##05:レートを弄るだけの簡単なお仕事
さて。
ここに金塊があるじゃろ?
それも、下手な所では処分出来ない類の金塊じゃ。
何故って、下手な所で足が付けば、どこから出たとか色々うるさいのよ、この世界の商人がた。
出た国が特定されると、その国に何の意図があって現ナマに変えたのかとかに始まり、先物市場の動きだ何だまでチマチマチクチクと突付かれる訳だ。
――どうするかって?
それはな――こうじゃ。
・ ・ ・
「――いや、あの――困りますよ、こっちにも色々都合が――」
「金なら――いや、まあ、金ではないんだが、対価はある」
ゴトッ。ゴトゴトッ。
「――ええと、そ、の――」
「どうした? 魔界の奥地で産出した、虹魔晶、見たことも無いか?」
「にっ――い、は、いい、いやいや、待ってください、こんな大きさの!?」
####−−:ST3799年:ティスオーナ王国・商都ウルルクス
「――無理ならば無理と言ってくれ。飛び込みで来ている以上、可能かどうかを聞きたいだけで――」
「おん、おまちくだっさい!?」
おん、って。びびりすぎですよ、お兄さん。いや、まあ、村一つ買える価値の物がゴトゴト目の前に出てきたら、こうなるかな?
・ ・ ・
金塊をそのまま売るのは困難を極めた。
いや、あの、付随する一切をガン無視したら売れたんだけどね。
流石に軍備拡充疑われて、居住国が取り囲まれるのも面倒だし。
なので、足の付き辛い物品に交換してから――と思って、アシュバーンに頼んだら、金塊が上記の物品に化けたわけだ。
なんでも、魔界側、各地の城のリフォームラッシュ起きてるらしく、金のレート上がってるんだそうだ。
……ええと、もっと儲け――ああ、いや、止めとこう。相場複数手を出すと大変な目に遭いそうだし。
・ ・ ・
「しかし――用意出来る量はそこまで多くないですよ? 虹魔晶の現在の相場を勘案すると――」
「いや、構わないよ。食料の先物相場で儲けに来たわけじゃない。
冒険者なんだが、久方ぶりに故郷に帰ったら、食料が不足しててな。
冬場の相場値段に移行していく前に、幾らか買い溜めて置きたいという話で出て来ただけだし」
「さ、左様ですか――ですが、先程も言いましたように、こちらにも他のお客様との取引もありますので――」
帳面を首っ引きしながら計算するお兄さん。そうそう。よく悩みたまえ(にこにこ)。
「――この辺りが限度かと――」
「もう一本上乗せは出来ないか? 無理なら他で当たるが――」
――うん、反応早くて良いぞ、兄さん。こっちとしては其処まで悩まなくても問題ないんだけどね。
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エデルニュートに流通していた食料が、少しずつ高騰し始めたのは、およそ一週間後のことだ。
俺の懐は暖まり、不逞分子は下手な動きを出来なくなる、と。
――いや、大丈夫だよ。一般階層の食料市場は、一応国内側で回ってるんだから。
悪巧みして食料買いだめしなければね。なんのダメージにもなりゃしませんって、ね?
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「――『見ているぞ』、と言いたげだな、誰かは知らぬが」
上がってきた報告を見ながら、タウンバスは呟く。
「『断頭機関』でしょうか?」
「可能性はあるが、この手の回しかたは――」
ある男を思い出させる、と言いそうに成りつつ、黙する。
「――何れにしろ、計画そのものは続行だ」
その目の光は、野心と呼ぶには暗く荒んでいた。




