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LI-cycle  作者: 黒月緋純
3/5

##03:幼馴染みは規格外魔女(オーバーウィッチ)

####--:ST3794年:アウスラス王国・アルキオン村


 剣先を合わせ、互いの呼吸を読み合う。刃引きこそしているが、一応鉄剣、油断は互いに無い。

「――弱ったな」

「何が?」

「一応俺、傭兵としては最上級クラスなのな?」

「うん、知ってる」

「それがだ、10歳の息子に、踏み込んで勝てる気がしない」

「――あの、すんません」

「謝られちゃったよチクショーメwww」

 いや、まあ、多分俺でもそうなったら草生えるな。


 五歳のあの日以降。俺はひたすら親父と母さんに剣を習った。

 いや、ある程度の事は記憶に入ってるから問題ないし、本気で掛かればさっさと勝てたかもしれない。だがまあ、誰かに剣をこんなに本気で教わるのは、それこそ一番目の時以降、無かったと思う。

 だから、楽しかったのだ。


「正統剣術の流派にでも、本格的に習いに行くか?」

「いや、そこまでは別に――」

「そうだな、下手に型に嵌まるのもつまらんな、我が息子ながら誇らしいぞ」

 こっちは純粋に楽しそうである。息子の成長が嬉しくて仕方ないらしい。

「ありゃ、『魔王再臨か?』だって。物騒な話だね」

「ん? 魔王?」

 ユニ姉の持っていた新聞を取って拡げるセレ姉。

「へー、イニアド大陸で大規模な魔族の動き、ね」

「イニアドとはまた遠いな。あんな僻地、魔族も住み辛いだろうに」

 イニアドかー、あいつの出身、確かイニアド――

「あ」

「ん? どうした、ソーマ?」

 よ、弱ったぞ――あいつの事、すっかり忘れてた――

「お、親父、ちょっと聞きたい事あるんだけど」

「ん? なんだ?」


 ――ゾアン山中に遺跡の類があるか?

 ――んーむ、聞いた事は無いな。

 ――未発掘の遺跡があるはず? んで、そこに?

 ――は?


####--:ST3794年:アウスラス=ティスオーナ国境域・ゾアン山地


「――10歳で初遺跡ー」

 どんどんぱふぱふ~。

 ――かくして、俺は約30年ぶりに、この遺跡に足を踏み入れた。

 そう。ここは、かつて俺がニッポンへ転生する前、99回目の生を無理矢理受けた場所だ。

 そして、ここはとある人物がねぐらにしている場所でもある。

 そう――何度か、文中に言っていたが、「あいつ」――

「お、居た居た――おーい、起きろペタンヌー」

 っても寝てるんだけど。ガラスチューブの中の、溶液の中、素っ裸の少女が浮いている。

 ――お、目開いた。そして――え、何、指差してる――あ、あかん。


 ピガッ――ドンッ


「――あ、あぶ、あぶねえ――」

 いきなりの魔導ビーム、怖い、怖すぎる。

「27年ぶりに顔をあわせて、言う事がそれとか、勇者はやっぱり死ねばいいと思うの」

「すまん、本当にすまんかった」

 こいつこれでも、『魔導王』だった、忘れてた。

「ペタンヌでもローリーでもないの、マオだと何度も言っているの。バカなら死ねばいいの」

「すいませんマオさん、怒ってるベクトルはそっちですか」

 相変わらず、訳の分からん奴だよ、こいつ――ジト目でこっち見た上に、ぷいって後ろ向くし。

「――27年ほっとかれても、勇者の夢だけ見てたのに、いきなり幻滅させるような事をして欲しくない――それだけ」

「いや、マジですまんかった――服どうぞ」

 あ、待たせた事も多分怒ってはいるな、これは。


※※※


 名はマオ。

 こいつとの関わり合いは、かなり古い。

 50周近辺だった筈だが、魔王が魔術師系に異様に寄った事があった。

 剣で傷は与えられるが、その肉体の頑健さに、回復促進の魔術を身に纏っているような奴だった。

 戦えるが、勝てないと踏んだ俺は、魔王城の壁に穴を空けて、外に飛び出して逃げた。相打ち狙うにしても、回復促進の他に自動蘇生でも組まれてたら詰むと判断したのだった。


 どうにかあの魔術の暴威みたいなのを封じねば成らない、と考え、その頃では世界最上位とされていた、とある魔女を探した。別名を、彷徨う暴風と呼ばれていたその女は、とある酒場で見つかった。


