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傾国の鉄宰〜ロストジェネレーション、ふざけた名前つけやがって。奪われ続けた俺たちが異世界で全てを取り戻す〜  作者: 高梨京司
第二章 サクヤの街

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傾国の鉄宰 第四十九話 【気付き】 〜ロストジェネレーションって何だ!〜

  ケインたちは下町からスラムの入り口へと足を進めていた。

 

 途中、下町の路地裏に打ち捨てられた少年リムを保護したために予定は大きく変わり、スラムの入り口からさらにその奥、サクヤの街の最下層に向かうことになってしまった。

 その後はあえて迷子になったかのように、スラムの行き止まりや廃墟を巡る。迷走を装う彼らの本当の目的は、ゴミ捨て場や死体置き場、あるいはそれに類する場所を探し出すことだった。

 シモーヌは常に襲撃の危険性を指摘していたが、実際に敵が襲いかかってくることはなく、表面的には平穏な時間が過ぎていく。だが、その裏では常に剣呑な気配が満ちていた。護衛たちが思わず身構える場面も何度かあったが、敵地に乗り込んでいる自覚のあるオーケンたちは、ことさらに騒ぎ立てることはしなかった。

 そのため、戦闘訓練や魔法の鍛錬を欠かさず積み上げてきたものの、修羅場の経験が足りないケインには、ここが「少し雰囲気の悪い下町」程度にしか感じ取れずにいた。ましてや、何の訓練も受けていないごく普通の少年であるリムからすれば、想像していた「危険で汚い悪の巣窟」とは異なる静けさに、むしろ肩透かしを食らったような感覚を覚えていた。

 そんな中、ケインの前を歩くオーケンはある可能性に思い至った。


◇オーケンside◇


 ギラついた視線。それは()()()()()()()()を通っても、投げつけてくる者たちはいた。その後に害意を持って行動を起こす者たちも、一定数はいた。自分たちとの圧倒的な実力差に気付かず仕掛けてくる者ばかりではなく、何かしらの事情があり、力量差を察しつつも決死の特攻を敢行する者たちさえいた。

 それこそがスラムの日常だと、オーケンは考えていた。だが──。


(なんだ、この街は……)


 強い戸惑いがオーケンの胸に生じていた。

 ギラついた目をした人間たちは数多く存在している。それは他のスラムと変わらない。だが、害意を持って行動を起こす者がいない。一人もいないのだ。まるで何かの総意、あるいは強固な統制でもあるかのように、誰一人として一線を越えてこない。


 若き主を守るべく細心の注意を払いながらも、行く先々、通りの両端、建物の影などを細やかに観察していく。

 本当に死体や生ゴミが見当たらない。それ自体、スラムとしては十分に異常だったが、それ以外に見えるのは、他のスラムでもよくある光景だった。ギラついた目を持つ者たちと、生気のない視線を漂わせて道端に寝そべる者たち。関わり合いを避けるように姿を消す者もいれば、こちらに全く興味を示さず日常を送る人もいる。


 戸惑いは辻を超えるごとに、角を曲がるごとに大きくなっていった。


(何かが変だ……何かがおかしい。いったい俺は、この街の何に違和感を覚えているんだ……?)


 その時、背後から街の惨状を嘆くケイン様の声が聞こえた。


「スラムは、こんな感じなんだね。どこに行っても、どこの角を曲がっても人が寝そべってるなんて……。なんだか、見える範囲に必ず二人以上はいる気がするよ」


 その声を聞いた瞬間、胸の奥で薄霧のように漂っていた違和感が、明確な形を結んだ。


(なるほど、そういうことか。それを可能にするとすれば……)


 さて、ケイン様はどう判断されるのか。

 間断なく続く緊張の中、若き主がこの異常を知ってどう対処するのか。それを期待してしまう己の酔狂に苦笑いを浮かべそうになるのを何とか噛み殺しながら、オーケンは話し合いに適した場所を選んで声をかけた。


「ケイン様、少し宜しいでしょうか」


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