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《凶宴-CARD》  作者: shogo5


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『二枚目の裏側』【1】

乾いた風が、


砂埃を巻き上げる。



見渡す限り――


荒れ果てた大地。



草木はほとんどなく、


ひび割れた地面が、


どこまでも続いている。



その中を――


一人の男が歩いていた。



シオン「…………」



照りつける陽射し。


吹きつける砂。



そして――



シオン「……何もないな」



人の気配すら、


ほとんどない。



道と呼べるものもなく、


時折見えるのは――



崩れかけた家。


朽ちた荷車。


誰のものかも分からない、


錆びついた武器。



シオン「…………」



ここへ来るまでにも、


いくつかの小さな集落を通った。



だが――


どこも似たようなものだった。



貧しい。


荒れている。



そして何より――



人々の目が、


異様なほど冷たい。



誰も他人を信用していない。



目が合えば逸らす。


近づけば警戒する。



子供ですら――


腰に小さな刃物を携えていた。



シオン「……本当に、こんな場所にいるのか」



その言葉と共に――


シオンの脳裏に、


あの男の声が蘇る。





――――――――――





No.A『No.2なら、心当たりがある』


シオン『No.2……?』


No.A『ああ』


No.A『あいつは基本――』


No.A『自分が生まれた国から、そう遠くへは離れない』


シオン『……なぜだ?』


No.A『知らん』


シオン『…………』


No.A『本人に聞け』


シオン『……お前、本当に仲間に興味ないんだな』


No.A『仲間?』


シオン『……?』


No.A『ははっ』


No.A『たぶん、みんなそんなもんだぞ』


シオン『……何?』


No.A『俺たちは十三人で《凶宴-CARD》を名乗ってる』


No.A『だが――』


No.A『別に仲良し十三人組じゃない』


シオン『…………』


No.A『普段は好きな場所で、好きなように生きてる』


No.A『互いがどこにいるのかも』


No.A『何をしてるのかも知らない』


No.A『知ろうとも思わない』


シオン『…………』


No.A『仕事が来れば十三枚が揃う』


No.A『終われば、また散る』


No.A『それが凶宴だ』


シオン『……よくそれで組織として成り立ってるな』


No.A『だから面白いんだろ』


シオン『…………』


No.A『十三人全員、好き勝手に生きてる』


No.A『誰かのために凶宴にいる奴なんて――』


No.A『たぶん、一人もいない』


シオン『…………』


No.A『それで――場所だったな』


シオン『ああ』


No.A『――ヴァルガ』


シオン『ヴァルガ……?』


No.A『大陸の西端にある小国だ』


No.A『国なんて呼ばれてるが――』


No.A『実際は、そんな立派なもんじゃない』


シオン『…………』


No.A『土地は痩せてる』


No.A『まともな作物も育たない』


No.A『国の目もほとんど届いてない』


No.A『奪う奴がいて』


No.A『奪われる奴がいる』


No.A『それだけの場所だ』


シオン『…………』


No.A『あいつが今どこにいるかまでは知らない』


No.A『だが――』


No.A『探すなら、まずヴァルガへ行け』


シオン『ヴァルガ……』


No.A『運が良けりゃ、その辺にいるだろ』


シオン『……随分適当だな』


No.A『居場所まで知るかよ』


シオン『…………』


No.A『言っただろ』


No.A『俺たちは、そんな仲良し集団じゃない』


シオン『……分かった』


No.A『じゃあな、DEALER』


シオン『その呼び方はやめろ』


No.A『ははっ』





――――――――――





シオン「…………」



荒れ果てた大地を、


改めて見渡す。



シオン「ヴァルガ……か」



No.Aの言葉通り――


国と呼ぶには、


あまりにも荒れている。



そして――


このどこかにいる。



二枚目。



No.2。



シオン「…………」



そのまま、


しばらく歩き続ける。



やがて――



シオン「……?」



遠くに、


いくつもの建物が見えてきた。



数軒。



いや――


もう少しある。



だが、


人が暮らしているようには見えない。



屋根は崩れ、


壁はひび割れ、



ところどころ、


建物そのものが砂に埋もれている。



シオン「……廃村か」



かつては、


小さな集落だったのだろう。



だが今は――


人の営みなど、


どこにも残っていない。



