紙上の旅
古い本をめくるといつの間にか背後に女の人が立っていた。
誰?そんなありふれた言葉は彼女の一言で飲み込んだ。
「さぁ、参りましょう」
彼女に手を引かれ、気づけば僕は船上にいた。
片手に反り返った剣を、もう片方には銃を。気づけば周囲は戦場真っ只中だった。
飛び交う弾丸の中、ふと気づいた。
船の先端に彼女がいる。見るからに野蛮そうな男たちに囲まれ、まさに絶体絶命。
喧嘩すらしたことのない僕だがなぜか考えるより先に身体が動いた。剣を鳴らし、銃で打ち抜きながら彼女のもとに進む。
やがて彼女のもとにたどり着いた。
「さぁ、次に参りましょう」
彼女がそういうやいなや、僕は廃墟の街にいた。
僕はぼろきれを纏い、手には鉄パイプを握っていた。周囲は崩れたビルや家が取り囲んでいる。
穴のあいた塀の上、裸足の彼女が腰掛けていた。ぶらぶらと足を揺らしている。
彼女に近づこうと一歩を踏み出す。すると僕と同じような格好の少年少女たちが壁のように立ちふさがった。
全員が揃いの真っ赤な布を身に付けていた。ふと見ると彼女も首に赤いスカーフを巻いていた。
「みんな、通してあげて。、、、さぁ、次へ参りましょう」
彼女言葉が引き金となり、僕は真っ白な部屋のなかに移った。
ガスマスクをつけた白衣の集団が僕を取り囲む。各々ノートやタブレットを手に持ち、熱心に書き込んでいる。無言なのが一層不安を煽る。抗議しようとしたが、ここで気づいた、僕は両手を縛られ身動きができない。
なんの前触れもなく、白衣のうちの一人がガスマスクを外した。
彼女だった。
「では、戻りましょうか」
僕は古い本を手にひとり佇んでいた。
彼女の姿はどこにもなく。僕は静かに本を閉じ、もとの日常へと戻っていった。




