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春の蜘蛛
蜘蛛のヨセフはじっと待っていた。ここ数日、彼が口にしたものといえば巣の糸を伝ってきた露だけ。さすがに空腹が彼の身を蝕んできた。
祈るような気持ちで、しかしぴくりとも動かず待ち続けた。
ヨセフの思いが天に届いたのか、一匹の蝶がひらひらと近づいてきた。彼の張った巣にまるで、気づく風もない。
やがてその蝶はヨセフの巣に触れた。
気づいたときにはもう遅い、蝶がいくらもがいてもヨセフの張った巣は逃しはしない。
「ちくしょう!この脚長やろう、はなしやがれ!」
華麗な外見に反して、蝶は意外と口が悪い。
ヨセフははやる気持ちを押さえつつ、蝶のもとに駆けた。
「脚が長いのはお互い様さ。悪いが、いただくよ」
「くそ!ちかづくんじゃねえ!」
ヨセフがやれやれ、やっとご飯にありつける、と安堵の吐息を漏らしたと同時に、なにかおおきな影がぬっと現れた。
広い草原にひらひらと一匹の蝶が待っている。その蝶に向かって幼いこどもが手を降っている。平和な春の一日。
こどもの足元には蜘蛛が一匹。踏み潰され、もはやぴくりとも動かない。
平和な春の一日。




