第62話 オヴェスト事変 Part5
前回のお話。アラドス連合艦隊のオヴェスト侵攻。彼も町に異変を感じるが道中で攻撃を受けてしまう。
ゴオォ!!
彼は上空を飛行している吹雪の艦橋から勢いよく外に出た。風圧を受けながらすれ違う吹雪に載せていた移動や荷台に使う鉄板をスキルで引き寄せる。
「来い!ボードッ!!」
ボードを掴み、いつもの移動スタイルになると襲ってきた相手に目線を向ける。
「後ろから雷バンバン撃ってきやがって、吹雪が黒こげになったらどうするつもりだ・・」
軽口を叩きながら警戒態勢。視認次第で魔弾で狙撃しようと構えるが。
「お?ん?えっ?う?うまっ!?」
遠目ながら襲ってきた者の姿が馬だった。更に距離が縮まると・・・。
「ペガサス・・じゃない。馬だ・・」
空飛ぶ馬と言えばペガサスだが、見えたのは白馬が地を駆けるように空を走る馬だった。思っていたのと違う光景に彼は「う~ん」と唸る。
「まあ馬が空飛ん・・駆けてる時点でファンタジーだけどさ。イメージとギャップが」
なんて思いつつも先に仕掛けてきたのは天馬バリオスからだった。
ビリ・・ッ
蹄に白い雷を纏い、瞬間。異常のまでの加速。
「なっ!?」
距離的に数百メートルが数メートルと詰められる。しかし彼は咄嗟に魔力障壁を正面に張る。日頃ミヤちゃんと喧嘩やら戦闘?である程度には動体視力と判断能力が養われていたのだ。
ババッ!
雷と閃光が駆け抜ける。直撃は避けたものの、ボードのバランスを崩すもすぐに立て直す。
「まあ、空飛ぶなら羽はやっぱあるか。無いと作画的にも映えないからな」
バリオスは彼の頭上の上で止まるが、先ほどの姿とは変わっていた。羽が生えていたのだ。しかも直接生えてるのではなく、絶えず放電する白い雷が羽の形状となって羽ばたいている姿があった。
そこに彼は少し疑問が浮かぶ。
馬?ペガサス?まあどっちでも良いとして、襲った理由は?縄張り?好戦的で視界に入ったから?と言うかこんなモンスター初めて見たぞ。どっかから来た?など諸々考えた。
そして天馬バリオスの方も。
あれが天命の隣人か。こうして見ると分かる。常に自身の魔力で周囲を満たす自然さながらの魔力量。恐らく本人すらも魔力を放出してる認識すらないだろう。
魔力を周囲に広めることは、自身のスキルや魔法の伝達や威力を向上させるバフ的効果と逆に相手の魔法とスキルを阻害させるデバフ的効果がある。これらは魔力の密度・波長などの要因で起きるが詳しいことはさておき、要は広めた範囲内では環境的優位を立てるのだ。
ただそれは大規模な攻城戦、籠城戦・空船での空戦などに限り、戦闘の長期化で自然と魔力が周囲に拡散されるのを活用、利用するのが主だ。
それを対人戦と言った個の戦闘では、余程極端な環境か密閉された空間など条件が揃わなければバフもデバフも起きはしない。なので通常の戦いで魔力を意図して拡散することはないのだ。
しかし彼の場合は、ステータスに表記されてる魔力の数値は万表記。現在は40,000超え。しかも魔導石(戦略級)を予備魔力タンクとして複数所持したり、武器や道具にも同様な魔導石を使ってる事もあって、魔力の数値が10万超えたりと大規模戦で消費される魔力量と同等だったりする。しかし真に彼の恐ろしいのは魔力回復量である。
彼が全魔力を消費したとして1日で回復する魔力は7、8割ぐらい。数値で見るなら1分で20前後ぐらい回復。30分で600ぐらい。そして魔力100以上の消費は大魔法レベルであり、それを数十分で数回分も回復でき、魔力が満タンなら過剰魔力として放出される。つまり何もしてなくても常に環境的優位に立ってしまうのだ。
故に天馬バリオスは、その規格外な魔力から放たれる攻撃は数発、最悪一発で即死。同時に彼の魔力が周囲を満たすのでとにかく短期で終わらせなければ勝てる見込みが失っていく状況を悟った。
『数秒、数分、数刻で不利となる戦場。数日なら領土、国土までもと言った具合。いやそもそも・・・』
普段からこの辺りを縄張りにしてる以上、すでにこの大気に含む魔力は・・・。
そして彼の方ではあることを危惧した。
「しかし厄介なのはあのスキルか魔法そうだな」
今までの迷宮のモンスターとは違う雰囲気。なんせ今まで戦ってきたモンスターはスキルや魔法を使ってこなかった。いや、使えたかもしれないが彼とミヤちゃんの瞬間火力で秒殺するから、スキル主体を使ってくる初のモンスターの会敵でもあったのだ。
「なら先手必勝っ!!」
先手はバリオスからだったが、今度は彼の無数の魔弾がバリオスに向ける。
ッ!
