『死を纏う四枚目』【13】
A「安らかに――」
A「眠ってくれ」
一方――
シオン「…………父上」
目の前に――
立つ。
一人の男。
かつて。
アルヴェリア王国を――
治めていた王。
そして――
シオンの。
父。
シオン「…………」
分かっている。
父は――
死んだ。
あの日。
崩れた王城で。
自分の手で――
触れた。
冷たくなった――
その身体に。
それでも。
シオン「父上――」
国王「…………」
返事は――
ない。
ただ。
剣を――
構える。
シオン「…………!」
その構えを。
シオンは――
知っていた。
何度も――
見てきた。
幼い頃から――
ずっと。
国王「…………」
ダッ――!!
シオン「――ッ!」
来る。
いや――
見えている。
振り下ろされる――
剣。
その軌道も。
避けるべき――
場所も。
その先まで――
見えている。
なのに。
シオン「…………父上」
自分へ――
剣を振るう。
父。
その姿に。
ほんの――
一瞬。
身体が――
止まる。
シオン「――ッ!」
ギィンッ――!!!
咄嗟に――
受ける。
シオン「くっ……!」
重い。
剣を通して――
腕が。
痺れる。
国王「…………」
間髪入れず――
次の一撃。
ギンッ!!
ギィンッ!!!
シオン「くっ――!」
受ける。
流す。
下がる。
見えている。
次も。
その次も。
それでも――
シオンから。
剣は――
振られない。
国王「…………」
ブンッ――!!!
シオン「――ッ!」
また――
見える。
剣が。
どこを通るのか。
どう避ければ――
届かないのか。
分かっている。
一歩――
下がればいい。
それだけで――
躱せる。
なのに。
その未来にいるのは――
自分へ剣を振るう。
父。
シオン「…………ッ」
一歩が――
遅れる。
ザシュッ――!!
シオン「ぐっ……!」
刃が――
肩を。
斬り裂く。
鮮血が――
飛ぶ。
シオン「…………ッ」
見えなかったんじゃない。
見えていた。
それでも――
避けきれなかった。
国王「…………」
止まらない。
踏み込み。
横薙ぎ。
シオン「――!」
ギィンッ!!!
受ける。
だが――
傷ついた肩に。
力が入らない。
ガキィンッ――!!!
シオン「ぐっ――!」
剣が――
弾かれる。
直後。
ドッ――!!
シオン「がっ……!」
国王の蹴りが――
腹へ。
突き刺さる。
シオンの身体が――
吹き飛ぶ。
ドサッ――!!
ザザザザッ――!!!
地面を――
転がる。
シオン「っ……」
口元から――
血が。
一筋。
シオン「…………」
それでも――
剣を支えに。
立ち上がる。
国王「…………」
再び――
構える。
シオン「…………ッ」
その姿を。
知っている。
その足運びも。
剣の構えも。
何もかも――
知っている。
だからこそ。
シオン「…………父上」
身体が――
動かない。
国王「…………」
ダンッ――!!
再び――
迫る。
シオン「――ッ!」
未来が――
見える。
踏み込み。
横薙ぎ。
一歩――
下がる。
それだけで――
いい。
シオン「…………」
だが。
目の前には――
父の顔。
シオン「くっ――!」
また――
遅れる。
ザシュッ――!!!
シオン「ぐあっ――!」
脇腹を――
刃が。
斬り裂く。
鮮血が――
地面へ。
落ちる。
シオン「はぁ……」
シオン「はぁ……」
肩。
脇腹。
口元。
身体に――
傷が。
増えていく。
それでも。
国王には――
傷一つ。
ついていない。
シオン「…………」
未来は――
見えている。
攻撃が――
見えないわけじゃない。
国王の剣が――
速すぎるわけでもない。
自分が――
弱くなったわけでもない。
ただ。
父が――
自分へ。
剣を振るっている。
その事実を――
目の前にするたび。
心が――
止まる。
そして。
身体が――
遅れる。
国王「…………」
ダッ――!!
シオン「くっ――!」
ギィィンッ!!!
再び――
剣がぶつかる。
シオン「ぐっ……!」
傷ついた肩が――
軋む。
押される。
一歩。
また――
一歩。
シオン「…………ッ」
剣を返せ。
そうすれば――
いい。
未来は――
見えている。
次の攻撃を躱し。
そのまま――
踏み込めば。
自分の剣は――
届く。
シオン「…………」
父へ。
シオン「…………ッ」
できない。
父を――
斬れない。
死んでいると――
分かっている。
あの日。
父の死を――
自分自身で。
受け止めた。
それでも。
目の前で――
動いている。
父の姿を。
もう一度――
斬ることなど。
シオン「…………できるかよ」
国王「…………」
ブォンッ――!!!
シオン「――ッ!」
ギィンッ――!!!
辛うじて――
受け止める。
シオン「ぐっ……!」
剣と剣が――
噛み合う。
目の前に。
父の顔。
シオン「…………」
違う。
父が――
こんなことを。
望むはずがない。
死してなお――
剣を握らされ。
自分の息子へ――
剣を振るう。
こんなことを――
シオン「…………ッ」
シオンの目が――
動く。
父の向こう。
一人の男。
No.4。
そして――
その傍ら。
地面に立てられた――
巨大な棺。
シオン「…………」
こいつだ。
父を――
こんな姿にしたのは。
シオン「No.4――!」
No.4「…………」
ギィンッ――!!
国王の剣を――
弾く。
シオン「父上を――」
シオン「解放しろ」
No.4「…………?」
国王「…………」
ダッ――!!
シオン「――ッ!」
また――
未来が見える。
避ける。
そのはずが――
ザッ――!!
シオン「ぐっ……!」
刃先が――
胸元を。
浅く裂く。
また。
一歩――
遅れた。
それでも。
シオンの視線は――
No.4から。
逸れない。
シオン「聞こえなかったのか……!」
荒い――
息。
傷口から――
血を流しながら。
シオン「父上を――」
シオン「解放しろ!!」
No.4「…………」
僅かに――
首を。
傾げる。
No.4「…………解放?」
シオン「…………」
No.4「何から――?」




