第61話 オヴェスト事変 Part4
前回のお話。アラドス連合艦隊のオヴェスト侵攻。城内に攻め込むもシルル教会が要塞と化し、想定外の被害を受けてしまう。
オヴェスト・トレンボが侵攻されてる一方、嫌な予感に4隻の駆逐艦を連れて帰るクラリオン達。
いつもなら夕飯前には弾丸の如く飛んで帰って来れるが駆逐艦(時速400㎞は出せる)で帰るとなると距離的に5時間は掛かってしまう。
そんな移動の最中を遠くから見てる存在がいた。
『戦音は響き、火は上がった。鉄の揺り籠には2人。その片方こそが主が求める隣人がいる』
天馬「バリオス」。神なる存在に作られし神族に枠する種族。遥か昔から神々と戦場を駆け回っていたが今は神々の元を離れ、地に根を下していた。それでも忠誠は今も創造主と主に向けている。
そしてあの日あの時、突然声が頭に響いた。
『起きなさい、困ったさん。勝手に離れて悠々と食っちゃ寝してる我儘な子よ』
草っ原で寝ていたが目を開けると天から光が差してきた。その声の主にバリオスは不貞腐れた感じで頭の中で言葉を返す。
『これはただの休息だ。休める時に休めなければならない身体にした創造主に問題がある』
『他の子達は素直なのに。反抗期も困ったものね』
『・・創造主と供に駆けた素晴らしき日々を忘れたことはない。ただ・・全てに劣る者達が、地べたを這いながらも時に我らより速く駆け、時に勝ちえぬ者達に勝ったあの光景は鮮明・・。創造主とはまた違う駆け足が心地良かっただけのこと』
その光景に魅入られ、供に彼らと地べたを駆けたあの日。地が響く轟音、衝撃、熱気、全てが身体に通っていくあの衝動。空を駆けるのとはまた違う生気と生死感を思い出す。
『はあ。まったく熱く語ってくれるわね。だけど我儘はここまで』
創造主が声を送ってくる時点でバリオスはもう何か察していた。
『・・天命か』
『そう。主からの御命じ。君が今一番、その天命に近い』
『ならば我が身に天命を。全ては主のために』
バリオスは立ち上がり、首を垂らす。
『主はこう仰せです。これだけ用意も真似もしたのに気づかない。愚かで愛しき隣人よ。未だに気付けぬその愚行に懺悔の言葉を空に響かせよ』
神の怒り。いつ接点があったのか、何をしたのか分からぬが、お怒りだ。しかしどのような事であれ天命はこの身を持って指し示そう。必要なら己が命を犠牲にしても。
『それと・・』
創造主は更に続けた。
『お互いに死は望まず。バリオス、君が全てを出し切っても勝てないのならそれでよいと。負けてもよいと』
バリオスに驚きのあまり天に顔を上げる。
『我が、我ら神族が、勝ち得ぬと?負け得ると?神族と同等と?真に主は仰せなのか?』
『主の言葉は全て真実。気を付けて事に当たりなさい』
『真に信じられぬ。それが真ならその者は創世以来の・・新たな種族と呼ぶべき存在。それは人か?向かい側か?』
『バリオス。相手が何者であれやることは同じです』
『・・全ては主の意のままに』
そして天命を受けたバリオスは北の方角を見る。
北・・・。自然ではない異様な魔力の乱れ・・。恐らくその先に主が求める隣人がいるのだろう。しかし主の言葉通りならこれはもはや戦闘で済まされない。
『戦だ。戦が始まる。何百年ぶりか・・』
そしてその時偶然その場を目撃した人間に告げた。
『急げ。フェニキアの末裔よ。もう舞台は整っている。栄光がもう射しているぞ』
久しぶりの戦争だ。しかしこれは天命。故に此度は背に乗せることは出来ない。許せフェニキアの末裔達よ。だが上がる舞台はある。共に出ること叶わないが栄光は共にあろう。
そして時は来た。
『戦音は響き、火は上がった。鉄の揺り籠には2人。その片方こそが主が求める隣人がいる』
遠方から始まりの戦音に我は駆け、天命の隣人が戦場に来るのを待った。そして現れたのは鉄の揺り籠に乗る2人。
一目で分かった。遠方でも感じた魔力の乱れ。それを起こす者。秘めたる暴力的な魔力量・・。我が命を賭けなければ天命を果たすのは無理であること。しかし例え負けを認められていようと敗北は許されない。
