゃないよ」




