第40話.
「 光輝ー!! 」
元気よく名前を呼ばれて振り返る。
大袈裟すぎるくらいに大きく手を振る碧。
そんな碧を見て自然と頬が緩む。
僕も小さく手を振り返した。
「 今日も一緒に帰ろうぜ 」
「 うん、一緒に帰ろう 」
そんな他愛もない約束をして、青に輝くランドセルを背負う。
見慣れた帰り道を、ふたりで肩を並べて歩く。
「 ぉ、見てみろよ、光輝。夕日が燃えてるみたいだ 」
そう言う碧の視線の先を見る。
「 !!、ほんとだ 」
真っ赤な夕日。
遠目に見える海の水平線へと沈んでいく。
海にちりばめられた星屑が一瞬だけ輝いて─────そして、すぐに消える。
その様子が儚くて、美しかった。
綺麗だ、と。
ただ、それだけを思った。
「 “ブラボー”って感じだな 」
「 …ぇ 」
心臓がドクンッと跳ね上がる。
茜色の夕焼けに視線を奪われていた。
そんなときに、不意に聞こえてきた碧の言葉に反応してしまう。
「 ?、あの夕日、ブラボーって感じだなって思ってさ。どうだ、俺言葉選びの天才だろ? 」
ニシシ、なんて笑いながら僕の方を見る碧。
笑顔も仕草も、言葉遣いも。
全部、昔と変わらない碧。
けど、碧は覚えていないから。
だからこそ、碧の言葉に胸が痛んだ。
同時に、全く変わらない碧に安心する。
─────碧はやっぱり、碧だな。
なんて思って、小さく微笑んだ。
「 …うん、碧は凄いよ 」
「 だろ? 」
夕日が沈んで、静かに空の色が移り変わっていく。
ふたつの空を背にして、僕は前を向いた。
失ってしまったものは、もう戻らない。
けど、失われなかったものが、たしかに今僕の目の前に存在している。
くだらない会話をして、ふたりで笑いあって。
何気ない日常が、これからさきも続いていく。
碧といると、そんな未来が見えるんだ。
"名のない英雄"―光を紡ぐ者―
これにて第1部完結になります。
余談ですが、今日はタコスの日だそうです。
どこかで、彼等も笑っているかもしれませんね。




