750 運転で大事なのはブレーキだと思います
あ、本名名乗るんだ? 配信してるんだけど、あの娘に本名が配信に乗るとか最早どうでもいいんだな。
コーレルリヒ・ワーグナーが反応するのに少し時間が掛かった。
『立花・・・・ミズキ・・・・? だと? ――その名は、貴様まさか』
『どうした。来ないのか?』
ルミライト・ダーリン・インフィニティが、腰の鞘に手を掛ける。刀じゃなくて、剣だけど。ルミライト・ダーリン・インフィニティはナイト風の機体だからね。
なんかコーレルリヒ・ワーグナーが若干困惑してるけど――あっ! そうか!
みずきは向こうではマザーMoBなんだ!!
『まさか、あの立花博士が――戦士だと?』
『ぶーーーっ』
アリスが吹き出した。
これには私も、結構困惑。
「え、みずきが博士・・・? え・・・はか・・・せ・・・?」
『君たち!! わたしが博士になっていたら、なにか問題でもあるのかね――!?』
「問題しかないんだけど」
『二酸化炭素も理解できない人が博士ってどういうことですか』
私とアリスの困惑に、リッカはぷんすこしてた。
『まあ、いい。立花博士とはいえ、お前は敵だ。このコーレルリヒ・ワーグナーが相手だ! ドイツ示現流、参る!!』
『・・・ほう、示現流――スウ、合体だ!!』
「ほいほい」
私がアイステイルを飛行形態にして、ルミライト・ダーリン・インフィニティの下に行くと、リッカの機体がアイステイルの上に乗っかってくる。
尻尾がアイステイルに接続される振動が来た。
・・・やっぱ、飛びにくいぞ。高揚力装置を使ってなんとか高度を保とう。
とりあえず、飛行機は急に止まれない。停止できないんで飛び回る。
というかドイツの示現流? そういえばドイツ剣術を日本の剣術に照らし合わせて復活させる活動とかやってたなぁ。
こっちだと柳生新陰流を元にしてたけど。
『広い場所に移動するぞ、来い!』
なんか戦いの舞台を整えてくれるみたい。通路だと飛行機が不利なんで、助かる。
コーレルリヒ・ワーグナーに付いていくと、かなり広い場所に来た。
直径4キロ位ありそうなドームだ。本当にでっかい基地だなぁ。流石、宇宙規模だ。
『ここなら、存分に戦えるだろう。どうせなら1対1でやり合いたいが――アクティブアクターは貴様らのバーサスフレームとやらより性能がいい。合体状態でちょうど良かろう?』
『それでいいなら、こちらに異存はない』
普通に決闘とかになるんだねぇ。
白いAUⅢが、八相の構えを取る――いや、示現流ではトンボって言うんだっけ?
対するルミライト・ダーリン・インフィニティは普通に剣を抜いて、中段に構えた。
刀じゃなくて剣で剣道の構えしてるから、なんか違和感。
『行くぞ、必殺――結晶励起刀・雲耀の位!』
あ、コーレルリヒさん、必殺技名とか言って行くタイプの人だ。
というか、
「結晶励起。――電気を流すと振動する物質でも刃に使ってるって感じ? 振動剣的な・・・? ――普通に切れ味ヤバそう」
白いAUⅢの刀が、青い稲妻を撒き散らしだす。
「アーク放電――高電圧か。やっぱり刃に電圧を掛けて、結晶を振動させてるんだ」
『あの・・・スウさん』
「え、どうしたのアリス?」
『SF超科学の武器を、ちゃんと解説するの止めてくれますか? ああいうのは見た目だけの謎の技術で終わるのがお決まりなんですよ』
「えっ、だって・・・えっ」
『結晶励起刀・雲耀の位、破れたり!!』
『ほら、リッカが調子に乗って「なるほど全て理解した」みたいなこと言い出したじゃないですか・・・』
「わ、わたしのせい!?」
❝電気を流したら振動する物質とかあるの?❞
❝普通にある。水晶とか、人工セラミックとか❞
右下にウィンドウが開いた。リッカのニヤけ顔があった。
『スウは大正浪漫好きだったな』
「え、うん。大正浪漫はオタ女子の必須教科」
『なら幕末は』
「必須」
『よし、相手は示現流だ。示現流だぞ。そして移動を掌握しているのはスウ』
なるほど、有名なあの言葉だね。
相手の武器、よく斬れそうな刀だし。
「おk」
『よし、我らの人馬一体の力見せる時!』
「馬じゃない」
・・・・このやり取り、前もした気がする。
「チェェェェェェストォォォォォォ!!」
白いAUⅢが突っ込んでくる。
私はエアブレーキを展開。両腕も広げてブレーキにする。
速度を捨てちゃうけど、どうせ接近戦するから、あまり速度は無い方が強い。あと慣性ダンパーが滅茶苦茶効いてる。
これはアイステイルの上に乗れば、全員慣性ダンパー持ちになれるのか。運動性滅茶苦茶上がるなぁ。
ヘッドオン状態で互いに接近する、ルミライト・ダーリン・インフィニティを乗せたアイステイルと、白いAUⅢ。
『貴様、なんだそのブレーキは!!』
攻撃目標である相手の肩口近くに構えられた白いAUⅢの刀が、アーク放電の紫電を放ちながら超速で迫ってくる。
ルミライト・ダーリン・インフィニティのバリアが発生した。
またたく間に削られていくバリア――結晶励起刀、やっぱり威力がとんでもない。
でも、見抜いていた私は、ここで水平スピン機動。
ルミライト・ダーリン・インフィニティとアイステイルが、ワルツをするみたいに、紫電を放つ振動剣を躱す。
するとマイルズが呟いた。
『エスパーさせてもらうが、水平スピンは機動じゃないぞ。水平スピンは、事故だ』