バリオスは冷静に見切るも。
速い・・。ただの魔力の塊を攻撃の手段に転じるとは。
ヒュン・・・ヒュン・・ヒュン・・ヒュン!ヒュン!ヒュンヒュン!!
ヒュンヒュンヒュン・・・・ッッッ!!!!
魔弾を回避するも飛んでくる魔弾の量と範囲が広がり、単発攻撃から範囲攻撃へと変わり、放つ魔弾の種類も増えていく。
ッ!多彩過ぎる!!
バリオスは更に驚く。
高速・低速・ホーミング。不規則な動きをする大小あらゆる形や色の魔弾が弾幕ゲームの如く放つそれには回避に専念するしかなくなった。
一方の彼の方はここまで一発も当たらないことに焦る。
マジか。弾幕以外にAP弾仕様魔弾で狙撃もしてるけど躱すか!
迷宮では動ける範囲が限られてるいるため攻撃は絶対と言うほど当たる。しかし周囲に壁が無い空だと回避されやすいとは思ってはいたものの1発も当たらないのは予想外であった。
「これちょっと・・まずいかも」
今は武器も道具も持っていない。スキルで直接攻撃できるものも持ってない。手持ちは予備魔力タンクとして持っていた魔導石が数個。なので魔弾が決め手に欠けると攻撃手段が極端に減るのだ。
そしてバリオスの方は回避が容易な距離まで引かざる得なかった。遠目でも分かる弾幕量。自分がいる位置を分かっているはずなのに全方位に無駄に弾幕をばら撒き、背後だろうが真上真下にも本当に無駄にばら撒いて接近の困難さにどう打開するか考える。
そんな中ミヤちゃんの方では・・・。
「きれい」
『もしかして追尾されてます?』
後方から花火ような光景が見えていたし、何なら彼の魔弾が流れ弾として通過していた。
そして膠着状態が数分続き・・・。
「弾幕で見えづらい」
圧倒的な弾幕量で後方に押しのけてるのの、決め手以外にも悩ましいことがあった。と言うのが防御である。いちよ防御に関するスキルならそれなりにあって中でも『空間装甲』『避弾経始』『摩擦調整』と言う3構成をよく使っている。
『空間装甲』は空間そのものを装甲と仮定させるスキル。
『避弾経始』は物を指定し、指定に近づく物があると適切な弾く角度(見かけ上の厚み)同様の装甲厚とさせるスキル。なお角度が深いほど魔力消費が上がる仕様。
『摩擦調整』は質量における摩擦を変質させるスキル(彼の場合、滑りやすくさせる為に使っている)
これらを組み合わせ、「空間装甲」で周囲の空間または魔力障壁を物と見立て『避弾経始』と『摩擦調整』を使い、さらに魔力消費以上に魔力消費してスキルを底上げした物理攻撃を弾くことに特化した防御をよく使っている。が、その分、魔力攻撃には弱い。
以前迷宮で冒険者ギルド職員の三姉妹の次女フェリカでの戦闘?でも披露したこともある。
いちよ魔力障壁は魔力の塊だから魔力防御の手段にはなるが、初手のバリオスの魔力攻撃を魔力障壁で防いでいたが、あれは相殺されたに近く、本気の攻撃になれば防ぎきれないと悩んだのだ。
「次は抜かれても不思議じゃないしな~」
どうする?魔力障壁であいつの周りに展開して動き制限して魔弾の集中砲火・・。いやでも強引に魔力障壁突破されるってことも・・・。
ならカウンター狙い・・。駄目だ。あの加速と機動力で接近戦で挑むのはリスクが・・。
お互いにどう攻めるか考える中、動いたのはまたバリオスからだった。
これ以上は危険か・・。
魔力の底が見えない魔弾の嵐。それによって周囲に異様広がる彼の魔力。このままではスキルも魔法の威力も効果も著しく落ちて、全てが届かなくなる。その前に・・・。
『隣人よ。無数の弾を放つなら我は一つの光を照らし放とうぞ』
バリオスは一気に上空を駆け上がる。それに彼は追尾するように弾幕を放つが当たることなく空しく四方に散っていく。
そしてある程度の高さで止まると上空に雲が急激に発達し発光まで始めた。
「やっば!」
異様な大気の動きに彼は攻撃を止めて、魔力障壁を何重も展開して防御に移る。
そして。
我が主に授けられし光よ・・。空の威厳を見せつけよ『絢爛雷剛』
ドオオオオォォォーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!
