『幸運なる七枚目』【4】
それから――
しばらくして。
セイ「…………」
ヴァン「…………」
二人の手元には――
何も。
残っていなかった。
セイ「…………おかしい」
ヴァン「ああ」
セイ「こんな早く無くなる?」
ヴァン「…………」
セイ「お前も全部?」
ヴァン「ああ」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
セイ「シオン探すか」
ヴァン「ああ」
二人は――
何事もなかったかのように。
シオンを探し始めた。
◆
そして――
セイ「…………いた」
ヴァン「ああ」
二人の視線の先。
一つの卓に――
シオンが座っていた。
その前には。
大量のチップが――
積み上がっている。
セイ「…………」
ヴァン「…………」
セイ「なんで?」
ヴァン「さあな」
二人が――
近づいていく。
シオン「…………」
卓上を見ながら。
シオンは――
ほんの僅か先を見る。
――次。
相手が――
動く。
その未来を確認し。
シオンは――
チップを置いた。
そして。
数秒後。
ディーラー「お客様の勝ちです」
ジャラ――
さらに増える――
チップ。
セイ「…………」
ヴァン「…………」
セイ「ズルくね?」
シオン「…………?」
聞き覚えのある声に――
シオンが振り返る。
シオン「お前ら」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
シオン「…………」
シオンの視線が――
二人の手元へ落ちる。
何もない。
シオン「…………まさか」
セイ「いや――」
セイ「違うんだ」
シオン「何がだ」
セイ「…………」
セイ「全部負けた」
シオン「そのままじゃないか!」
セイ「仕方ねぇだろ!」
セイ「赤が全然来ねぇんだよ!」
シオン「知るか!」
セイ「てか!」
セイは――
シオンの前に積まれた。
大量のチップを指差す。
セイ「なんでお前はそんな勝ってんだよ!」
シオン「なんでって……」
シオンは――
少し考える。
シオン「未来が見えるから」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
シオン「…………」
セイ「それ――」
セイ「賭け事で使っていいの?」
シオン「知らん」
セイ「ずりぃ……」
シオン「そもそも俺は――」
シオン「遊んでたわけじゃない」
セイ「え?」
シオンは――
カジノの中へ目を向ける。
シオン「ここで賭けながら――」
シオン「ずっとNo.7を探してた」
客の顔。
ディーラー。
行き交う従業員。
二階へ続く階段。
見える範囲は――
一通り確認した。
それでも。
シオン「…………いない」
セイ「No.7が?」
シオン「ああ」
シオン「これだけ探して――」
シオン「見つからないなら」
もう一度――
広大なカジノを見渡す。
シオン「今日は――」
シオン「ここにいないのかもしれないな」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
シオン「…………?」
なぜか。
二人とも――
こちらを見ている。
正確には。
シオンではなく――
その前に積まれた。
大量のチップを。
シオン「…………」
セイ「…………」
ヴァン「…………」
シオン「やらないぞ」
セイ「まだ何も言ってねぇだろ!」
シオン「顔に書いてある!」
セイ「ちょっとだけ!」
シオン「ダメだ!」
セイ「増やして返すから!」
シオン「さっき全部無くした奴が言うな!」
セイ「今度は赤やめるから!」
シオン「そこじゃない!」
セイ「頼む!」
シオン「…………」
その横で。
ヴァン「…………」
また。
静かに――
手を差し出す。
シオン「…………」
ヴァン「…………」
シオン「お前はせめて喋れ!!」
◆
しばらくして。
カジノ内に設けられた――
レストラン。
シオン「…………」
セイ「うまっ!」
ヴァン「悪くない」
三人は――
