686 初めて現実で戦います
『マイマスター、ドライブアウトします』
そこはラグランジュポイントだった。大きな双子惑星の重力が釣り合うラグランジュポイント。
ちなみにラグランジュポイントっていうのは、天体同士の重力が釣り合う場所のこと。
例えば地球と月のラグランジュポイントには、宇宙望遠鏡とかが設置されてたりする。
大きな双子星のラグランジュポイントだから――低重力空間が、広大に広がっていた。
青い水の惑星と、赤い砂漠の惑星が、輪舞のように手を繋いで回転している。
そんな広大なラグランジュポイントには、無数の残骸――あれはきっとコロニーだ。そして大量の小惑星。
残骸同士が、ゆっくりと軋み合っている
「ここは・・・・」
『かつて、ここには沢山のコロニー群がありましたが、ベクターの隕石衝突作戦により全てのコロニーが崩壊しました』
「ここにアンティキティラがいるの?」
『はい、このラグランジュポイントに反応があります』
「なるほど・・・ここで戦え――ってのか」
厳しいな、小惑星帯どころじゃない。狭すぎる。
でも、アンティキティラはどこだろう。
「〖マッピング〗」
いた、アンティキティラ。
もの凄い速度で、赤点が飛んでる。
小惑星の残骸の中に、逃げも隠れもしてる!
『相変わらず移動速度が早いですね。・・・わたし、アンティキティラが苦手なんですよね』
アリスは苦手意識が植え付けられてるみたいだ。
『今回は、飛行形態にならないで良いのが有情でしょうか』
「アリス的にはね・・・・私もこんなに狭いと飛べないよ。人型にしないと」
そして私は、VRで行う人型モードの操縦が下手である。
「とにかく追いかけよう!」
『はい!』
『ウチの機体、腕一本取られたから、バランス崩れて宇宙で飛び辛いんよ――遠目から狙撃しててええか?』
「全然大丈夫です」
『ありがとなぁ』
私たちが近づくと、アンティキティラが弾幕を放ち始めた。
しかもその弾幕――
「えっ」
コロニーの残骸も隕石の残骸も、貫通してくるのだ。
すり抜けてくる。
「なにあれ!?」
命理ちゃんが弾幕をバリアで受け止める。
『この弾幕、ちゃんと実体があるわ。幻というわけではないみたい』
確かに、前にシミュレーターで戦ったアンティキティラが周囲の崖を破壊したりはしてなかった。
あれって、こういうことだったの!?
ここ狭いからそういうことされると、こっちがかなり不利なんだけど!?
私たちは人型にして、アンティキティラを追いかける。
しかも相手は完璧に残骸の間を縫っていけるけど、こっちはそうはいかない。
『アンティキティラみたいな速度で飛んだら、残骸に衝突します! ・・・どうしましょう!』
「こうなったら、イルさん! 〈臨界黒体放射〉!! ――残骸を焼き尽くす!!」
『なるほど! ショーグン、〈臨界黒体放射〉!!』
『〈臨界励起放射〉いくわ』
篇世機を操縦してるアリスと、命理ちゃんも続く。
『涼子、〈臨界黒体放射〉や!』
ちなみに涼子ならぬ涼子は、音子さんのAIなんだけど――際どい水着の女の子なんだよなぁ・・・。
あの人、ガチっぽいんだよなぁ、ユリ的に。――で、怖いのが・・・以前、音子さんのAIはみっちゃんって名前だったのに、私が音子さんを助けて数日後・・・・みっちゃんが涼子って名前になってて、天パの巨乳な見た目になったこと。そして涼子は、すんごい際どい水着きてる。――それ、1ミリでもズレたら色々見えちゃうよね? みたいなレベル・・・考えてたら寒気してきたから、止めよ。
で、全員で正面の残骸を焼き溶かしたんだけど、なんか、コロニーの残骸が消えてない。
隕石の欠片は消えたのに。
「まさか、あのコロニー・・・・黒体!?」
『・・・みたいですね』
アリスが「あーあ」と、呻いた。
すると命理ちゃん。
『あれは黒体ではないわ』
「そうなの?」
『灰体よ』
「あんま変わんない!」
灰体。もしくは灰色体は、黒体のちょっと劣化版。
『ベクターとの戦争以降に建造されたコロニーは、遠くから光の速度で攻撃されたらまずいから、灰体を全体に塗っているのよ』
「・・・・いらんことしてくれるなぁ」
必要なのはわかるけど。
『――灰体を塗っていても、敵のレーザーの接近が観測されたら避難騒ぎだったわ。だから銀河連合は黒体の開発を急いだのね』
「灰体だとレーザーに耐えきれなかったのかぁ」
とりあえず障害物が減ったので、私たちは速度を上げてアンティキティラを追いかける。
そうしていると、音子さんの抗議。
『アリス、残骸を蹴る方向考えてぇや! 後ろのウチに飛んできて怖いわ』
『す、すみません! ――というかスウさんは見事なドリフトで残骸を蹴らず、どんどん加速していきますね。ああできれば良いんですが、どうやって――』
『あれはアカン、参考にしたらアカン』
『そうですね』
なんか言われてる。




