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風に消される声

 声を出しても、世界は応えない。


 村の広場で助けを呼ぶ声も、森で魔物を追い払う声も、

 風にかき消されるように、耳には届かない。

 呼んでも返事はなく、声だけが空気に溶けて消える。


 手を伸ばしても、触れる感覚は虚ろで、世界は私を押し返す。

 握手も、肩を叩くことも、すべて無意味になる。

 存在しても、誰にも影響を与えられない。


 森の小道で転んだ子どもを助けようとしても、

 次の瞬間には世界が修正し、私の関与は消え去る。

 子どもは無事だが、助けた証拠は、私の胸だけに残る。


 村人たちは、私の存在を避ける。

 目も合わさず、声も聞かず、触れずに通り過ぎる。

 透明な壁に囲まれた世界の中で、私は孤独を抱えたまま歩く。


 夜、家に戻ると、天井の影だけが揺れている。

 光も声も温もりも、届かない。

 胸の痛みだけが確かにある。

 存在しても、意味はない。

 生きているだけで、孤独と絶望は増す。


 ――無色の存在は、風に消される声のようだ。

 誰も認めず、誰も触れず、世界は静かに排除する。

 孤独は深く、胸に刻まれ、消えることはない。


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