瞬間、空が光る。落ちたのはたった一発の落雷。雷の直径は通常数㎝程度。それが数百mはあろうかと言う極大。もはや光が落ちてきたと言ってもいいほどだった。
音は衝撃波となり、雷が落ちた大地はフルグライトの砂漠と化し、彼が無意識に周囲に撒いていた魔力も霧散させる。
「・・・ッ!・・ァ」
彼の呼吸が一瞬止まる。何重にも張った魔力障壁で直撃は防いだものの、熱放射までは防げず肌は焼かれ、空気を焼き、呼吸しただけで喉を焼く。視界は白くぼやけ、音も聞こえない。
防いだはずだけど・・。ああ、くそ。目が見えないし、体中痛いし・・。
彼の今の状態は重傷ではなく重体レベル。まともに動けるはずもなくゆっくりと落下していく。
ほう。消し炭にはならなかったか。
バリオスの方も彼が落下していく様子に手応えを感じる。しかし・・・。
「・・・・・!」
恐るべきは彼の精神性。
いた。
死に際の彼は異様に冷静になる。生の執着より一矢報いる報復に生を成す。
スキルによるあらゆる探知、サーモ・反響定位・電波・魔力によるレーダー捕捉・重力探知による万有引力での距離捕捉等、諸々を使って確実に相手の位置を捕捉し続ける。
・・ああ、相変わらず魔法は便利だ。目が見えなかろうが、身体が動かなろうが、見えるし動けて射殺せるっ!
落下から再び浮上し、周囲に魔力が渦巻いては形を成していく・・・。
来るか・・・。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!!
バリオスも彼の動きに警戒するも変わらず魔弾を飛ばしてくる。
今までの魔弾より速度はあるが、彼らとの距離の開けから回避は容易と思った。が。
バッッ!!!
魔弾はバリオスの手前で爆発、したのではなく何かが飛び出した。
ッ!
彼が撃ったのは榴散弾。主に第一次世界大戦で使われ、砲弾に詰められた子弾が敵の頭上で炸裂するようにしてばら撒く砲弾である。これは塹壕内に篭る敵に攻撃を可能とし、多くの死者、負傷者を出した。のちに榴散弾から身を守る為に今日で言うヘルメットが軍で一般装備化された一因でもある。
それを彼は大口径サイズの魔弾として撃ったのだ。1発に詰まった子弾の数は数百単位。それが無数に一斉にとなれば、飛散した子弾で埋め尽くされた空間そのものがバリオスに襲ってきた。
回避も防御する時間も無く、血も肉片も飛び散ることなく子弾で飛ばされ、皮下組織は剥かれ、骨も臓器も外気に晒される。白い毛並みが一瞬で赤黒く染まる。
何も見えぬ。音も聞こえぬ。血の臭いすらしない・・。顔の大半は吹き飛んだか。なるほど、我ら神族でも負け得る可能性があるのも頷けた。だが・・・。
お互いに致命傷。それでも佇む姿は未だ健在と言いたげにお互い見えない中で睨み合う。
教えよう。隣人。神族が何故神族と言われるか。何故崇められるかを・・。
そしてそれは突然起こった。突拍子もなく地面が揺れる。空が揺れる。空間自体が揺れ動く。
「・・・・・・」
この異常な状況に彼もスキルを駆使して探るも。
何も分からん。
スキルは何の反応もしなかった。そんな事を尻目にどんどん周りの風景が置き換わっていく。
『神話顕現。現界露出』
これよりこの地この場所は神話なり。我らの時代、我らが世界。超常たる世界にて神話の一説と成り果てよ。
フルグライトの砂漠に地と化した大地もその周りの大地も山も今はに見たことない植物群が新芽を纏い、或いは花を咲かせ色鮮やかな生命の息吹が噴き上げる。
そして空気も空の色までも置き換わる。
喉が焼けて声がでないけど、これ明らかヤバい。そこらのモンスターが出来ることじゃないだろ。
あらためてただのモンスターじゃないことに彼は気づく。
『隣人よ。この世界では我らが絶対。抗えないものと知れ』