シオン「…………」



それでも――



微かに、


人の気配がする。



シオンは、


剣の柄へ手をかけた。



そして――


廃村へ足を踏み入れる。



シオン「…………」



妙に静かだ。



乾いた風が、


壊れた扉を揺らす。



ギィ……


ギィ……



シオン「…………」



その時――



鼻を突く、


鉄の匂い。



シオン「……!」



シオンは、


匂いのする方へ進む。



そして――



シオン「…………!」



開けた場所に、


無数の男たちが倒れていた。



一人。



二人。



そんな数ではない。



十数人。



全員――


盗賊らしき男たち。



シオン「…………」



壁。



地面。



柱。



至るところに――


無数の剣傷が刻まれている。



深く抉られたもの。



地面まで達しているもの。



何度も斬りつけられたようなもの。



まるで――


この場所そのものへ、


手当たり次第に刃を叩きつけたかのような惨状。



シオン「…………」



だが――



シオンは、


足元に倒れた盗賊を見る。



シオン「……?」



首。



胸。



腹。



致命傷となった傷は――



一つ。



シオン「…………」



別の死体を見る。



同じだ。



その隣も。



さらに――


その隣も。



周囲には、


これだけ無数の剣傷が残っている。



それなのに――



シオン「全員……急所を一撃か」



あまりにも、


正確な太刀筋。



シオン「…………」



荒れ狂ったような、


周囲の惨状。



それとは対照的に――



盗賊たちは、


全員が急所への一撃で絶命している。



シオン「……何があった」



その時――



「……たすけ……」



シオン「!」



微かな声。



シオンが、


声のする方へ駆ける。



一軒の廃屋。



扉を開ける。



そこには――



数人の男女。



そして、


子供たちがいた。



シオン「……!」



全員、


生きている。



身体にも、


目立った傷はない。



シオン「大丈夫か!」


男「…………」


シオン「何があった」


男「……俺たちは」


男「盗賊に捕まってた……」


シオン「盗賊に?」


男「ああ……」


男「近くの集落や、街道から攫われて……」


男「ここへ連れてこられた……」


シオン「…………」


男「殺されると思ってた」


シオン「…………」


男「でも――」



男が、


足元へ目を向ける。



シオンも、


その視線を追う。



そこには――



切断された縄。



シオン「…………!」



男「突然……外が騒がしくなって……」


男「盗賊たちの悲鳴が聞こえた」


シオン「…………」


男「それから――」


男「何も聞こえなくなった」



シオンは、


足元の縄を拾い上げる。



切断面は――



綺麗だった。



一太刀。



縛られていた人間を、


傷つけることなく――



縄だけを、


正確に斬っている。



シオン「…………」



外の惨状とは、


まるで違う。



シオン「……誰がやった」


男「分からない……」


シオン「見てないのか?」


男「最後だけ……」


シオン「……?」


男「俺たちの縄を切りに来た」


シオン「どんな奴だった」


男「…………」



男は、


しばらく黙っていた。



そして――



男「静かな奴だった」


シオン「…………」


男「あんなことをした奴とは……」


男「とても思えないくらい――」



男は、


外に広がる惨状へ目を向ける。



男「静かな目をしてた」


シオン「…………」


男「それに……」


シオン「?」


男「信じられないかもしれないが――」



男の身体が、


僅かに震える。



男「一人だった」


シオン「……一人?」


男「ああ」


男「盗賊を殺したのも」


男「俺たちの縄を切ったのも――」


男「全部、そいつ一人だ」


シオン「…………」


男「それと……」


シオン「……?」


男「頬に、妙な印があった」


シオン「……印?」


男「ああ」



男は、


自分の頬を指差す。



男「ここに――」



一瞬、


シオンの目が鋭くなる。



男「“2”って印をつけた男だった」


シオン「…………!」



周囲に刻まれた――


無数の剣傷。



それなのに、


盗賊たちは全員――



急所を一撃。



人質は、


誰一人傷ついていない。



そして――



頬に刻まれた、


“2”。



シオン「…………」



間違いない。



シオン「No.2……」



二枚目は――



すぐそこにいる。

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