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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『死を纏う四枚目』【9】



――No.A VS 師匠――



A「行け」


シオン「…………」


A「シオン」


A「こいつは――」


A「俺に戦わせろ」



シオンは――

一瞬だけ。


Aを見る。



そして――


シオン「…………分かった」



ダッ――!!



シオンが――

No.4へ向かって駆け出す。



残された――

A。



その正面には。



一振りの剣を持った――

男。



A「…………」



男は――

何も言わない。



ただ。


静かに――

剣を構えた。



A「…………」


A「その構え――」


A「変わらないな」



ゆっくりと――


Aも。


剣を抜く。



A「…………」


A「まさか――」


A「あんたともう一度」


A「剣を交える日が来るとはな」



男が――

動く。



次の瞬間。



ドンッ――!!!



地面を蹴り砕き――


Aが。


一気に――

間合いを詰めた。



一撃。



ただ――

それだけ。



これまで。


幾人もの強者を――

沈めてきた。



Aの――


必殺の一振り。



ブォンッ――!!!



だが。



男は――


受けない。



ガッ――



刃が触れた――

その瞬間。



僅かに。


剣の角度を――

変える。



ギィン――!!!



A「――!」



Aの剣が――


男の身体を逸れ。



その勢いのまま――

地面へ。



ズガァァン――!!!



大地が――

抉れる。



A「…………」



男は――


もう。


Aの懐にいる。



スッ――



A「――っ」



首元を通り過ぎる――

刃。



Aが――

身体を引く。



一筋。



頬から――

血が流れた。



A「…………」



指で――

血を拭う。



そして。



ほんの僅かに――

笑った。



A「やっぱり――」


A「あんただな」



剛と――


柔。



何度。


剣を交えても。



この男だけは――


Aの剣を。



真正面から――

受けなかった。





――まだ。



《凶宴》も。



《A》という名も――


存在しなかった頃。



彼がまだ――



一人の少年だった頃――。





その少年の名は――



ヴァン。



まだ。


剣を握ることも。



強さを――

求めることも。



知らなかった頃。





「ヴァン」



朝。



聞き慣れた声に――

振り返る。



母「私たち――」


母「今日は隣町まで」


母「仕事に行ってくるから」



ヴァン「今日?」



父「ああ」


父「帰るのは――」


父「少し遅くなるかもしれない」



ヴァン「…………」



父「なんだ?」


父「一人じゃ怖いか?」



ヴァン「は?」


ヴァン「別に――」


ヴァン「怖くないし」



父「ははっ」


父「そうかそうか」



ヴァン「笑うなよ!」



母「もう――」


母「からかわないの」



母は――


ヴァンの前にしゃがむ。



母「ご飯は置いてあるから」


母「お腹が空いたら食べるのよ」



ヴァン「分かってるって」



母「それと――」



ヴァン「戸締まりもする」


ヴァン「知らない人が来ても開けない」



母「…………」



ヴァン「あと――」


ヴァン「暗くなったら外に出ない」



母「ふふっ」


母「ちゃんと覚えてるじゃない」



ヴァン「毎回言うからだろ」



父「じゃあ――」


父「留守番」


父「頼んだぞ」



ヴァン「うん」



父と――


母が。



家を出ていく。



ヴァン「…………」



それは――


いつもと変わらない。



何でもない――

朝だった。





そして。



昼が過ぎ――



夕方。



ヴァン「…………」



窓の外を見る。



空は――


赤く染まり始めていた。



ヴァン「遅いな……」



父は――


少し遅くなるかもしれないと。


言っていた。



だから。



まだ――

気にするほどじゃない。



ヴァン「…………」



テーブルに置かれた――


食事を見る。



けれど。



手は――

つけなかった。



もう少し待てば――


帰ってくる。



そう思っていた。





やがて。



赤かった空が――


暗くなる。



ヴァン「…………」



まだ――


帰ってこない。



ヴァン「…………」



窓を見る。



誰も――

いない。



ヴァン「…………」



その時。



ガタン――



ヴァン「――!」



扉の向こうから――


音。



ヴァン「帰ってきた!」



椅子から飛び降り――



タッ――!!


タッ――!!



