『幸運なる七枚目』【5】
支配人に案内され――
三人は。
カジノの最上階へと――
辿り着いた。
目の前には。
大きな――
一枚の扉。
支配人「こちらです」
コンコン――
支配人「お連れいたしました」
???「はーい!」
中から――
明るい声が返ってくる。
支配人が――
扉を開く。
その先には。
広々とした――
一室。
大きな窓からは。
煌びやかなカジノのフロアが――
一望できる。
そして。
その窓際。
一人の男が――
立っていた。
男「いらっしゃーい!」
シオン「…………」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
男「いやー!」
男「待ってたよ!」
その頬には――
《7》
シオン「…………No.7」
No.7「正解!」
No.7は――
満面の笑みを浮かべる。
No.7「久しぶり!」
No.7「No.2! No.A!」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
セイは――
No.7を見る。
そして。
部屋を見渡す。
大きな窓。
その向こうに広がる――
巨大なカジノ。
セイ「…………待て」
No.7「ん?」
セイ「お前――」
もう一度。
眼下のカジノへ――
目を向ける。
セイ「ここのオーナーなの?」
No.7「そう!」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
セイ「マジで?」
No.7「マジマジ!」
セイ「…………マジかよ」
No.7「あはははは!」
No.7「いい反応するねー!」
ヴァン「…………これは」
ヴァン「予想外だな」
No.7「でしょ?」
セイ「…………」
セイは――
まだ少し信じられないように。
部屋の中を見回していた。
シオン「…………」
No.7「それで――」
No.7は。
今度は――
シオンへ目を向ける。
No.7「シオン・アルヴェリア」
シオン「…………!」
No.7「初めまして!」
シオン「俺を知ってるのか」
No.7「うん!」
No.7「上の四人から――」
No.7「手紙が来てたからね」
シオン「…………上の四人」
No.7「そう!」
No.7は――
指を折りながら。
No.7「No.A」
No.7「No.2」
No.7「No.3」
No.7「No.4」
No.7「君が順番に接触してることも――」
セイと――
ヴァンを見る。
No.7「この二人が今――」
No.7「君と一緒にいることも」
No.7「だいたい知ってるよ」
シオン「…………」
少し――
間を置いて。
シオン「上の四人」
No.7「ん?」
シオン「お前は――」
シオン「そいつらのことを知ってるのか?」
No.7「さあ?」
シオン「…………」
No.7「俺も分かんない」
あっさりと――
答える。
No.7「手紙だって――」
No.7「毎回、届き方が違うからね」
No.7「人が持ってきたり――」
No.7「気づいたら置いてあったり」
肩を竦める。
No.7「追おうにも――」
No.7「追えないんだよ」
シオン「…………そうか」
No.7「でも――」
シオン「…………?」
No.7「キングなら――」
No.7「知ってるかもね」
シオン「…………キング」
その名に――
シオンの表情が変わる。
シオン「父上を殺した奴か」
セイ「…………ああ」
ヴァン「…………」
No.7「そうそう」
先ほどまでと変わらぬ――
軽い口調。
だが。
No.7「あいつだけは――」
No.7「特別だからな」
シオン「特別?」
No.7「うん」
No.7は――
少し考える。
No.7「俺たちの中でも――」
No.7「キングだけは違う」
シオン「…………」
No.7「だから――」
No.7は。
窓の外へ――
視線を向ける。
No.7「上の四人について――」
No.7「何か知ってる奴がいるとしたら」
再び――
シオンを見る。
No.7「俺は――」
No.7「キングだと思ってるよ」
シオン「…………キング」
シオンは――
その名を。
もう一度――
口にした。
No.7「まあ――」
No.7「本当に知ってるかどうかは」
No.7「俺も知らないけどね!」
シオン「…………」
No.7「あははは!」
No.7は――
すぐに。
いつもの笑顔へ戻る。
シオン「…………」
シオン「一つ聞きたい」
No.7「なに?」
シオン「そこまで俺たちのことを知ってたなら――」
シオン「どうして今日――」
シオン「俺を呼んだ?」
No.7「ああ!」
No.7は――
楽しそうに。
シオンを指差す。
No.7「君が面白かったから!」
シオン「…………俺が?」
No.7「うん!」
No.7「手紙を読んだ時は――」
No.7「正直、そんなに興味なかったんだよね」
シオン「…………」
No.7「誰が負けたとか――」
No.7「誰が君についていったとか――」
No.7「へぇーって感じ!」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
No.7「でも――」
No.7は。
大きな窓の向こう。
眼下に広がる――
カジノへ目を向ける。
No.7「今日――」
No.7「君がここに来て」
No.7「勝って――」
No.7「勝って――」
No.7「また勝って!」
No.7「あんなに勝ち続ける人――」
No.7「久しぶりに見た!」
シオン「…………」
No.7「だから――」
No.7「ちょっと興味出ちゃってさ!」
No.7は――
シオンを見る。
楽しそうに――
笑いながら。
No.7「君――」
No.7「面白そうだね!」
シオン「…………そうか」
No.7「それで?」
No.7「俺に何か用があるんでしょ?」
シオン「ああ」
シオン「俺は――」
シオン「《凶宴》を終わらせる」
No.7「うん」
シオン「そのために――」
シオン「お前にも話を聞きたい」
No.7「…………」
No.7「嫌だ!」
シオン「…………」
セイ「即答かよ」
No.7「あははは!」
シオン「理由は?」
No.7「だって――」
No.7「わざわざ君に協力する理由もないでしょ?」
シオン「…………」
No.7「君が《凶宴》を終わらせたいなら――」
No.7「好きにすればいいと思うよ?」
シオン「なら――」
シオン「知ってることを話せ」
No.7「それは嫌!」
シオン「…………」
No.7「俺が君に協力する理由――」
No.7「何もないもん!」
シオン「…………そうか」
No.7「うん!」
シオン「なら――」
シオンの手が。
剣の柄へ――
伸びる。
セイ「…………」
ヴァン「…………」
No.7「…………お?」
スラ――
シオンが――
剣を抜く。
No.7「もしかして――」
No.7は。
剣を向けられているというのに。
楽しそうに――
笑った。
No.7「やる?」
シオン「ああ」
No.7「ここで?」
シオン「場所を変えてもいい」
No.7「いいよいいよ!」
No.7は――
両手を広げる。
No.7「ここでやろう!」
シオン「…………」
No.7「せっかく――」
No.7「君に興味が出てきたところだし」
ニッ――
笑う。
No.7「もっと見せてよ」
シオン「…………なら」
剣を――
構える。
次の瞬間。
シオンが――
床を蹴った。
次。
シオン「――っ!」
踏み込む。
だが。
その瞬間――
ガタンッ!!
