661 機転をきかせます
私がトゥイードルテちゃんの攻撃を躱していると、みずきにもトゥイードルダちゃんが接敵していた。
みずきが、抜刀しようとする。
「何者か知らないが、私がお前達と行くわけ無いだろう」
だが一瞬早く、トゥイードルダちゃんが、みずきの抜こうとした刀の柄頭を正面から――手のひらを覆いかぶせるように掴んだ。あ、それは通用しない。
「いくら貴女が凄腕でも、得物を抜けなければトゥイードルダの方が強い。これではもう、刀は抜けない」
リッカが鼻で笑った。
「こんな状況など、我が流派は、300年前に克服している」
みずきが、刀を腰に帯びている左側の足を一歩下げる。
そこからさらにみずきは、後ろを振り返るように腰をひねって鞘を後ろに投げ。
あれ?
だが相手は、みずきが投げようとした鞘を握ってきた。
みずきが少し感心した。
「ほう」
トゥイードルダちゃんも、リッカの行動を予測していたのか。
ならばとリッカは、柔道の腰投げの要領で鞘を持ち上げ、鞘を掴んだ相手を崩す。
トゥイードルダちゃんが崩れたところで、鞘に刀を仕舞い直した。
仕舞っちゃうんだ?
「さあ、どうする? これでお前が握っている範囲が狭くなる」
なるほど! ああなると相手は力で鞘と刀を制するのが難しくなるのか。
確かに――握っている距離が短いという事は、力が入りにくい。
みずきは左腕を背後へ伸ばし、相手より、大きく鞘を掴む。
みずきは刀を、尾てい骨で担ぐような姿勢になった。
両者現在テコの原理を使い、鞘と刀を取り合っているが、テコは大きな長さほど強い力を産む。
トゥイードルダちゃんはリッカの納刀で、両手の距離の長さを狭められた。
さらにみずきは腰で、テコの力点と支点の間を広く持ちを力強い腰で制している。
さらに作用点付近に、力点にも支点にもなりうる手を添えている。
力点と支点、作用点、すべて優勢にしたリッカが柄頭と鞘をねじるようにして、相手を引き倒した。
「抜かせまいとしたようだけど、抜くまでもない」
みずきが倒れたトゥイードルダちゃんの胸を鞘で一突きした。
トゥイードルダちゃんが意識を失った。
あのちびっ子、強すぎ。
アリスの蛍丸の斬撃をゲートで受けていた、少年の表情が消える。
「やはり強いな、八街 アリス」
なにあの無敵の盾。
・・・・あの盾なら、矛盾しないじゃん。
◆◇◆◇◆
トゥイードルテちゃんが私の動きを見て、納得する声を出した。
「スウ。全部、避けるのね」
「そうだよ、私には当たらない」
「なら、スウに当てる方法は――」
「そんなの無・・・・」
「――手品なのね」
「手品!?」
あ、そうか、私にわからない方法なら――私に知覚できない攻撃なら――!
トゥイードルテちゃんが、ビーム刀が背中に回るほど振りかぶって、大ぶりでビーム刀を振り下ろしてくる。
「そんな大ぶり!」
私は余裕で躱した。
て――トゥイードルテちゃんの刀はどこ!?
私の頭上から じじじ という古い電灯の様な音。
見上げると、回転しながら落下してくる刀。
「いつの間に!」
振り下ろしたフリをして、上へ投げていたのか!
回転しながら落下してきたビーム刀が、私の左腕を切り離した。
「痛―――ッ」
私は床に転がったビーム刀のスイッチを踏んでから、自分の背後へ蹴り飛ばして、相手の武器を奪う。
「〖再生〗!」
この子、危険だ・・・!
私が床に立って、相手を睨んで姿勢を低くしていると、
「〖ゲート・テレポート〗」
少年が、トゥイードルテちゃんの眼の前にゲートを開いた。
トゥイードルテちゃんはゲートに腕を突っ込んで、ビーム刀を取り出した。
ちょ・・・・せっかく武器を奪ったのに!
トゥイードルテちゃんが柄を振ると、再びビームが伸びた。
蹴り飛ばすんじゃなくて、踏み潰せばよかった!
こんな子と長々と戦ってらんない。
どうする――
まてよ―――そうだ!
私は〖テレパシー〗で艦橋にいる筈のコハクさんに連絡を入れる。
(コハクさん!)
(え、スウさん? どうしました?)
(急いで艦内の重力を切って下さい!)
(へ・・・・でも)
(早く!)
私は〖飛行〗で背後に飛んで、格納庫の空中へ逃げる。
やっぱり追いかけてくるトゥイードルテちゃん。
間もなく、艦内の重力が無くなった。
私は念動力でトゥイードルテちゃんをキャッチ、空中に放置した。
トゥイードルテちゃんは暴れるが、身体がくるくる回るだけで移動できない。
「よし」
アリスが宇宙空間に放り出された時みたいに、服を脱いで蹴ったりすれば移動できるかもだけど、そんな事は教えない。
ちなみにみずきも浮いて、ジタバタしている。
するとハンプティダンプティが舌打ちをした。
「〖テレポート〗」
ハンプティダンプティがみずきの背後に〖テレポート〗した。
そうして、ヤツはみずきの背中に手を触れて。
「〖テレポート〗」
〝みずきを何処かへ〖テレポート〗させた。〟
「み、みずき!!」
私の声が、格納庫に響いた。