『我は天馬バリオス。創造主に造られし最初の天馬。全ての戦場で必勝を収めし天馬が負けを認めれば創造主に不名誉を送ることなど我が許さず』
我が創造主よ、御観覧あれ、観戦あれ。その命帯びて、一筋の光を見たまえ。
そして。
「・・どうやっても夕飯には間に合わないよな~。ミルティア先生に何て言われるか想像したくないんだけど」
「ねむい。お腹空いた。血がうえる」
「ミヤちゃ~ん。戻っておいで~。もうやってることが人じゃなくてモンスターの類よ~」
ミヤちゃん、お腹が空いて彼を首噛んで血を啜る。
もはやノミかマダニ表現するならどっちなんだろうな・・。と思いつつも言葉には出さない。
『いつもスキルで物を浮かしては飛ばすアレを船自体に施せば、今より速くなるのでは?』
「う~ん・・吹雪だけならいけるかもだけど他の駆逐艦も、ってなると、大きさとか重さとか・・う~ん、って感じ。何より操作ミスって地面に激突スクラップとかしそうだからリスク的にやりたくない」
時間と労力使って完成した駆逐隊だからこそもう壊れるようなことはしたくないのである。
そんな彼とアイが色々と話している間にいつの間にかミヤちゃんは血を吸うのをやめて窓を眺めていた。
「・・・・・・」
キラ。
「・・・・」
そしてしばらく眺めていたら何か光るものが見えた。
「・・・」
じ~っとその光を目で追いかけると最初は船の速度から後ろに過ぎ去ると思っていた。が、船の後方側になっていくと追尾するように追い掛け始めた。
「・・なんかきた」
そして眠そうな声で話してる彼らに伝えた。
「ん?来たって何?」
「あっち」
「ん~~?」
船体の後ろを指を差し、何だろうと思いつつも周囲を確認出来るモニターやヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使って確認すると確かに後方から追尾する光りが見えた。
「え?何これ?こういう時レーダーがあればもっと早く気付けるんだろうけど・・」
『本格的なレーダーには必要な素材や部品がありませんからね。しかしこの速度に付いて来るとなると』
「早い速度出せる生き物ってハヤブサだっけ?急降下限定らしいけど」
『いえ、この世界ではマッハで飛ぶ小鳥サイズの生物とかもいますよ』
「マジかよ」
雑談挟みながら何が追尾してるのか話し合う。
『もしくは無機物の飛翔体の線もあるかと』
「飛翔体?ミサイルとかロケット?でもそう言うのはマッハで飛ぶんじゃない普通?」
『スキルで動かしたり飛ばしたりもあり得ますからね。貴方がよくやっているような感じで』
「あ~。あり得る」
『ともあれ一旦駆逐艦をそれぞれの方向に飛ばしてどれに追尾してるか確かめてみては?』
「ん~、明らか自分らが乗ってる吹雪だと思うんだけど・・」
共に飛行している白雪、初雪、深雪をそれぞれ分進させて、どれに追尾してくるか様子を伺うも・・・。
「やっぱ自分達が乗ってるの分かって追尾してる感じかな~」
『他の駆逐艦はそのまま個別に進路変更し、後で合流しましょう。あれが敵対的なものであれば、まともな連携出来ない以上各個撃破されるのが落ちです』
「だね。だけど本当に何なのかね?」
特に追尾してくる以外にアクションが無い。今飛んでるところはまだ人類未踏。となればモンスター辺りが妥当であるが、追って来る理由は何なんだろうか?と考える。縄張りか?ただ目に付いたから襲ったのか?それとも本当にミサイル的な何かなのか。
そんな疑問に思う中、突如後方からゴロゴロと低い音が響き、更に強い光が現れる。
「っ!!」
咄嗟に舵を切る。明らかと言わんばかりの攻撃の前振りに素早く反応し、後方からすれすれで白い雷撃が通過する。
「攻撃攻撃攻撃っ!!敵性行為!戦闘体勢ーっっ!!」
再び後方から白い雷撃が連続で飛んできた。そして回避運動しつつ2番、3番砲塔で狙いを定めようとするも。
「あ゛あ゛ーーっ!狙えんっ!!」
