649 綺雪ちゃんの才能が炸裂します
私はスロットルレバーを押し込み、レッドラインへ入れる。
これでエンジンのジェットにスプレー状の灯油が吹き付けられる。急激に掛かるG。
よし、タイラント・ケルベロスが私たちの上昇に付いて来れない。
「綺雪ちゃん、大丈夫?」
私の心配に、綺雪ちゃんから返ってきたのは感動の言葉。
「アフターバーナーも、問題ないですね! Gはスウさんの〖質量操作〗のお陰で、全然大丈夫です!」
「アフターバーナーは、むしろ普段の飛び方より単純な仕組みだからねー。良かった!」
アフターバーナーは、火に油を注ぐ(物理)っていう、ただの脳筋だから。
「機体の仕組みを完璧に理解してる人がパイロットって、なんだか頼りがいがあります!」
「綺雪ちゃんは、風を完璧に理解いしてるけどね!」
「あっ、スウさん、右から強い風が来ます!」
「わおっ・・・」
見えるのか・・・さすが天才児。
私は綺雪ちゃんの言う風に乗って、さらに上昇。
するとマイルズからのオーダー。
『降下開始!』
「ダイブ&ズーム。行くよ」
「はいっ!」
さあ、急降下だ!
3機が急降下しながら機関銃でタイラント・ケルベロスを撃ちながら接近。
『行くぞ、3――2――1――フォックス・ワン!!』
『「――フォックス・ワン!!』」
私はパルスジェットエンジン点火。ミサイルが飛んだのを見たら、空翔テイルを急上昇。
綺雪ちゃんはキャノピーに張り付いて、下を見ながらミサイルを誘導――見えにくいよね、ごめん。
私は、できるだけタイラント・ケルベロスを、床で隠さないようにしながら上昇して行く。
って、タイラント・ケルベロスがなんか口を開いて――咆哮? みたいにした。
すると綺雪ちゃんが叫ぶ。
「ソニックブーム!」
衝撃波!? こっちが早すぎて追いつけないから、衝撃波を放った!?
綺雪ちゃんが叫ぶ。
「不味い!! ミサイルに風の塊が―――!!」
見れば、ミサイルが2発衝撃波に負けて弾き飛ばされてる。
残った一発は・・・・?
綺雪ちゃんが素早くレバーを操作してる。
「―――んのっ!!」
やっぱ残りの一発が、綺雪ちゃんのミサイルか!
この子、風を見て避けたの!?
綺雪ちゃんのミサイルが、タイラント・ケルベロスに刺さった。
でも2発を弾かれたのがちょっと厳しいな、それでなくてもミサイルが足りるか心配なのに。
❝綺雪ちゃんスゲェ!❞
❝綺雪ちゃんのミサイルだけがタイラント・ケルベロスに到達した・・・・マジか❞
❝流石、風の妖精❞
「こら・・・誰だ、綺雪ちゃんに変な二つ名を付けたの。・・・・私は構わないけど、綺雪ちゃんに変な名前つけたら許――」「あっ、スウさん! 私、風の妖精って呼ばれるの嬉しいです!」
「えっ・・・・? う、嬉しいんだ?」
な、なら良いかな。
「はいっ! 妖精って、スウさんとお揃いですし!」
「あー。・・・ウン、ソウダネ」
私は遠い目になりながらも、空翔テイルの操縦は怠らない。
「嬉しいなぁ、銀河の妖精と、風の妖精!」
綺雪ちゃんの純粋な喜びに、私は『汚れちまった悲しみ』を、感じた。
さらにまた急降下。弾幕を躱し機関銃を撃ちながらタイラント・ケルベロスに接近していく。
――タイラント・ケルベロスが吠えた。目標は空翔テイルか! さっきミサイルが当たったの私達のだけだったから!?
私はタイラント・ケルベロスの口を避けて、ソニックブームを躱す。
ここでマイルズからの指示。
『行くぞ3、2、1――フォックス・ワン!』
今回はタイミングが早めだ。
『「フォックス・ワン!!』」
もしかしてマイルズ、私たちにタゲが来たの気にした?
また、マイルズとマリさんのミサイルが弾き飛ばされた。
綺雪ちゃんのだけ命中。
『スウ、綺雪に聞いてくれ! 俺のバディが「あのエレメンタリースクール・ガールはどうやってミサイルを当てているんだ!?」と尋ねている!!』
「綺雪ちゃん、どうやってミサイルを当ててるんだって、マイルズ達が尋ねてるけど」
「風を見て下さい!」
「風を見ろ。だそうです!」
『よし、参考にならん!』
『デスヨネー』
マリさんも困り声。
「じゃあ、綺雪ちゃんのミサイルを先頭に、スリップストリームはどうですか! 綺雪ちゃん、風を掻きわけられる!?」
「えっ。・・・難しいですが・・・・やってみます!」
ごめん、無茶苦茶言ってるのは理解してる。
『ラジャ、全員一旦上昇だ!』
って、上昇する空翔テイルをタイラント・ケルベロスが追いかけてくる。
マイルズの感心する声が、通信機から漏れてくる。
『流石、前進翼機だ、上昇力が違う――タイラント・ケルベロスが全く追いつけていないな』
するとタイラント・ケルベロスは、追いつけないせいか、ソニックブームを連発してきた。
しかも弾幕を躱せないような形に――、
「ごめんマイルズ、上昇できない!」
『了解!!』
私は水平に飛行しだし、僅かな機首下げの最高効率で飛ぶアンロード加速からのアフターバーナー。
タイラント・ケルベロスのソニックブーム連発は、止まない。
「綺雪ちゃん、ソニックブームを振り切る為、音速を超えるよ!」
「は、はい!!」