遅めの食事を取っていた。
テーブルには。
肉料理。
パン。
スープ。
そして――
空になった皿がいくつも並んでいる。
シオン「お前ら……」
セイ「ん?」
シオン「負けた上に――」
シオン「飯まで俺持ちか?」
セイ「勝ってんだからいいだろ」
シオン「俺の金だ!」
セイ「元はカジノの金じゃん」
シオン「…………」
セイ「細けぇなー」
シオン「誰のせいだと思ってる!」
ヴァン「シオン」
シオン「なんだ」
ヴァン「これも頼んでいいか」
ヴァンが――
メニューを指差す。
シオン「…………」
シオン「お前ら――」
シオン「遠慮って言葉知ってるか?」
セイ「知ってる」
ヴァン「ああ」
シオン「なら使え!」
セイ「はははっ!」
シオン「…………はぁ」
呆れながら。
シオンは――
店内へ目を向ける。
ここへ来てから――
かなりの時間が経った。
賭けながら。
フロアを回りながら。
それなりに――
探した。
だが。
No.7らしき人物は――
どこにもいない。
シオン「…………」
シオン「やっぱり――」
シオン「今日はここにいないのかもな」
セイ「んー……」
セイは――
料理を頬張りながら。
首を傾げる。
セイ「でもNo.6は――」
セイ「ずっとここに反応があるって言ってたよな?」
シオン「ああ」
ヴァン「なら――」
ヴァン「まだ探していない場所にいる可能性もある」
シオン「…………そうだな」
シオン「食べ終わったら――」
シオン「もう一度探すか」
セイ「おう」
その時。
支配人「失礼いたします」
シオン「…………?」
三人が――
声の方を見る。
そこには。
身なりを整えた一人の男が――
立っていた。
支配人「お食事中――」
支配人「申し訳ございません」
シオン「何か?」
男は――
丁寧に頭を下げる。
支配人「私――」
支配人「当カジノの支配人を務めております」
セイ「支配人?」
支配人「はい」
支配人は――
シオンへ目を向ける。
支配人「実は――」
支配人「当カジノのオーナーが」
支配人「お客様の勝ちっぷりに――」
支配人「大変、感動されておりまして」
シオン「俺の……?」
支配人「はい」
支配人「これほど見事に勝ち続けるお客様は――」
支配人「そういらっしゃいません」
支配人「是非一度――」
支配人「お会いしたいと仰っております」
シオン「…………」
セイ「オーナーか……」
セイの目が――
僅かに輝く。
セイ「なあ、シオン」
シオン「なんだ」
セイ「仲良くなっとけよ」
シオン「なんでだ」
セイ「もしかしたら――」
セイは。
テーブルいっぱいに並ぶ料理へ――
目を向ける。
セイ「ここのレストラン」
セイ「食べ放題になるかもしれねぇだろ!」
シオン「なるか!」
セイ「分かんねぇだろ!」
セイ「オーナーだぞ!?」
シオン「だからなんだ!」
セイ「夢あるだろ!」
シオン「お前は何しに来たんだ!」
セイ「No.7探し!」
シオン「今思い出しただろ!」
セイ「忘れてねぇよ!」
その隣で。
ヴァン「…………」
一人だけ。
ヴァンは――
笑っていなかった。
ヴァン「支配人」
支配人「はい」
ヴァン「そのオーナーは――」
ヴァン「ずっと俺たちを見ていたのか?」
シオン「…………」
セイ「…………」
支配人「…………」
僅かな――
間。
支配人「当カジノのオーナーですので」
支配人「フロアの様子は――」
支配人「常に把握されております」
ヴァン「…………そうか」
支配人「何か――」
支配人「気になることでも?」
ヴァン「いや」
ヴァン「なんでもない」
そう答えながら。
ヴァンの目は――
僅かに細められていた。
シオン「…………」
支配人「それでは――」
支配人は。
三人へ向けて――
手を差し出す。
支配人「ご案内いたします」
セイ「よし!」
シオン「なんでお前が一番乗り気なんだ……」
セイ「食べ放題!」
シオン「まだ言ってるのか!」
ヴァン「…………」
そして――
三人は。
支配人の後を――
ついていった。