玄関へ――

走る。



ヴァン「遅いって――!」



勢いよく――


扉を開ける。



ガチャッ――!!



ヴァン「…………」



そこにいたのは――



村長。



ヴァン「…………村長?」



いつもなら。



会えば――

笑って声をかけてくる。



けれど。



今日は――


何も言わない。



ヴァン「…………」



ヴァン「どうしたの?」



村長「…………」



何かを――


言おうとして。



口を開く。



だが――


言葉が出ない。



ヴァン「…………?」



おかしい。



子供のヴァンにも――


それだけは分かった。



いつもの村長とは――


明らかに違う。



ヴァン「…………」



そして。



今日――


帰ってくるはずの。



二人。



ヴァン「…………父さんと」


ヴァン「母さんに――」


ヴァン「何かあったの?」



村長「…………」



その言葉に。



村長は――


僅かに俯いた。



ヴァン「…………」



村長「ヴァン――」



村長「よく」


村長「聞いてくれ」



ヴァン「…………」



村長「お前の父さんと――」


村長「母さんが」



一度――


言葉を止める。



村長「隣町へ向かう途中で――」



ヴァン「…………」



村長「魔物に――」


村長「襲われた」



ヴァン「…………」



ヴァン「…………それで?」



村長「…………」



ヴァン「怪我――」


ヴァン「したの?」



村長「…………」



ヴァン「どこにいるの?」



村長「ヴァン……」



ヴァン「俺――」


ヴァン「行ってくる」



家を――


飛び出そうとする。



だが。



村長「ヴァン!!」



その肩を――


強く。


掴まれた。



ヴァン「…………?」



村長「…………」



ヴァン「なに?」



村長「…………二人は」



言葉が――


震える。



村長「もう――」


村長「帰ってこない」



ヴァン「…………」



ヴァン「…………なんで?」



村長「…………」



ヴァン「帰ってくるって――」


ヴァン「言ってたよ?」



村長「…………」



ヴァン「遅くなるかもしれないって」


ヴァン「でも――」


ヴァン「帰ってくるって……」



村長「ヴァン……」



ヴァン「…………」



村長「二人とも――」



村長「死んだ」



ヴァン「…………」



静かだった。



何も――


聞こえなかった。



村長が。


何かを――


話している。



けれど。



その言葉は――


ヴァンの耳には。


入ってこなかった。



ただ。



頭の中に――



帰ってくる。



朝。



母「暗くなったら外に出ない」



父「留守番――」


父「頼んだぞ」



ヴァン「…………」



いつもと――


何も変わらなかった。



だから。



ヴァン「…………」



ヴァン「嘘だ」



村長「…………」



ヴァン「だって――」



声が――


震える。



ヴァン「帰ってくるって」


ヴァン「言ったもん……」



村長「…………」



ヴァン「…………」



ヴァン「父さん……」



ヴァン「母さん……」



それ以上――



言葉は。



出なかった。





――数日後。





村の――


外れ。



二つ並んだ――


新しい墓。



その前に。



ヴァンは――


一人。


座っていた。



ヴァン「…………」



あの日から。



何度――


ここへ来たのか。



分からない。



ヴァン「…………」



二人は――


帰ってこなかった。



どれだけ――


待っても。



どれだけ――


願っても。





カンッ――!!



ヴァン「…………?」



少し離れた――


村の広場。



そこから。



何かが――


聞こえた。



カンッ――!!


カンッ――!!



剣の――


ぶつかる音。



ヴァンは――


ゆっくりと。


立ち上がった。





広場では――



一人の男が。



剣を――


握っていた。



その前には――


数人の村人。



次々と――


男へ斬りかかる。



だが。



カンッ――!!



一人。



剣を――


逸らされる。



ガッ――!!



もう一人。



踏み込んだ勢いのまま――


地面へ転がる。



三人目。



背後から――


剣を振るう。



男は――


振り返らない。



僅かに――


身体をずらす。



ブンッ――



空を――


斬る。



ヴァン「…………」



誰一人――


男に。



触れることすら――


できない。



なのに。



男もまた――



誰一人。



斬っていなかった。



ヴァン「…………」



初めて――


見た。



圧倒的な――



強さ。



ヴァン「…………強い」



気づけば。



その言葉が――


口から零れていた。

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