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魔法

 大きな影が窓をよぎった。

 寝る前にカーテンを引き忘れたのだ。ガンガンに差し込む朝日は暴力的ですらある。一日の始まりを思うと気が重い。


 大きな影が窓をよぎった。


 コーヒーをいれる。砂糖がないことに気づく。ついでにパンも。舌打ち。仕方ないのでブラックのまま飲み込む。


 大きな影が窓をよぎった。


 電話が鳴る。出る。すぐ出る。そう答える。電話越しに悲痛な叫び声が聞こえる。すぐ、じゃなくて、今すぐ来てくれと。


 大きな影が窓をよぎった。

 

 着替えを済ませ、荷物を持って部屋を後にする。鍵はかけない。


 大きな影が空をよぎった。


 見上げる。見つける。見つかる。

 大きな目が空から私をとらえる。私はそれを地上からにらみ返す。


 大きな影の下、小さな私は、これから始まる日常に、気を引き締める。

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