管理課 建物管理チーム
管理課 建物管理チーム。
この春、新卒として入社し配属されたのがこの課だ。そして今日が顔合わせの日。
しかしなぜかさっそく車にのせられ、会社を出た。
緊張する私を助手席にのせ、先輩はけだるそうに運転をしている。
「ついたぞ」
到着したのはとある路地裏の廃ビル。
この建物を管理するのかな?
先輩がふぅ…と大きく息をつく。まるでこれからフルマラソンにでも臨むみたいに。
突如、目の前の廃ビルが震える。プリンみたいに。
ギシッ。ギシッ。
廃ビルがその姿を変える。薄汚れた灰色の、大きなトグロ。そこにいたのは巨大なドラゴン。あのファンタジーに出てくるやつだ。
「いってこい」
先輩が手を振る。灰色の元ビルのドラゴンが舞い上がり、そして遥か彼方に消えていく。
はっ。こんな町中でドラゴンが飛んでいったりしたら…。
人の行き交う道に目をやる。
しかし、そこには異様な光景が。人々が、まるでマネキンにでもすり替えられたかのように、ピタリとその動きを止めていた。
片足をあげたまま、目を見開いたまま。
時を止められたかのように。
だが、わたしは気づいた。ひとりの、取り立てて特徴のないサラリーマンが、周りの異変など意にも介さず歩いている。
彼が、呆然とする私を見る。
にっこり。
笑った。笑ったのだ。張り付けたような彼の笑顔。その瞳の奥に、尋常でないナニか顔をのぞかせた。
「目を合わせるな」
先輩が、すっと私の前に立つ。彼の視線を遮る。
「あれは別のチームの管轄だ。建物管理チームの仕事は、『ビル』が息抜きできるようにしてやることだ」
「じゃあ、先輩が、その…『止めた』んですか」
「やり方は教える。安心しろ」
私はどうも大変な課に配属されてしまったようだ。




