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山田、1000万分の1に賭けた男

 『中学校に入学する皆様へ。これからみなさんは誕生日を迎えるごとに1ポイントを得ます。ポイントは、容姿、知性、運動、運に振り分けることができます。振りなおしは如何なる理由があろうとできませんのでよく考えて振ってください。ちなみに誕生以降の累積、12ポイント(個人差があります)がありますので、まずはそれらを振り分けてください。…以下、省略』一A国ホームページより抜粋。


 今年で45才となった僕は中学のときの同窓会に参加していた。久々に顔を会わせた同級生たちは、みなそれぞれの人生を歩んでいた。

 容姿に全ポイントを振った○はモデルとして、知性に全ポイントを振った×は学者として、運動に全ポイントを振った△はアスリートとして、今だに活躍しているらしい。しかし、極振りなどという無謀なことができるやつはほんの一握りだ。加えて言うならば、極振りをしたからといって、必ずその道のプロになれるわけでもない。あくまで、その能力に秀でているということに過ぎないのだ。

 ほとんどのやつは、ボチボチすべての要素に適度に振り分けて、平々凡々と生きてきた。僕も含めてだ。

「ところで、山田はどこだ?」

僕の問いに、みなが首を傾げた。

 しらんな。山田?あの隅っこにいたやつか?覚えてないな。

 山田。影の薄い、目立たないやつだった。中学のとき、みながポイント振りによってみるみる変化していくなかで、山田だけはぱっとしないままだった。

容姿端麗になるでもなく、頭脳明晰になるわけでもなく、運動抜群になるわけでもなく。変わらず、平凡であり続けた。

「来るとは聞いてるけどな」

幹事が赤い顔で言う。

「実は、2、3年前に偶然見たけど、山田のやつ、ボロボロの格好で町中を徘徊してたな」一人がぽつりと呟く。

 僕も山田を見掛けたことがある。あれは数年前のことで、山田は見るも哀れな姿でよろよろとさ迷っていた。交流はなかっとはいえ、元同級生の落ちぶれように胸が痛んだ記憶がある。

 なんとなく、会場に重い空気が漂う。

 そのとき、襖がスーッと開けられた。自然と、視線が集まる。

 そこには、上下ブランドの服に袖を通した山田がいた。ちらりと覗く腕時計も有名なメーカーのものだった。

艶のいい顔で、さらりと遅刻を詫びる。その姿には、まさに成功者の威厳があった。

 あまりの変貌にあっけにとられた面々だが、すぐにわっと場が沸いた。

「おいおい、えらい変わりようだな」「なにがあった?」「どういうポイント振りしたんだよ?」

 山田はにんまりと笑った。

「運に極振りしたのさ」

 1000万分の1。それは、宝くじに当選する確率だ。

 

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