近くに置かれていた椅子が――
なぜか倒れる。
シオン「っ!」
足を取られ――
剣先が逸れる。
ブン――!!
No.7「おっと!」
また――
外れた。
シオン「…………っ」
次。
未来を見る。
斬れる。
今度こそ――
届く。
ダッ――!!
だが。
No.7「ん?」
No.7が――
たまたま。
床に落ちたコインへ――
目を向ける。
No.7「あ、コイン」
ひょい――
屈む。
ブン――!!
シオンの剣が――
頭上を通過する。
No.7「ラッキー!」
シオン「…………」
セイ「無理だって」
シオン「…………?」
セイは――
呆れたように。
No.7を見る。
セイ「そいつ――」
セイ「昔からそうなんだよ」
シオン「何がだ」
セイ「運」
シオン「…………運?」
セイ「ああ」
セイ「気持ち悪いくらい――」
セイ「運がいい」
No.7「気持ち悪いは余計だろ!」
セイ「うるせぇ」
セイ「お前に攻撃しようとすると――」
セイ「なんか起きる」
セイ「飛んできた物が邪魔したり」
セイ「足元の何かに躓いたり」
セイ「たまたまこいつが動いたり」
セイ「理由は毎回違うけど――」
No.7を――
指差す。
セイ「結局――」
セイ「こいつに都合のいい方に転ぶ」
シオン「…………」
セイ「だから――」
セイ「No.6からカジノにいるって聞いた時」
セイは――
ヴァンを見る。
セイ「俺ら二人とも」
セイ「『あぁー』ってなったんだよ」
ヴァン「ああ」
セイ「こんな体質してんだから――」
セイ「そりゃカジノに入り浸ってるだろって」
ヴァン「だが――」
ヴァンは。
部屋を見渡す。
ヴァン「まさか――」
ヴァン「オーナーとはな」
No.7「あははは!」
No.7「いいでしょ?」
No.7「俺のカジノ!」
セイ「趣味を仕事にすんなよ!」
No.7「最高じゃん!」
セイ「…………ったく」
No.7「…………」
セイ「ん?」
No.7「ていうか――」
No.7は。
セイを――
まじまじと見る。
No.7「No.2」
No.7「お前――」
No.7「そんな喋る奴だったっけ?」
セイ「…………」
No.7「なんか――」
No.7「前と全然違うね!」
セイ「…………まあな」
No.7「何があったの?」
セイ「色々あったんだよ」
No.7「へぇー!」
セイ「あと――」
No.7「ん?」
セイ「今はNo.2じゃねぇ」
No.7「…………?」
セイ「セイだ」
No.7「…………」
No.7「そっか。」
それ以上――
No.7は。
何も聞かなかった。
セイも――
何も言わない。
シオン「…………」
二人のやり取りを――
聞きながら。
シオンは。
先ほどから起きていることを――
頭の中で整理していた。
倒れた――
椅子。
床に落ちていた――
コイン。
どれも。
ただの偶然にしか――
見えない。
だが――
その全てが。
No.7にとって――
都合よく働いている。
シオン「…………幸運」
シオンは――
再び。
剣を構える。
No.7「まだやる?」
シオン「ああ」
未来を見る。
今度も。
確かに――
斬れる。
シオン「…………」
ダッ――!!
踏み込む。
だが――
また。
何かが起きる。
剣は――
届かない。
もう一度。
未来を見る。
届く。
踏み込む。
外れる。
もう一度。
届く。
外れる。
もう一度――
シオン「…………」
カチン――
剣が。
鞘へ収まった。
No.7「ん?」
No.7「もういいの?」
シオン「ああ」
No.7「諦めるの早くない?」
シオン「十分だ」
No.7「…………?」
シオンは。
No.7を見る。
そして。
その向こう。
窓の下に広がる――
巨大なカジノへ目を向けた。
シオン「お前とは――」
僅かな沈黙。
シオン「斬り合うのは違う」
No.7「…………」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
No.7は。
シオンを――
じっと見る。
そして。
ニッ――
笑った。
No.7「へぇ」
No.7「じゃあ――」
No.7「どうする?」




