805 ことわります
「なにしてんの!? 今ビスカムアルバムだから小回り利きにくいんだって!」
『でも、大きなメカは宇宙では速いんだろぉ!?』
「それは直線だけ! 重量が上がると方向転換には、必要なパワーが一気に大きくなるの! 式を思い出してよ! I=kmr²でしょ!?」
ビスカムアルバムには大型なロケットはあるけど、100m級のこの質量は、めちゃくちゃ動かしにくい。
あと、ロケットが大きくても、起こせる爆発の強さがそれほど変わるわけじゃない。
『うわーん! ウチの首席が訳のわからんことを、俺に囁くー!』
❝スウたん、高校生に無茶言うな❞
❝慣性モーメントは大学生レベルだ❞
「あれ? じゃあ私、この式、どこで知ったの?」
❝サブカルだろうな❞
❝サブカルだろうね❞
「と、とにかく! rっていう半径が掛かってるから、巨大な機体は機首とか機体の中心から離れてたら、その場で回転するだけで大きなエネルギーがいるの! カーブする時はさらに、速度まで掛けないといけない!」
『それより早く助けてぇ!! 貪り食われる!!』
そうだった笠木くんのロブⅡが大ピンチだった。
恐らく他のクラスメイトも助けに行ってるけど、リーサルハーピィに襲われそうになってる。
すると十十くんが謝ってくる。
『ご、ごめんスウさん! 僕等じゃ、2次被害を出さないだけで精一杯だよ!』
私は、アイステイルから〈粒子加速・ヨーヨー〉を射出。
「掴まって!!」
『センキュ――あー! 掴みそこねたぁ!』
あのバカタレ!
私は、〈汎用スナイパー〉をヨーヨーを狙撃して、方向転換させる。
よし、笠木くんのロブⅡに〈粒子加速・ヨーヨー〉が張り付いた!
『な、なんじゃこの狙撃力!? さ、流石スウ! ――俺の学校の女子がスナイパーすぎる件』
「それより、そのヨーヨーはくっつくけど、数百トンの力が掛かると外れるから、ちゃんと掴まって!!」
『お、おう! 超戦士が学校に一緒に生息してるとか、鳥肌モンなんですが』
「助けるの止めるよ!?」
『ごめんなさい! 今度学食で一番高いローストビーフ牛丼おごるので、助けてください!!』
ロブⅡが、〈粒子加速・ヨーヨー〉のワイヤーを必死で握る。
「いらん!!」
『・・・・ぐへへ、あのおっぱいと一緒にお食――なんで断るのぉ!? 学生垂涎のメニューじゃん!』
んなもん、私が男子と一緒に食事なんかできるか! 陰キャ舐めんな!!
ワイヤーを、思いっきり引っ張る。
あとそんな珍しい学食メニュー言われると、学校の特定班が湧くからやめれ。
「おっぱいおっぱいって、大きければいいの? 男子ってやだわ」
私が眉をひそめると、笠木くん、なんか超理論を展開しだす。
『違う! 貧乳も良いんだ! 巨乳もまた良い! あのな・・・・ほんと分かってないな・・・・。胸が幸せを運んでくるんじゃねぇ! 妄想が、幸せを運んでくるんだ!! 幸せを作るのは己自身だ! 幸せはいつも自分自身が作るんだ! 勘違いするんじゃねぇ!!』
この人、なにかの境地に至ってそうで怖いんですが。
禅?(禅への熱い風評被害)。
私はハーピィの群れに向かってビスカムアルバムの武器を一斉掃射――ロケット、荷電粒子砲、機銃、黒体放射、駄目だ、結構外れる。
「――こうなったら・・・・いけ! クラスターミサイル!」
大型ミサイルの中にさらにミサイルが入ってる。よしよし、結構当たった。
「宇宙用・燃料気化爆弾も喰らえ! ――燃料気化索薬、発射!」
長いチェーンマインが敵を囲んで、囲んだ内部に粉を散布して大爆発。
要は粉塵爆発。
でも宇宙じゃ酸素がないので粉塵爆発は起こらないはずなのに、どんな仕組みなんだろう?
ちなみに攻撃範囲がヤバイ。
「で、最後に普通に核ミサイル!」
ここは生物の生存圏から遠く離れた宇宙だからね、核ミサイルを使っても問題ない。
辺りに漂うピンクのガスを吹き飛ばし、丸く青白い光が1個、暗闇に生まれた。
あの光は数日、光り続けるでしょう。
「これでもまだまだハーピィが残ってるなぁ。それに母艦を何とかしなきゃ――そうだ」
私が通信開始――しようとしていると、マイルズから通信が来た。
『スウ、大丈夫か?』
「作戦思いついたよ」
『そうか、相変わらず――ん?』
マイルズの様子がちょっと変になった。
『――なるほど・・・・スウ悪い、ボクは離脱することになりそうだ』
「えっ?」
『すまん。後は任せた!』
「あ・・・・マジで? ・・・・マイルズ無しで攻略かぁ」
❝マイルズどうしたんだ?❞
❝わからん❞
❝配信もしてないしなぁ❞
❝奴は軍人だw するわけ無いだろw❞
というわけで作戦をするため、私はルジェルナに通信。
「ルジェルナ、ビスカムアルバムに着艦できる?」
『え・・・・その機体、着艦までできるんですの?』
「うん、改造して貰ったんよ」
まぁ、着艦した機体はハンガーで固定する感じになるんだけど。
着艦っていうかドッキング? んで、なんか盾みたいなのが出てきて、機体を護ってくれる。
というわけでルジェルナがビスカムアルバムの後方にドッキングした。
「操縦室まで来てー!」
『了解ですわ』
そうして来てもらったら、
「ルジェルナ、ビスカムアルバムって沢山の武器が有るんだけど、これを〖必中〗状態で全部一気に放って」
「――な、なるほど。・・・・貴女本当に何でも、誰でも利用するんですのね――まぁ、宜しくってよ」




