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持たざる万能魔導陣師  作者: 水戸 松平
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男女間抗争と魔導の目覚め 10

 比呂彦達は歩いていた。空からは灼熱の太陽光が降り注ぎ、強烈な紫外線を防ぐため衣類を隙間無く被る様に着ている。周りにはキノコの様にドラゴンツリー林立しており、時折、枝が作った日陰に逃げ込んだ。


「暑すぎるよ....死ぬ.....」


「うるさい......黙ってなさい.....」


 比呂彦達は亜熱帯の高原地帯にいた。

 あの後、比呂彦が気絶した後、サラは後ろに倒れそうになっている比呂彦を無理矢理前に引き寄せ、全力で前方にジャンプしていた。道を塞ぐ様に突如生えてきた樹木はサラが魔法で生み出したモノで、幹と幹の間に子供がギリギリ通れる様な隙間を作り、くぐり抜けて機偶蹄牛(バイソン)を振り切ったのだ。機偶蹄牛は物凄い音を立てて激突し、それでも大樹の一片を引きずりながら追ってきた。サラはギリギリ転送魔法陣にたどり着きすぐさま転移した。


 しかし、その時少し失敗した様で辺鄙(へんぴ)な所に飛ばされてしまった。すぐにサラの生体用転送魔法陣で帰ればいいのだが、現在地がわからないと使うことが出来ないようだ。現在比呂彦達は、現在地の手がかりを求め歩いている。


 日にちは、あれから比呂彦が行動出来るまでサラの回復魔法を使っても丸二日かかった。よって現在は土曜日である。ちなみに、機偶蹄牛(バイソン)から掠め取った魔導人形はサラの魔法で異空間に保存してある。


「はい。水飲みなさい。本当に死ぬわよ」


「ありがとう。本当に魔法ってすごいね」


 水はサラの魔法でなんとかなっている。魔法で異空間から水を出しているのでは無く、大地を掘り出し地下水を取り出している。地下水を上に上げるより掘る方が魔力の消費が少ないんだそうだ。比呂彦が「魔法なんて使わなくても手で掘れるよ」と意気揚々と地面を掘り出したが、疲れ切って結局なんの収穫もない姿を見て、サラは「身をもって理解出来て良かったわね」と侮蔑の言葉を送った。


「魔法で現在地がわかったりしないんだよね」


「そうね、少なくとも私はまだ知らないわ。星座も見た事無いものばかりだし...お手上げね」


 サラが珍しく自信なく呟く。機偶蹄牛(バイソン)に魔法が効かなかった事を結構気にしているらしい。あの時の話題を出せる雰囲気では無かった。


「さあ行くわよ。早く行かないと、明日までに帰れなければ間に合わないわ」


 気丈に振る舞うサラは比呂彦を勇気付け背中を押してくれる。

 その後、辺境の村を見つけるまでの6時間、一言もしゃべらずに歩き続けた。


  ◯


 辺境の村は障壁によって護られており、姿が隠されていた。サラが居なかったら見つける事は出来なかっただろう。まあ、居なかったらここにすら来る事はなかったんだけど。

 

「なかなか警戒心が高そうね。しっかり話せる種族ならいいんだけど」


 比呂彦達は近くのドラゴンツリーの下で日射を避けて休憩していた。

 村の姿は見えないが、時折、不安定な箇所が光の反射で露わになる。

 

 比呂彦はすでに疲労でダウンしている。休憩毎にサラに疲労回復してもらっているが一時凌ぎにしかならない。最後の方はサラにおんぶしてもらっていた程だ。


「あなたはここで休んでいた方が良さそうね。ちゃんと障壁張っておくからゆっくり休んでなさい」


「....」


 話す事も出来ない比呂彦は、コクンと頷いた後地べたに倒れこんだ。


 サラは障壁でドラゴンツリーごと覆った後に目的の村に向かった。

 日は赤く染まり、夜が近づいてきていた。


「どなたか居ませんか〜!」


 サラは、頭を覆っているフードを取り、顔を出してエルフである事をしっかり現して無駄な警戒を払った。

 見えない障壁の目の前に立ち、障壁には気づいているという意思を表明している。

 サラが向こう側にいるであろう村人に向かって数十分間呼びかけるが反応がない。


「............」


 サラは一度比呂彦の元に戻り、ぐったりしている比呂彦をおぶってからまた障壁の前まで戻った。


「病気の仲間がいるんです!彼だけでもいいので助けてあげて下さい!お願いします!」


 比呂彦を利用した作戦も不発に終わる。

 サラは激情に駆られていた。機偶蹄牛(バイソン)との事もそうだが、ここ3日間過酷なサバイバル生活。これは別にエルフの生命力的には特段厳しいというわけではないのだが、無視されるのだけはどうにもならなかった。


「何?......無視する気?......こんなに下手に出てるっていうのに.....」


 エルフの誇りがそれを許さなかった。


「か弱い子供が....こんなに一生懸命....お願いしているっていうのに....」


 その白い透き通るような肌が、燃え上がるように赤く染まる。


「あなた達には.....慈悲というものが無いのかしら....」


 サラの激動する感情のように赤く染まる。


「なら....どうなっても構わないわね............保守的なのもいいけれど.....」


 サラは障壁に右手を添える。確かにそこには障壁による微かな反発力がある。


「限度ってモノを知りなさい!!!」

 

 障壁が少しの間を置いた後、崩壊していった。

 頂上から剥がれるように崩れていく。

 崩壊が進むにつれ上部から徐々に、村と言うには大きすぎる城塞都市が姿をあらわす。

 障壁が消失しても城内からは人の声も気配も感じられない。

 サラの眼前には、錆び付いた巨大な鋼鉄の門扉がボコボコに凹んで開かれている。

 開かれた門扉の間から覗いただけでもわかった。

 突如眼前現れた城塞都市は、何者かによって陥落していた。


「一体....どういう事なの.......」


 あのサラが唖然とした瞬間だった。


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