####xx:ST2000前後:メゼルナ大陸・某所


「え――若っ!?」

「ん? これでも百とちょっと行ってんだがね」

 なんと言うか、たゆんたゆんであった(主に胸が)。

「ああと、魔女レアンディーヌ、でいいのかな?」

「そうだね、あたしの名自体はオクタってんだが、称号はそっちで合ってる」

「――ああ、成る程、出会うたびに姿が違うってのは――」

「魔力は同じ色なのに、ってかい? そうさ、ウチの門下は、魔力をもっとも優秀なのに委譲するのさ。でも、その事を知ってるって事は、アモン=トゥラウドの爺様辺りの紹介かね? 勇者君」

「――何故勇者と?」

「今代の勇者が、独特な奴だってのは聞いてたからね。あとは女の勘さ――マオ、お茶」

「はい」

 そう言って、裏から出てきたのが、マオだった。

 黒ローブに身を包み、ある種独特な魔力を纏っていた。

 そして――その胸は平t

「あっち!! うばぁぁぁあちぃ!!」

 いきなりのお茶攻撃である。

「ペタンヌではないの、ししょーが爆裂なだけなの、禄でも無い事を考えないで欲しいの」

「――マオ、お止め、『精神感応−マインドセンス−』の修行をするなら、ちゃんと隠しておやり、あと、また癖が出てるよ、かわいらしいねぇ、くくく」

 いや、オクタさん、くすくす笑いながら言っても説得力が、だがこのお茶うめえ。


 それを始まりとして、あちこちで色々と関わり――

 俺は勇者を続け――

 マオの方は――


####--:ST3794年:ゾアン山地


「ふむ……何も問題は無い。我ながら、最近は安定して作れている」

「――ホントすげえな、相変わらず」

「――頬を引っ張りながら言う事ではないの」

「これで人形って、お前って何なの?」

 ――そう。マオは今や、肉体を人形にしている。

 人形と言っても、生体で出来ているので、ほぼ人間と変わらないが――

「勇者みたいなトンチキな例外にそれを言われたくないの」

「褒めてんだけどなぁ」

 まあ、『転生』に行き着こうとしての結果がこれなのだから、大魔導師マオには不服なのだろう。

「大体、勇者」

「ん?」

「何故ショタ」

 ――こいつ、たまに変な事言うが、今となっては、こいつもニッポンからの転生者なんじゃないかと思える言動がある――いや、違うとは思うが。

「いや、普通に10歳なだけだ」

「10歳が、かつてとは言え魔王の出城のあった辺りを、一人で歩くのは感心しない」

「一刻も早く迎えに来ようと思ったんだよ」

「――不本意だけど、その心に免じて許すの」

 うむ、相変わらず、素直で宜しい。


####--:ST3794年:アウスラス王国・アルキオン村


「で――女連れで帰ってくるとは」

「は、はい、すいません」

「ソーマ。大概の事は構わんし、お前ならそう無茶な事ってのも起きないとは思う」 後ろの方で、父上が壁に植わってるんだけど、『お前なら行ける、いって来いよ(キラっ)』ってやって一人で送り出したのがばれたな、これは――いや、一人で行くっていったの俺だけど。

「ゾアン山地へ一人で行く、それは別に問題ないが――幼女誘拐とか関心せんぞ?」

「幼女ではない(泣)」

 母上、それこの人に言ったらいかん台詞です。

ある時の俺が散々からかって、トラウマってますから。

「私はマオ。彼――ソーマの前世で、関わりの有ったモノです」

「ふむ――魔力の張りから見て、魔導師――いや、マオと言ったか? あの魔導王のマオか?」

 あ、有名人だ。

「当人なの」エヘン

「なんとまた……先代の勇者の御母堂が、ウチの息子の前世とどんな関わりがあるのだ?」

 ――ちょ、え? 御母、あれ? 99回目のアレがばれてる?