回避運動しながらだと目標の追尾に砲塔旋回が追いつけず、狙いが定まらない。
『上空に向けて最大戦速で回避してください。船底に付かれれば攻撃も目視も難しくなります』
その言葉に彼は舵を上に切る。
「アップトリム90!」
実際に90度どうかはさておき吹雪は急上昇。
「どうする?雲の上まで行く?」
『いえ・・と言うより』
アイの言葉途中から再度光が漏れる。しかも先ほどより強く大きな光・・・。
「っ!!」
彼自身もこれがどんな攻撃か理解した。広範囲攻撃が得意な彼だ。これが広範囲攻撃であり回避できない攻撃と瞬時に分かった。
バァァアアアンーーー!!
光が吹雪を包み、遅れて雷鳴が空全体に響く・・・。
「舐めんなぁあーっ!こちとらミヤちゃんの攻撃でそんなの慣れっこだわ!」
光の中から吹雪が飛び出す。
多重魔力障壁を展開して防ぐも彼は、威力はミヤちゃん以上で、底が知れない攻撃にどこまで耐えれるか内心不安がる。
あっ・・・せるわっ!今の耐えれなかったらガチで死んでるあれ!
が、彼の魔力量は桁違いなので膨大な魔力を使用した魔力障壁は簡単に抜けるものじゃないが。本人はその辺りを理解してない。
『先ほどから雷の攻撃を受けてると判断してますが攻撃の類は魔力によるものであってますか?』
「多分そうだけど、それがどうしたの?」
『音は聞こえますが魔力の認識が出来ません。以上から雷の類の純度100%の魔力攻撃だと判断しました。簡単に言いますと魔力関連は無力ですので手伝えることは少ないかと』
「ゔ。猫の手も借りたいっ・・けど」
チラっとミヤちゃんを見ようとするが視覚から見えないところいて見えない。
「すっごい視線感じるんだけど、今どんな感じ!?」
『不服そうな目線と荒い運転しやがって、これ以上続ければまた首に噛みついてやろうか。と言う意気込みを感じられます』
「ミヤちゃんで死ぬ可能性も出てきたな」
少し飛ぶ角度を緩めて、ミヤちゃんの怒り出すのを引き延ばす。
「だけどこのままじゃあ追い付かれるだろうし」
距離が少しずつ縮められているのか、攻撃間隔は短くなり、魔力障壁で防ぐ回数が増えてきている。
くっ。まともな迎撃手段がない。ミヤちゃんに迎撃はどれだけ危険か分からないし、
そもそも空中だし、アイは攻撃も防御手段もないし。ならやっぱりこの状況を打開するには・・・。
「よし。アイ、運転交代。自分が迎撃に出る。自分なら空飛べるし、追い付ける速度も出せる。というかこれしか方法がない」
『妥当ですね』
しかしここで一つ問題なのが。
「ミヤも」
彼がどこか行こうとすればミヤちゃんも付いてこようとする問題。と言うか行かせない。彼1人にさせればどこに行っていつ帰って来るか分かったもんじゃないので、例え緊急時でも例外はないのである。
「ミヤちゃ~ん。どっか行ったりしないし、緊急時だから~その~」
「・・・・・」
『こいつ何言ってやがると言う目で見てます』
「納得させるのが先か攻撃が当たるのが先が分からなくなったぞ」
『それとお話しの最中すいませんが緊急を要するかもしれない事が』
「なに?新手!?」
『いえ、回避運動の最中に町の方角に違和感がありまして。と言うのも町の距離や飛行高度や時間からして町の明かりがこの距離からでも確認出来ることは出来るとは思うのですが』
「手が離せないので手短で!」
回避運動操作にミヤちゃんに納得と悠長に聞いてる余裕はない。しかし・・・。
『誤差かもしれませんが、この距離で見える町明かりにしては少し明る過ぎるのような』
その発言に更に嫌な予感が加速する。
「・・町の方角が見えやすいように少し飛ぶ。ミヤちゃん確認できる?」
「ん」
ミヤちゃんも何となく嫌な予感に素直に聞いた。そして攻撃を防ぎながら艦橋から町の方角に見えやすいように操縦すると。
「これ以上避けながらは無理っ!何か分かった!?」
「・・・・・」
ミヤちゃんは無言。ただ何か考えているようで尻尾は大きくゆらゆらと揺らす。
まち。あかり。よくあかるい?まつり?
