餌
猫が五月蝿い。
このアパートは会社の借り上げ物件で、ペットは禁止だ。にも関わらず、だれかが敷地内に猫の餌をおいている。そのせいで野良どもが群がってきてひどい有り様になっている。
回覧板で注意が回ってきてはいるが、未だに止む気配はない。
猫が集まるだけならまだ我慢もできる。しかし、盛っているのか夜遅くににゃーにゃーと鳴かれるとたまったもんじゃない。
フラストレーションが積もり積もるある日、所用でホームセンターに来ていた。
目当てのモノを買い、適当に店内を物色しているときにそれを見つけた。
ホウ酸団子。ネズミ駆除用、とある。
帰宅し、アパート敷地に足を向ける。
あった。無造作に置かれた猫缶。まだ封が切られたばかりのようだ。
俺はホウ酸団子の封を開けた。
ほどなくして猫は姿を消した。死骸はだれかが処理したらしい。
「猫を駆除したのは、俺なんだよ」
同期と部屋でサシ飲みをしているとき、酒の勢いで口走った。別に悪いことをしていたわけじゃないが、何となくこのことは黙っていたのだ。
ホウ酸団子のことを含め、すべてを話した。
同期はふーんとつれない。反応は薄い。
「…鍋の具、少なくなってきたな」
同期がぽつりと呟いた。
「あ、追加するか?」
「いや、おれがやるよ、座ってな」
同期が腰をあげ、鍋を持って台所に立つ。
「ところで、つみれ、好きか?」