「――弟子にしようとして逃げられた」

「ちょ」

「成る程、前世では魔導王に見込まれる程度には強かったのか、うちの子は」

「つよかったちょーつよかった(棒)」

「マオ、あの、そうじゃない」

 ん? と小動物みたいにこっちを見るな。

「――ああ、そうだった。ソーマの母上」

「ん? なんだ?」

「私の事を知っていると言う事は、多分、本を読んだからだと思う」

「ああ、小さい頃呼んだぞ、『魔法タイクーン・マジカルマオ』」

 ブフォォッ!? なん、あんだって!? 痛い、蹴らないでマオ。

「では、あの本が私の著作であり、ある程度の事実に基いている事も分かっている?」

「――誇張は多かったが、そうではないかと踏んでいた」

 著作――著作? え? こいつ、なにしてんの?

「では、先代の勇者を生んだ際の衝撃で、居城が吹っ飛んだのも分かっていると思う」

「あれは事実であったのか?」

「誇張はあるが、事実」

 事実じゃねぇよ、てかばれてた理由お前かよ。


####98:ST3750年頃:アウスラス王国・バルタの街


「転生までの時間を短縮?」

「ああ。どうにかならんかな?」


 98回目――天界に攻め入る少し前のこと。


「――死ぬ気なの?」

「死にたかない。だが、あの連中と来たら、味方をそもそも味方と思ってない。殺す為の手駒で武器位にしか見てないもんだから、捨て身で無茶苦茶しやがるんだよ」

 前回の教訓から、俺はあらゆる予備策を張り巡らす事に決めていた。

 だが、どれほど武具やアイテムで固めても、限界ってものがある。

「だから、最悪の場合、相応の痛手を加えて、速攻で転生し直してもう一回切り込もうかと――って」

「――無茶ばかりして――」

「な、泣くなよ――」

 俺が頭を撫でると、マオは顔をグシグシと拭ってこっちを見た。

「――可能かどうか分からない方法なら、考えた事がある」

「あるのかよ、コンナコトモ=アロウカト様」

「そんな邪神ではないの――ただ――」

 マオは、なんだかえらい複雑な表情をした。

「――ひょっとしたら、勇者は私を軽蔑するかもしれない、の」

「――いやぁ、かつての俺ほどの外道な事をお前が出来るとも思えんから、任す」

 ――いや、あの、目が怖いんですけど、マオさん。

「――ぇき」

「――はい?」

「勇者の、精液が、いりまぁす!!」

「声デカイわ!! 酒場だぞここ!!」


※※※


 要するに、ホムンクルス的に、肉体を再構築する、とか。

 そこに対して俺の魂を無理矢理引っ張っていって定着させるとか。

 そういうことだと思っていたのだ、俺は。


####99:ST3752年:ゾアン山地


「――あぅ?」

「ハァハァハァ――ゆ、しゃ――?」

「あう」

「よか、た――成功、した、の――産めて、良かった――」

「!は( A )ぁ?」


 まさか、それ(出産)用のボディを構築して、自前で産み落とすとは――マオのネジの外れっぷりをすっかり忘れていた俺だった。


 ――それより数年。俺はすくすくと育った。

 マオは、なんと言うか、母親としても優秀だった。

「ホムンクルスや複製体には、宿せないと分かっていたから、ああせざるを得なかったの……」

「いや、うん、あの――うん」

 試してたんですか、あなた。何時だよ、全く。

 会話が出来る位になってから、そんな風な事を会話したのを覚えている。

「――問題は、だな」

「うん?」

「――どう接したらいいねん、俺は――」

 かつてはその、愛し合ったりもした相手の魂が入った相手がオカン(母胎)て――何この神話系エロ小噺。

「――今生では、あまりそういう事して欲しくないの」

「いや、無いよ。無い無い、流石に無い」

 心読むなちゅうの――って、うん?

