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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『すべてを失った日』【4】

シオンは剣を腰に差し、部屋を飛び出した。


廊下には慌ただしく行き交う兵士たち。


王城の外からは警鐘と人々の叫び声が絶え間なく聞こえてくる。


シオン「正門へ向かう! 馬を用意しろ!」


兵士「はっ!」


階段を駆け下りようとした――その時だった。


国王「待て、シオン」


聞き慣れた声に、シオンの足が止まる。


振り返ると、廊下の奥に一人の男が立っていた。


アルヴェリア王国国王。


そして――シオンの父。


シオン「父上……」


国王はすでに鎧を身に纏っていた。


普段、玉座に座る時の豪華な衣装ではない。


王としてではなく、一人の戦士として戦場へ立つための姿だった。


国王「どこへ行く」


シオン「正門です。第一守備隊が壊滅しました。俺も戦います」


国王「ならん」


シオン「なぜです!」


国王「お前には別の役目がある」


シオン「こんな時に王城で待っていろと!?」


国王「民を逃がせ」


シオン「……!」


国王「西門はまだ無事だ。城下の民を集め、西の森へ避難させろ。護衛の兵も連れていけ」


シオン「それなら兵士に任せれば――」


国王「シオン」


低く、強い声だった。


国王「今、この国で最も守るべきものは何だ」


シオン「…………」


幼い頃から何度も父に問われてきた言葉だった。


国王「城か?」


シオン「……違います」


国王「領土か?」


シオン「違います」


国王「では、何だ」


シオンは拳を握る。


シオン「……民です」


国王「そうだ」


父は静かに頷いた。


国王「城は建て直せる。土地は奪われても取り返せる。だが――命だけは戻らない」


遠くで再び轟音が響く。


王城が微かに揺れた。


それでも国王は、十三人が侵入してきた正門の方角から目を逸らさなかった。


国王「私はここに残る」


シオン「……父上?」


国王「近衛兵と魔術師団を率いて、奴らを止める」


シオン「だったら俺も!」


国王「お前は民と行け」


シオン「嫌です!」


思わず声を荒らげた。


シオン「俺だってアルヴェリアの王族です! 剣だって父上から教わった! 国が襲われているのに、自分だけ逃げろなんて――」


国王「王子だから言っているのではない」


シオン「……?」


父がシオンの目を真っ直ぐに見た。


国王「お前は――私の息子だ」


シオン「…………」


言葉が出なかった。


国王はゆっくりと歩み寄り、シオンの肩に手を置いた。


国王「生きろ、シオン」


それは王から王子への命令ではなかった。


一人の父親が、


一人の息子へ送った言葉だった。


シオン「父上……」


国王「民を頼む」


シオンは俯いた。


父の決意は変わらない。


何を言っても無駄だということくらい、分かっていた。


シオン「……分かりました」


国王「行け」


シオン「はい」


シオンは父に背を向ける。


だが――


数歩進んだところで、その足が止まった。


シオン「……父上」


国王「なんだ」


シオンは振り返った。


そして、父の顔をしっかりと見つめた。


シオン「生きて……また会いましょう」


一瞬だけ。


国王の表情が、いつもの父親のものへ戻った。


国王「ああ」


国王「約束だ」


シオン「……はい」


シオンは今度こそ背を向け、城下へ続く階段を駆け下りていく。


父もまた、剣の柄へ手をかけ――


十三人が待つ正門へ向かって歩き始めた。


一人は、人々を生かすために。


一人は、敵を食い止めるために。


親子はそれぞれ、


正反対の方向へ進んでいった。


そして――


これが、


シオン・アルヴェリアが父と交わした、最後の約束となった。

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