鞭に愛を、剣に錆を
「痛い痛い。怪我した、治してくれ」
剣士がぴょんぴょん跳ねながら叫ぶ。指先からちろっと血が出ていた。
僧侶が冷めた目で応じる。
「いやです。傷を治すたびに、1セット100回の腕立てと腹筋を3セットするくらい疲れるんです」
「僧侶の意味がな・・・」
剣士の足元でぴしゃりと鞭がなる。片手に杖、片手に鞭を持っている僧侶は少ない。
「いけ」
「はい」
今日も剣士は一人敵に向かっていく。
酒場で剣士と僧侶は夕食をとっていた。取り分は4:6。剣士4の僧侶6だった。そういう契約だった。
「いやー今日も働いたね」剣士がにっこりと笑う。僧侶は黙々と料理を平らげていた。
「きみの最後の一撃はすごかったね。いつの間に鞭に毒なんて仕込んでたの?ていうか最近癒しの技よりも攻撃スキルの方が出番多くなってるよね。しかもえげつない系の」
「わたしだってもっと回復とか蘇生とか、そういう技を使いたいです。というか、使わせてください」
「はは・・・ごめんね。ほら、もっと食べていいよ、コウモリのスープ」
僧侶はがっと器をつかみ、一気に飲み干した。ばりばりと骨まで食べた。
「ところでさっき本屋で何を買ってたの?」
僧侶は黙って本を机の上においた。『急所を狙え!片手武器でも大ダメージを与えるコツ』『ジョブチェンジのススメ。これであなたも前衛職に!?』
「・・・読み終えたあとで借りていいかな」
「どうぞ、なんなら今すぐにでもどうぞ」
剣士は地図を手にうんうんとうなっていた。
「何を悩んでいるのですか?」僧侶がすたすたと歩み寄る。白い僧侶服はすでにモンスターの血で染まっていた。
「いや、このまままっすぐいくと近道なんだけど、ドラゴン種がいるから、遠回りだけど迂回して安全にいこうかなって」
「直進しましょう。それ以外にありえません」
「いや、でもさすがにドラゴンは」
「問題ありません。1分で仕留めます」
剣士は気づいた。僧侶の持つ鞭が上質な物に変わっていることに。刺が付いてる。
「でも前衛はぼくだからね」
「わかりました。・・・頼りにしてます」
剣士と僧侶はボロボロになっていた。しかし、成果はあがった。2人は久々にお酒を飲んでいた。
久しぶりの大物との対決、そして勝利に酒はすすんだ。
「きみの攻撃はすごかったね。最後の方なんか杖捨てて鞭の2刀流になってたもんね」
「あなたもなかなかでした。わたしも冒険に出て長いですけど、盾の2刀流は初めて見ました。でもおかげで安心して攻撃に集中できました」
声を立てて2人は笑った。
2人は明日も冒険に出る。




