自分だけが美しく映る鏡
ドラマには話題の女優が出演している。そこそこ綺麗だ。
見終わり、お風呂に入ろうと腰をあげた。
洗面台の鏡を見る。そこには、誰よりも、何よりもウツクシイ私がいた。
高校生ともなれば、クラスの約半数の女の子には彼氏がいる。彼氏がいない子だって、友だちくらいはいる。両方いないのは、よっぽどのネクラでブスな、クラスカーストの底辺にいるような子だ。
軽蔑する。私はああはなりたくないと強く思う。
私には、彼氏も友だちもいないけど、それはきっと高嶺の花というか、みんなが私に釣り合っていないだけなんだ。きっとそうだ。
トイレで鏡を見る。やっぱりキレイだ。クラスどころか学校一キレイだ。
スマホで自撮りする。写真でもやっぱり珠のようなウツクシサだ。
放課後、友人や彼氏とのデートにいそいそと出掛けるクラスメートを尻目に、私は自宅に帰った。
「おかえり。夕御飯準備してるからね」
母がやさしく声をかけてくる。
私は黙って、自室に通じる階段に足をかけた。
ふと。滴ほどの思い付きが降ってきた。疑惑、といってもいい。
「ねぇ」
「なに?」母が料理の手を止めずに応じる。
「私ってキレイ?」
母の手がぴたりと止まる。
「私って、キレイでしょ?」
沈黙。
「もちろんよ」微かな、消えいるような声。
私は自室に入った。机の上の鏡を手に取る。
そこに映る私はやはり、キレイだ。ウツクシイ。誰よりも、何よりも、ビを体現していると思う。
だったら、なぜ。
「私には友だちがいないの?」
なぜ。
「彼氏ができないの?」
なぜ。
「母は、腫れ物を扱うような態度で私に接するの?」
そして本当に。
「私は、ウツクシイの?」
鏡に映る私はキレイだ。
でも!
「これは本当の私なの?」
ねえ!
「私って、キレイ?」