迷宮の町だから夜まで店を出すところは多い。だから少し明るい町なのは何となく分かる。しかし普段目にする明かりとこの距離から見えるぼやけた町明かりなんて見たことも比べたこともない。ただ・・・
「・・町にいそぐ」
何か祭りがある日でもない。なのにぼけやながらも光が暗くなったり明るくなったり点滅してるように見えてるのは更におかしい。
これは何か起きてると思うしかなかった。
「これマジで何か起きてるのか」
ミヤちゃんが異変を察知したのなら、これは本当に何か町にあったとみていい。
だとすれば呑気に飛んでられないな。
「ミヤちゃん。これ真面目な話し、町に着くのが最優先。だから今攻撃してる奴をどうにかしないといけない。これは分かるよね?」
「ん」
「だからもう一回言うね。自分は迎撃に出る。その間にミヤちゃん達は町に急いでもらう。いい?」
「・・・・・・」
「まだ無理か・・」
操縦で忙しい中でも無言で睨むミヤちゃん。やはり1人にさせるのは嫌な様子。
「正直町に着くのが遅れるのは避けたい。今攻撃してるのはがモンスターか人かは分からんけど、倒すのにどれくらい時間掛かるか分からんし。だからミヤちゃんには先に町に行って危ない状態ならミルティア先生や皆を守ってほしい」
「・・・・・」
「んで、危なくなかったら援護に戻って来てほしい。倒せるとは限らないからな。これが今自分らが出来るこれが最善だと思う」
「・・・・・」
しかしまだ納得しない。
「あのねミヤちゃん。まずもう勝手にどこかに行くことはない。それは約束できる」
「ほう」
1人にすればどっか行く可能性大な奴がどの口が言うか更に睨むミヤちゃん。
「あのね。まずこの駆逐艦達を置いて行くのはあり得ん。二つ。あの作業場・・工房?工場?基地?この船作ったところでしか作れない物が沢山あるわけで、これからも何度も行かないとだし、どっかに行く理由がない」
これから本格的に色々と建造の予定なのにここで止めることは彼自身もするつもりはない。
ミヤちゃんも考えた。彼があの場所を大事にしてることは分かる。なら、彼が勝手にどっか行ったなら燃やすか壊すか、と人質の価値があると考え・・・。
「・・ん。わかった」
彼も理解してくれたかと「よかった」と胸を撫で下ろしたが。
「勝手に行ったら・・もやす」
ミヤちゃんの燃やすとは・・・?
何を指しているのか分からないが、ミヤちゃんならやるのは間違いない。詮索したいがミヤちゃんの機嫌が変わらない内にささっと準備を済ませることにした。
「よし!アイ、町まで操縦頼む」
『任されました』
「じゃあ迎撃しに行くからミヤちゃんは町をよろしく」
「ん」
そして彼は操縦を交代すると艦橋の扉に手にし、軽くミヤちゃん達を見渡し「アリーヴェデルチ。さよならだ」そう言って扉から飛び出して攻撃してくる存在に迎撃に行くのであった。




