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一分間  作者: はるたま
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午前九時二十一分

午前九時二十一分〇秒


北海道。


漁師が網を引く。


一匹の鮭が跳ねる。


誰も、その鮭を覚えていない。


ただ、一人の小学五年生だけが、その夜の食事で、


「今日の鮭、おいしい。」


と言う。


午前九時二十一分三秒


東京。


高校二年生の少女が、


好きな人に告白しようとして、


やめる。


その「やめる」が、


十年後、


一人の子どもを存在しない人間にする。


本人は知らない。


午前九時二十一分九秒


長野。


五十三歳の男が、


庭の椿を切る。


一本だけ残す。


理由はない。


その一本を、


四十年後、


孫娘が結婚式の髪飾りにする。


男はもういない。


午前九時二十一分十四秒


大阪。


救急車が赤信号で止まる。


三秒。


その三秒で助かる命。


その三秒で助からない恋。


世界は、


いつも公平に不公平だ。


午前九時二十一分二十八秒


ある高校。


教室の一番後ろ。


眠っている少年。


先生が起こそうとして、


やめる。


「ああ、疲れてるんだな。」


その優しさだけで、


少年は五年後、


教師になる。


午前九時二十一分三十五秒


一羽のカラスが飛ぶ。


誰の人生にも関係ない。


と思われている。


しかし、


その影で赤ん坊が泣き、


母親は空を見上げ、


その瞬間の写真が、


父親の遺影になる。


偶然は、


あとから名前を付けられる。


午前九時二十一分五十九秒


日本中で、


六十秒が終わる。


誰も気づかない。


世界は、


次の一分を始める。

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物語、 いや、詩だ。
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