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はじまり

登場人物紹介

唯 : 毒舌気味の中学生三年生。

  身長は低く、同世代と比べると子供っぽく見える。

綾 : ゆったりとした性格の中学三年生。

  唯の幼稚園からの幼馴染で、現在は親友。

  身長は高く、大人っぽく見える。

「綾、やっぱりやめないかしら?」

私は綾の為にそう提案してあげた。

肝心の綾は私の言葉に賛成してくれなかった。

「唯ちゃん。今日はこのために電車を乗り継いで来たんだよ。折角ここまで来たんだから、行こうよ」

綾は私の気遣いも知らないでそう返す。

恐怖のない余裕のある顔で言ってくるのが気に食わない。

でも、もっと気に食わないことがある。綾が続けて「もしかして、怖いの?」と聞いてきたことだ。私がこの程度で怖がるはずなんてない。それなのにそう聞いて来たんだ。

昔からそうだ。私を子供の様に扱うのはいい加減やめて欲しい。

私よりたった半月だけ先に生まれて、私より10点ほど期末テストの合計点が高くて、私よりちょっとばかし運動が出来て、私より十(センチメートル)ばかり背が高い。ただそれだけだ。ただそれだけの事で、姉の様な、いや母親の様な態度で私に接してくる。

本当に気に食わない。

そんな母親もどきの綾に「全然怖くなんてないわよ」と返した。意識的に頬を上げて余裕のある大人の笑顔を見せる。私が怖いなんて馬鹿げた勘違いはさせない。

綾は「それならよかった」と本気で安心した様な声を出す。お願いだから、そんな声を出さないで欲しい。本気で心配されていたみたいで惨めな気持ちになる。

そんな私の気持ちも知らずに、綾は「レッツゴー」とノリノリに右手でドアノブを握った。

綾の空いている方の左手は私が握ってあげた。

決して怖い訳ではない、怖い訳ではないわ。ただ、綾が怖くないように手を握ってあげただけよ。

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