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一分間
一分間。
時計の針なら、
たった六度しか進まない時間。
そのあいだに、
あなたは何をしていただろう。
ページをめくった。
画面をスクロールした。
コーヒーを一口飲んだ。
誰かの名前を思い出し、
思い出しかけたことを忘れた。
窓の外では、
雲が少しだけ形を変えた。
遠くで電車が走り、
どこかで赤ちゃんが生まれ、
誰かは泣き、
誰かは笑った。
世界は、
あなたが立ち止まっているように感じたその一分も、
何ひとつ迷わず前へ進み続けていた。
人生は案外、
そんな一分の積み重ねでできている。
劇的な出来事より、
何も起こらなかった一分のほうが、
ずっと多い。
それでも、
その何気ない一分が、
いつか振り返ったとき、
「あの日の始まりだった」と思えることがある。
だから、
急がなくてもいい。
大きく変わらなくてもいい。
ただ、
次の一分へ進めばいい。
時計は、
誰の背中も押さない。
けれど、
誰も置いてはいかない。
次の一分は、
まだ誰のものでもない。
その一分は、
あなたの番。




