魔法少女集会1
「……さぁ、入って」
「お、お邪魔します」
「……別にもう襲ったりしないからそんなに警戒しなくてもいいのだけど」
「そういうわけじゃないんだけどな」
女子の家に入るのはこれが初めてだ。今までは武のこともあって女子とは関りが少なかったし、そんな状況だったので彼女なんているわけがない。とはいえ相手はオレが女子だと思っているからあんまり緊張するのも変だな。警戒していると思われているけど。
部屋に入るとそこには委員長と山城さんにパートナーと思われる妖精、そして青年がいた。
「いくら使い魔を相手したからとはいえ遅いんじゃないか」
「……色々あったから」
「その色々の中には後ろの子も含まれているのか?」
「……そういうこと」
オレを襲ったことを色々で済まそうとしているな。
「はぁ……詳しいことは後でいいか。それで君は刀剣少女のカオリさんだね」
「あ、ああ」
静永さんがオレのことを知っているのだからおそらく委員長の妖精が今いるメンバーに話したのだろう。自分で言ったとはいえ刀剣少女っていうのはやっぱり恥ずかしいけど。
「さて、全員揃ったところで始めようか」
「えっと、何を始めるんだ?」
「ラナ、連れてくるだけで何も話していないのか」
「……カオリの知らないことを教えるってことだけ」
「まぁそれは間違ってはいないが」
「スヴァさん、ラナちゃん。私たちにもどういうことか教えてほしいんだけど」
「そ、そうですよ。二人だけで話して」
静永さんとスヴァと呼ばれた青年に声をかけた委員長と山城さん。
「その子は本当にカオリなんですか?」
「オレのこと見てわからないのか? 見た目そのまんまだと思うんだけど」
今のオレは戦闘モードである刀剣少女カオリから服装を変えただけの一般少女カオリのはずなんだが、一般少女になってから鏡を見ていないから見た目が変わってないとは言い切れない。しかし服装を変えただけだから大して変わっていないと思う。
「……カオリ、魔法少女は認識阻害の魔法を纏っているの。だから変身後を見ても変身前の私たちに気が付かない」
「オレは魔法少女じゃないんだが、認識阻害ってやつはちゃんとやってたんだな」
当たり前か、魔法少女は一般の人を厄妖から守るときのほうが多い。そのときに姿を見られるだろう。それで特定されて色々面倒なことにならないためにも認識阻害が必要だということか。
そしてオレもそれをやっていたらしい。流石悪断さん、本当すごいです。
「えっと、これでどうだ?」
オレは刀剣モードに変わった。
「本当、カオリだわ」
「た、たしかに」
委員長と山城さんは納得したようだ。
「オレが見せたんだから二人も変身して見せてくれよ。岬さんはともかく、蓮香のほうはそっちの妖精の姿も見てないし、テンションだって全然違うしな」
「そうね。私はともかく蓮香ちゃんは変身すると人が変わるものね」
「ええ、岬さん酷いよ」
「いいえ、蓮香。あなたは変身すると人が変わるわ」
「ワタンまで」
山城さんの味方は妖精もしないようだ。
「じゃあいくわよ。ミフト」
「お願い、ワタン」
二人の姿が光輝きあまりの眩しさに目を閉じた。光が収まったころに目を開けるとそこには以前会った魔法少女の二人がいた。
たしかに意識してみないとちゃんと委員長と山城さんだと思えない。認識阻害がなくても山城さんの場合は元の姿にたどり着かないと思うけど。オレだって生徒手帳を拾っていなければ正体は分からなかったし。
「認識阻害ってすごいんだな」
「これがないと恥ずかしくて魔法少女をやっていけないわ」
「あたしは別にみられても構わないけどな」
「……蓮香は完全に別人みたいだから」
「ってなにあんたまで変身してんだよ。もうやるきはないって……そんながっかりしてもやらないって」
どさくさに紛れて静永さんも変身していた。部屋にコスプレした少女が四人……オレも含むが、傍から見るとなかなかにかわった光景だろう。
実態は見た目からは想像できない力を持った少女たちだけど。
みんなの変身前と変身後の姿が一致したところで、オレたちは変身を解いて席に着いた。オレの場合は服を変えただけだけど。
「さて、改めて自己紹介でもしようか。俺はラナのパートナーのスヴァ。普段は彼女の保護者として人になっているが」
スヴァはそう言うとぼふんと煙を立てた。煙が晴れるとそこにいたのはミフトとワタンに似たような妖精になっていた。
「れっきとした妖精だ」
「へぇ、人になれるのか。てことはそっちの妖精たちも?」
「できるが断る」
「私はできないわ」
態度のでかいミフトはただならないだけで、ワタンはできないのか。妖精にとって人になるのは難しいってことなのか。
「ミフトはなんだかんだ理由を挙げて人にならなくて、だから私も見たことがないの」
「本来人に変身するのは特別な理由がないとするものではないんだ。スヴァは仕方がないが俺はやれって言われてもやらん」
「……できない人の言い訳みたい」
「うるさい。挑発されても乗らんぞ」
なんか賑やかだな。学校だと全然絡んでいないメンバーだけど、ここだと楽しそうに話している。どうして学校でも仲良くしないのだろうか。
「あのときちゃんと名乗っていなかったからな。俺は奈菜のパートナーのミフトだ。勘違いするなよ、俺はまだお前のことを信用してはいない」
「ミフトはこんなこと言ってるけど、私はそんなこと思っていないわよ。蓮香のパートナーのワタンよ。よろしくね」
「ああ、よろしく」
ワタンと握手をした。すんごい柔らかくて触ったことのない感触だった。妖精を欲しいと一瞬だけ思ったが、ミフトを見てその思いは消えた。
「なんだ」
「別に」
自己紹介が済んだところで、スヴァは人型に戻った。
「こっちのほうが真面目な話にいいだろう?」
「俺たち妖精が真面目じゃないみたいな言い方をするな」
「ミフト、落ち着いて」
「む、しょうがないな」
また興奮しそうなミフトを委員長は腕に抱いた。この野郎、委員長の胸に触れるなどうらやま……けしからん。
スヴァは咳払い一つして
「それじゃあ何から話すか。カオリさんはほとんど何も知らないだろうから聞きたいことは全て話すつもりだが、とりあえず何から聞きたい?」
オレにそう問うた。