「――マオ、お前ひょっとして、その体――」

「かなり急いで、しかも魂魄とあんまり合わないくらい性徴させて造ったから、制御が巧くいかないの。気を抜いてると、魔術出ちゃうし――勇者がまともに戦える位までは、頑張ってもたせるけど――寿命、結構短いかも、なの」

 俺は、普通に自分を恥じた。いや、エロがどうたらでなく。

「――すまん、無茶させたな」

「気にしないの。何時もの事なの」

 それに――とマオは微笑んで俺を抱っこした。

「おかあさんになるのも、なかなか悪くないの」

「――く、くすぐったいわ、わしゃわしゃすんな」


 この時俺は――そして、多分、マオも。

 次の周こそ、こいつと、俺とこいつによく似た子と一緒に、平穏に暮らしたいな、と――

 そう、願っていたのだ。

 ――願いは、先延ばしにされてしまったが。


####--:ST3794年:アウスラス王国・アルキオン村


 ――今度は、しくじらない。


「――大分、あれこれ伏せて書いてるとは言え――」

 俺の手元には『魔法タイクーン・マジカルマオ』。いや、名前はえらいトンでるが、中身は普通の自叙伝風のラノベだった。いや、中身には触れずに置くけど。

「――なんでまた、アレを――こんな風に書いたかな――」

「『転生』やらを適当に誤魔化す為には、それしかなかったの」

 とはマオの話。99代目は、98代目の息子、と言う事になっている。いや、うん。ううう……妙に照れ臭いんですけど。自分の隠してたい歴史が流布された気分。

「てか何時の間にこんなん書いたんだよ、てか何処のどいつだよ、出版しちゃった奴」

「勇者が天界で消えてから5年くらいはあの器もったから、その間に書いた。次を作る資材が全然足りない上に、宝物殿まで入れる力も無かったから、お金を稼ぐ必要も有ったし」

「センセーショナルな事に喰い付き良いのは、どこもかしこも共通かよ――げ、ピオプレイ出版」

 まじか、知り合いの子孫の製本屋じゃねえか……――ピオプ、レイ。ピープ、レイ――いや、止めよう、世界の触れてはいけないトコに触れそうな気がする。武芸解説的な。

「――うん、いや、うん――今代の体は?」

「全く以て問題ない。勇者と年代も近いトコで起動出来たし、今代の私こそは、炸裂ボディーを勇者にお目に掛けられる筈なの――散々バカにしたのを、土下座から三点倒立して謝ればいいの」

 いやーそれはどーでしょーねー(棒)。あ、痛い、向う脛蹴るな。こんなんが家の中に居たら、俺の足カッチカチに成るんじゃ無いだろうか、向う脛ビール瓶的な。


※※※


「――家の離れを借りたい?」

「はい。いい加減、山奥で隠遁とか飽きたので」

 いや、あの、マオさん、付いて来たと思ったら、何言ってるんですか?

「――ダメだ」

「家賃は払える」

「そうじゃない。マオ――大魔導師であっても、君の姿形はうちのソーマとさして変わらん。そんな子が、一人で離れに住む、とか――部屋はあるのだからうちに住みなさい」

 え、母さんも何言ってんの!?

「その代わり、ソーマは無茶苦茶する奴だ。その身の危険は兎も角、相手が可哀想になる時がある。眼を離さず、暴走しそうなら止めろ。ダメだと思ったら極大術式使ってでも止めてくれ」

了解ラージャ

 ちょ、サムズアップすんな、そんな無茶して無い、前に近所の悪ガキ教育(物理)しただけじゃん。


※※※


 マオは、ひとしきり蹴ったあと、こっちをじっと見た――あ、そういえば――

「ただいま」

「おかえり」

 こうして俺は。マオに対しての約束を――27年前、神域に向かう前にした約束を、やっと果たしたのだった。


####--:ST3799年:アウスラス王国・アルキオン村


 そして――現在。

「ひゃっほー!!」

「――おい、なんだ、あの羽の生えた猫の様な巨大生物は」

「召喚したらでた」

 相変わらず無茶苦茶するなこいつ。あれって、魔界の生物じゃなかったかなぁ……

「リム!! 下りて来ーい!!」

「にいちゃんこれ、すっごい楽しいぃぃやっはぁぁぁ!!」

 ――リムもリムで馴染みすぎだよな――

 これが、我が家の日常なのだった。

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